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バグ職シーフは紙すら切れない。  作者: 藤原 智


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6/15

六話 リベンジ? お金儲けの計画?

 今、蜘蛛の糸でぐるぐる巻きにされている。


 何でええ!!

 スキル、全く役にたたないじゃん!


 三人はというと……。


「あははは!」


 聞こえるだろうか?


 この笑い声は、私が蜘蛛に引きずられているBGMだ。


 ガッ!


「痛ああい! 石がお尻にいい!」

「頑張ってー!」

「まあ、頑張れ」

「うさぎさん、盗め!」


 頑張ってるんだよ! こっちは!

 両手ごとぐるぐる巻きでスキル使えないし!


 私は必死にもがいた。

 だが、糸はびくともしない。


 ちくしょう。

 ナイフでも切れない。

 腕力でも千切れない。

 というか、身体が動かない。


 これがシーフか。


 これが、私に与えられた唯一の職業か。


 弱い。

 想像以上に弱い。

 紙すら切れないという説明に偽りなしだ。


「た、助けてえええ! また、食べられるうう!」

「しょうがないね。華菜様に任せなさい」


 さすが華菜様。

 今後、姉御と呼ばせていただきます。


「刮目せよ! 華菜様の新しいスキルを!!」


 胸を張って立つ華菜様が光輝いて見える。


「吐血!!」


 は?


 ビチャビチャビチャと口から血を吐く。


「どう?」


 誇らしげに立つ華菜……。

 どう? じゃねえええ!

 何が姉御だあああ!!


「アフーン!」


 変な声がでた。

 気がつくと、空中に私は放り投げられた。


 血まみれの口で親指を立てている華菜さんが見える。


 薄れてゆく意識の中、巨大ロボットの足を想像した。

 そして、華菜さんを踏み潰した。


 少しだけ、気が晴れた。


 私達は、こんな感じの日々を一カ月過ごしていた。


 毎日が楽しい。

 そんな日々で、皆を呼び捨てする様になってた。


 そして、大問題が……。


 クラン『かなり。』ホーム。


 毎朝、街の鐘が七回鳴ると、四人はゾロゾロと自分の部屋から出ると、キッチンに集まる。


 キッチンのデバイスで朝食を注文すると、それぞれに用意されている壁際の棚に料理が現れる。


 どういう原理?

 注文した分は、クランに入金した分から引かれる。


 クランの玄関に、木箱が置いてある。

 その中に、お金、ペニーを入れると入金される。


 なんで、そこだけ木箱?

 意味分かんない。


 鐘が七回なったので、二階から一階に降りて、キッチンに行くと、華菜と直哉がテーブルに座っていた。


 何か重苦しい雰囲気が…。


 何?


「おはー」


 至って、いつも通りだった。


「おはよう」

「おはよ」

「うさぎ、何にする?」

「パンとコーヒー」

「おっけー」


 華菜はデバイスを操作して、私の棚に現れたパンとコーヒーを、当たり前のように目の前へ置いてくれた。

 当たり前の様にするとは、なんて出来た子なんだ?

 見習わないと…。


「直哉、なんかおとなしいね。どうしたの?」

「いや……」


 おかしい、直哉がこんなに静かとは……。

 頭でもぶつけたか?


「何?どうひたの?」

「うさぎ、食べながら話さない。行儀悪い」


 お母さんか!


「おはよう」


 リンクが現れた。


「おはー。何にする?」

「あー。うさぎと一緒でいい」

「オッケー」


 リンクの朝食を注文する華菜。

 お母さんに見えてきた。


「そして、問題がね……」

「何だ?」

「今月、家賃滞納してる分も合わせて、二ヶ月分払わないといけないの」

「……払わないと?」

「追い出される」


 ホームレス。

 異世界に来て、まさかのホームレス。

 魔物より先に家賃が私たちを殺しに来た。


「一攫千金ないかな?」

「直哉、そんなんあったらもうやってるって」


 だろうね。

 でも、気になることがある。


「ねえ、卵って何なの?」

「卵?」

「うん。街の張り紙に、山で見つけた卵は取らない事って、いっぱい張ってあるじゃん?」

「さあ?なんだろうね、あれ」

「俺も分からん」

「俺も」

「ねね、あんだけ書いてあるって事はさ、高く買ってくれる人とかいるんじゃない?」

「お?」

「どうかな?」

「やってみる価値はあるな」

「探してみる?」

「やってみるか」

「よし、やるか」

「浪漫だな」


 山で卵を探して、売ることに決まった。


 その時の私達は、まだ知らなかった。

 山に落ちている卵を拾うという行為が、この世界で、わりと本気で死刑案件だということを。

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