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使者の訪問

ソーリャヴィシィス視点

リンを連れて街を目的もなく歩いた。リンの様子を見るに随分楽し気で表情が晴れやかで明るかったのでアンジーのお願いに乗じて良かった。この頃、リンは笑顔を浮かべることが増えて毎日楽しそうにしている。その様子を見ると、あの日助けてよかったと切に思う。


終始順調に思えた街歩き。岐路に着こうかのときに現れた魔物。魔物どもは、リンを狙っていたように見えた。出てきた瞬間の視線が一様にリンへと向けられていた。


旧ブリカーラ王国での強制召喚から徐々にだが増えた魔物の被害。関連していないとは言い切れない。相次ぐ魔物の襲撃に魔物の凶暴化。魔物の被害は魔国だけではなく大陸各地で起こっている。ウラルからも騎士団からも未だ原因判明はなされていない。


普段ではまずありえない街中での出現。魔物に意思はなく、手当たり次第に暴れまわり人や建物を襲い破壊するはずなのに、魔空間から出てきてから真っすぐリンへと標準を定め向かった攻撃の手。


異邦人に何かあるのだろうか。だがウラルが捕らえている三人の異邦人のもとには未だ魔物が現れていないと言った。ならばリンに要因があるのか。近くで見てきたから分かるがリンはこの世界のヒト族となんら変わりはないように思う。ヒト族の作った魔道具、鑑定版とやらではリンは聖女と出たらしい。あれにそれほど大層なことが読み取れるとは思えん。


ウラルによるとリンのは回復や支援が得意といった魔力をしていた。オルガと似た魔力。魔力の流れに違和はなかったと。


魔空間の歪を間近で見ていたが特に違和は感じなかった。それより、生まれたばかりの魔物であったが変異種だったことに意識がいった。生まれたばかり故に育っていなかったがそれでも変異種として最低限の強さは持ち合わせていた。


「陛下、聖森より使者が面会を求めています」

「通せ」


執務室に戻りすぐにベイサスから訪問の旨を申し出された。聖森からというとベイサスと同じエルフか。

応えを聞いたベイサスはエルフ特有の魔法でその場に扉を出現させ繋げた。その扉からは一人のエルフの男が出てきた。


「お久しぶりにございます、魔国王陛下」


聖森の守護番であるイラークだったか。


「大聖樹の守護番がわざわざ自らが訪ねてくるとはな」

「訪問理由なぞ検討がついているのでしょう」

「旧ブリカーラ王国がやらかした異邦人召喚のことだろう」

「ええ、はい。その召喚時から大聖樹に異変が起きました。ご存じの通り、大聖樹とはこの世界の理そのものです。その大聖樹の枝は歪み、葉は枯れていっているのです」

「最近の魔物の凶暴化もそれが原因だと……?」

「そう判断してよろしいかと」


いちいち鼻につく喋り方だな。嘲りを多分に含めた話し方だ。


「何か当てがあってきたんだろ」

「魔国王陛下が保護している異邦人を貸していただきたい」

「それならウラルに言え」

「いいえ、あなたのところの少女です」

「リンをか」

「ええ、あの異邦人の魂は変わった輝きをしておられる。身体の奥底に潜む秘めたる力があるように感じられました。これも何かの巡り合わせでしょう。強制的だったとは言え関りはあるのですから。どうぞ一度、あの異邦人を大聖樹のもとに」

「確かに、このままでいても一向に良くなる兆しはなさそうだ」


胡散臭い笑みをさらに深めるイラーク。もとから断られるとは思っていなかっただろうな。


「では……?」

「一つ条件がある」

「なんなりと」

「我も行く。リンはもう我の子だからな。見知らぬ地にリン一人で行かせるわけにはいかん」

「……どうぞご随意に。ですが大聖樹へは私と異邦人のみとなります。そこははき違えないよう」

「それでいい」

「では聖森にてお待ちしております」


恭しく腰を曲げたイラークは再び扉をくぐり帰って行った。それを確認した後、ベイサスが扉を閉じた。


「陛下、よろしかったのですか」

「あの愚者らの尻拭いをするようなのは腑に落ちんが、だからといってこのまま見過ごすわけにもいかん。打てる手は打つべきだ。リンをこれ以上危険に晒すわけにいかないだろう」

「城の守りは強固ですが……何か問題が?」

「先刻、魔物が街中に出現したのは知っているだろう。その時、明らかにリンを標的にしていたように感じた」

「報告は聞きましたがそんなことが……」

「うむ。打てる手は早めに打つに限る」

「では何時行きますか?」

「明日」

「は……はあ?」


ベイサスは愕然とした表情で固まっている。策を打つなら早い方が良いだろう、何をそんなに驚いている。

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