女子会
女子会ってあれだよね。学校の修学旅行とかで夜に集まって好きな人は誰とか自分の彼氏を自慢するとかの恋バナで盛り上がるやつ。中学の修学旅行はトランプとかゲームで遊んで寝たし、高校のはまだだったから女子会ってしたことないんだよね。だからちょっと楽しみです。
「それで、何があったの」
「リンが一目惚れしたようですよ」
「あらそうなの。相手はどなたかしら」
「フェルアスですわァ。第一騎士団団長」
「あぁ……なるほどねぇ」
いきなり私の話題。さっきの今でもうバレているなんて早くないですか!?
アンジェリカとウラルはニヤニヤと鈴を見る。その顔には面白い、楽しいと書かれている。
「あの目は恋する乙女そのものでしたわぁ。チラチラと気になって見ていましたしィ」
「あぁん、見たかったわ。それでリンちゃん、告白はするの」
「し、しませんよっ」
そんなにキラキラした眼で見ないでくださいよ。一目惚れはしましたが恋愛の好きではないのでご期待には沿えませんよ。いうなればアイドルと生対面を果たしたオタクの心境でしょうか。彼とどうこうなりたいとかではなくて遠くから見ていたい。勝ち恋勢でも同担拒否でもない、推しをただ愛でたいだけです。
「えーそうなの。フェルアスって独身だったわよね」
「恋人、いない」
ヨルさんが喋った!! ヨルさんの声、初めて聞きました。
フェルアスさんは独身で恋人もいないなんて、仕事一筋って感じでカッコいい。
「フェルアスっていくつだったかしらァ」
「34」
「あら、16歳なら許容範囲内じゃないかしら」
ママにとっては16は許容範囲内なんですか。あぁ、異種族間だとそもそも寿命も違うんでしたっけ。
「女関係の噂は聞いたことないしぃ、団長という高い地位についているからお買い得よ」
そんなネットショッピングみたいな言い方。
「見た目はヒト族にしては厳つい方だけど人当たりがよくて優しく頼りになるから結構人気なのよね~」
「見た目で人を判断するようなクソ野郎ではないから安心して」
「リンちゃん頑張って。ママは応援するわ」
女子会ってこういう感じなの。二人からすっごい薦められますが違うんですって。恋愛対象として見ているんじゃないって何度も言っているのに全然聞いてくれません。
「私のことより、皆さんはどうなんですか」
無理やり話を変えた。早くこの話題は終わらせたかった。関係ないんだもの。
「わたくしたちのって言われていもわたくしはソルと、ウラルはオルガと婚姻を結んでいるでしょう。ヨルはーー」
ヨルは首を横に振る。
「ウラルさんとオルガさんって結婚していたんですか!?」
「そぉよぉ。言っていなかったぁ?」
「初耳です」
確かにウラルさんとオルガさんの距離感は近いとは感じていましたが、そもそもウラルさんは外国人並みに距離が近いんですよね。ボディタッチとか多いですし。
「馴れ初めを聞きたいです」
「わたくしはソルが求婚してきたの。一目惚れだって。出会ったその日に婚姻を結んだわ」
驚くほどのスピード婚。国のトップがそんなので良いのでしょうか。
「アタシたちは似た者同士でくっついたって感じねェ」
「二人が婚姻を結ぶまで騎士団が大変だったのよね。ベイサスが毎日頭を抱えていたわ」
コロコロと笑うアンジェリカにウラルが頷く。くっつくまでに何かがあった感じがします。
「何かあったんですか」
「んぅ~リンちゃんには少し早いかしら」
「リンが大人になったら教えてあげるわァ」
教えてくれないようです。確かにまだ学生でしたし子供扱いされる年齢ですけどね。そんなに隠されたら気になるじゃないですか。ベイサスさんに聞いたら教えてくれるかな。
「ベイサスも異性関係の噂を聞かないわね」
「堅物だからねェ」
「相手、いる」
「嘘、ホントに。どんな娘なの」
「鬼」
「鬼人族ねぇ。全然気づかなかったわァ」
なんだか女子会っぽくなった。個人情報がガバガバですが。
良い時間になったので女子会は解散した。仕事を放り出しての女子会でしたからね。
去り際にアンジェリカが「機会はわたくしが整えるわね」と囁いたので鈴は嫌な予感がした。漠然とした予感だったが外れる気が全くしないのはなぜだろうか。
執務室に戻るとソーリャヴィシィスがウラルを問い詰めた。
「何をしていた」
「あらァ陛下、乙女の会話を聞こうだなんて無粋ですわァ」
「教えろ」
「もちろん秘密、ですわァ」
ウラルの煽りスキルがソーリャヴィシィスに的中した。今すぐにでも一戦始まるような緊張感が二人の間にある。視線だけで人を殺せるような眼光。漫画なら二人の間にバチバチってオノマトペがつきそう。
「ベイサスさん、少しお尋ねしたいことが……」
「はい、なんでしょうか」
バチバチ言わせ合っている二人を放っておいてベイサスに先程のことを尋ねる。あれ、スルースキルが上がったかな。
「ウラルさんとオルガさんが結婚するまで騎士団が大変だったって聞いたんですけど何があったんですか」
「ああ、それですか。ウラル殿もオルガ殿も騎士団員を食べていたんです。気に入った相手を次々と。食われた人は崇拝者のようになってしまうんです。その数が数だけに収まりつかなくなって嘆願書が届くようになってしまって。長年頭を悩ませていたんですよ。婚姻を結んでからは他に目を向けることはなくなってホッとしたんですがそれも束の間、今までの崇拝者たちがもう一度と二人に押し掛けているんですよ。それは自業自得なんですがね」
ベイサスさんが言っている崇拝者っていうのは救助要請が来て現場に行くたびにオルガさんに押し掛けている騎士のことかな。食べているって欠損部位はなかったけど。あっ、オルガさんは腕の一本なら治せるって言っていたら食べて治療したってことなのかな。なるほど……被虐趣味のどエムの集まりってことですね。
なるほど、と呟いたらベイサスに怪訝な顔を向けられた。本当に理解できているのかって顔に書いている。失礼な、私にだってそれぐらい分かりますよ、と憤慨したが相手にされなかった。




