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いざ実践です

やってみましょ、の言葉とともにナイフを取り出し躊躇うことなく自分の手を切るオルガ。突然の行動に愕然とする鈴を余所に切った手を差し出し笑顔を浮かべる。


「さっ治してちょうだい」

「ななな、なにやってるんですか!」

「これぐらぁい平気よぉ。ほらほら、口動かす前に手を動かして。さっと治しちゃって」


反論しても無駄だというのはここに来てからそれはもう身に余るほど沁みている。何故こうも誰も彼も行動力が凄まじいのでしょうか。言いたいことを全部飲み込んで血が滴り落ちているオルガの手に両手をかざす。


「魔力を掌に集めて。掌全体に纏うように、そう。外傷部分を覆うイメージで魔力を流して見なさい。包み込む感じでもいいわよォ。自分に合ったやり方を模索しなさい」


オルガの指示にうんうん唸りながらも時間をかけて何とか傷を治せた。いつの間にか詰めていた息を吐きだす。自分でも思っていたより緊張をしていたのか気が抜けて座り込みそうになってのをぐっと堪える。


「うん、しっかり治せたわね。あの程度の軽傷にこの時間だとかかり過ぎているけど、まぁ初回だし多めに見てあげるわぁ。」

「初めてにしては上出来ねぇ。魔力にムレが視えるから一定に流すことを意識してみなさい。慣れれば短時間に魔力量も少なく治療出来るようになるわ」


キチンと回復魔法を使えたのにホッとした。さらに二人から褒められてとても嬉しくなった。


「じゃぁ次、行ってみましょ。実践こそが一番の近道よ。どんどん魔法を使って上達しちゃいましょォ」


鈴が喜んでいるのも束の間、オルガは再びナイフを持って手を切ろうとする。


「っ、待ってーー」


「オルガさまぁぁぁぁ!!」


鈴の制止の声に被せるように野太い声が部屋中に響き渡る。その声は途切れることなく何度もオルガさんの名を叫びながら部屋の中央に居る三人の近くに寄ってくる。あまりの声量に鈴は耳を塞ぐ。オルガもウラルも耳は塞いでいないものの顔を顰めている。


「うっるさいわねぇ。そんなに大声で何度も呼ばなくても聞こえているわよ」

「オルガさまぁ第七騎士団より救助要請が発令されました! 直ちに第三騎士団に向かってください!」


声が、声が大きい……。近くに居るのに先程と全く変わらぬ声量に耳がおかしくなりそう。耳を塞いでいても聞こえるってどんだけ声がデカいの。あっ、オルガさんが声が大きい男の人を拳骨で殴った。鈍く重い音がして、殴られた男の人は頭を押さえて蹲っている。自業自得な気もするけどすごく痛そう……南無。


「第七ねぇ。……よし決めた。リンちゃんも行くわよ。絶好のタイミングにいい練習台が見つかったわぁ。アタシは被虐趣味はないからどうしよぉって思っていたけど、運がいいわねぇ」


練習台って怪我人ですよね。そんな言い方はあんまりじゃないですか。って私も!? いきなり実践だなんて、オルガさんスパルタだぁ。


「そんな悲壮な顔しなくてもリンちゃんには軽い傷しか任せないわよ。ほら、肩の力を抜いて。そんな力んじゃ体がもたないわよ。ウラルちゃんは?」

「あっ、ウラルさまにも要請が来ていますのでご同行願えますか!」

「あら、ワタシにも? 分かったわ」


行くわよ、と歩き出したのについていく。


「あの、何処に行くんですか?」

「要請があった場所は東領地にある騎士団よ。此処から行くにはちょぉっと遠いから転移陣を使って向かうわ。」


転移陣……テレポートとか瞬間移動とそういうのかな。瞬間移動出来るなんて、状況が状況ですが胸が高まる。


着いた部屋は教室ぐらいの広さの部屋。床いっぱいにデカデカと魔法陣が描かれている。壁にもさっき居た魔法実験室と同じように文字がびっしりと刻まれている。オルガさんに促されて魔法陣の真ん中に立つ。ウラルさんは入口の近くに置かれている水晶に手を翳して何やら操作している。


「この魔法陣はねぇ、ウラルちゃんが作った魔法具なのォ。魔国の各所にこれと同じ魔法陣が設置されていてねぇ、魔法陣間を一瞬にして移動出来るっていう凄い魔道具なのよォ。」


オルガさんが我が事のように誇らしげに語る。

ウラルさんが作った魔法具。魔道具作成に携わっているって言っていたからこれがその一つなのかな。ラノベとかだとこういう転移系のは空間魔法とかの分類に属されていて使える人が希少だとか高い技量が必要とかそういった魔法だけど、この世界でもそうなのかな。オルガさんがこんなに得意げに自慢(ウラルさんのことだけど)しているから画期的な魔法具だと予想。


「この水晶で転移先の指定をするのよ。陣の中に入って動かないでね。転移中に陣から出ちゃうと体が切断されちゃったりするから絶対に動いちゃ駄目よ」


物騒です。サラっと言わないでくださいよ。聞き逃しそうになりました。


「さてと、転移先の指定完了。それじゃあ転移するわよ」


足元の魔法陣が眩く光って目を瞑る。瞬間、絶叫マシンの落ちるときみたいな浮遊感を感じた。

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