第3話 農家、伝説のスコップを拾う
「協会に問い合わせたわ。許可は下りた」
水城がスマホをしまいながら言った。
「資源採掘のため、もう危険指定は解除されてるそうよ」
「じゃ、行きますか」
「おー!」とレイカが手を挙げる。
——3ヶ月ぶりの水没ダンジョン。
入り口に立つと、以前は水で満ちていたはずの内部はすっかり乾き、もぬけの殻だ。
モンスターの死骸も、水の跡もない。壁や床はむしろ削られたように滑らかで、ところどころに大きな穴が開いている。
「採掘跡ね。協会が資源を持ち出したんでしょう」
水城が壁を指でなぞる。
「資源って……武器用だけじゃないの?」とレイカ。
「武器にも使うけど、発電や産業用エネルギーにも使えるの。ダンジョン資源は貴重よ」
「へぇ……じゃあ、ここで私の武器も作れる?」
「無理ね」
即答だった。
「高ランク素材は、ステータスが低い者が使うとスキルが暴走するの。SSSランク素材を使えるのは拓海か、トップクラスの冒険者くらいよ」
「……つまり私は作れないってことか。残念」
「じゃあ、後でお前の家の竹山ダンジョンに行くか」
「やったー!」
レイカは途端に笑顔になる。
「仲良しね、あなたたち」水城が小さく笑った。
階段を降りながら、拓海がふと尋ねる。
「素材って、加工にどれくらいかかるんだ?」
「そうね……レイカなら1か月、拓海は半年」
「半年かー……。伝説のスコップとか落ちてないかな」
「そんなのあるわけないでしょ」レイカが呆れる。
——そう言いながらも、拓海はダンジョン間転移で一気に最下層へ。
静まり返ったボス部屋を進み、魔晶石や魔鉄鋼の採掘ポイントを探していると——
「……あれ、なにかあるぞ」
壁際に立て掛けられた黒光りした何かを見つけ、拓海が間抜けな声を漏らす。
「あ、スコップだ」
「調査隊の忘れ物かしら」水城が近づく。
「あ、これ俺のスコップですよ」
「そんなわけないでしょ」レイカの即ツッコミ。
「いや、ここに“高山”って彫ってあるだろ? 俺が前に貯水池に落としたやつだよ。水没のときに一緒に吸い込まれたんだな」
「……そんな、バカな」
水城が目を細める。3ヶ月も経っているのに、吸収されず残っている——それは、この世界の常識からすればありえないことだった。
「不思議なこともあるものね……。とりあえず持ち帰って協会で調べましょう」
そう言って、水城はスコップを拓海に手渡した。
その後、予定通り魔晶石と魔鉄鋼を採掘し、一行は地上へと戻った。
伝説のスコップ(仮)手に入れました。




