第10話 農家、植物を育てる
「……結界はまだ保ってるけど、このままじゃジリ貧だな」
拓海は結界の内側で響く音に耳を澄ませた。
中からは低く唸る声、竹の足が地面を叩く鈍い衝撃音、爪が竹壁を引っ掻くギリギリとした音——。
だが、この結界を形作る竹は、桁違いのステータスが生み出したものだ。並の力で破れるはずがない。
「だけど……考えてることが上手くいけば——」
拓海が深く息を吸ったそのとき——。
「拓海! 持ってきたわ!」
「こっちもありったけ集めてきました!」
水城とレイカが駆け戻ってきた。
「助かった。じゃあ二人とも、ここから離れてくれ」
そう言って、差し出された袋から種を受け取る。
「え? なんで?」レイカが怪訝な顔をするが、答える間もなく拓海は結界を解放した。
竹の壁が崩れ落ち、そこから姿を現したのは、魚の顔と竹の下半身を持つ異形の怪物。
「——喰らえぇっ!」
拓海が叫び、袋いっぱいの種を怪物めがけて投げ放つ。
無数の種が散弾のように飛び、魚人の全身を打つが、表面をはじくだけで大きな損傷はない。
「ダメージは……やっぱり薄いか」
だが、拓海の目は笑っていた。
「——もういっちょ!」
両手を地面に押し付け、スキルを発動する。
《農家の慈愛》——その瞬間、怪物の体表に突き刺さった種が一斉に芽吹き、根を伸ばし、葉を広げる。
緑が魚人の肌を覆い、絡みつき、植物が水分を奪い取っていく。
「……ガアァァァァァッ!」
乾ききった声をあげ、怪物の動きが鈍る。
「——トドメだぁぁぁっ!」
拓海は魔力をスコップに込め、一閃。
炎を帯びた刃が怪物の胴を斬り裂き、全身を燃え上がらせた。
断末魔とともに、魚竹の怪物は黒い灰となって風に散った。




