十二話 八十六億ペニー
「あれ?」
天井が見える。
「うさぎ!」
布団に寝ていた。
華菜は、走って外に出て行く。
旅館?
あの時、血を吐いて……。
「大丈夫か!」
「死んだかと思った」
「うさぎー」
華菜が布団の上から覆い被さった。
「何が?」
「血を吐いて倒れてな」
「ああ、しかし、うさぎのスキルのおかげで死刑は中止になった。マジで助かった」
「うん、うん」
「華菜、苦しい」
「あ……ごめん」
華菜が離れ、身を起こした瞬間だった。
「うさぎダメええ!」
「え?」
裸だった。
「ぎゃあああ!! 見ないでええ!!」
「見るなああ!!」
パチーン!
パチーン!
華菜が、リンクと直哉をビンタする音が響く。
私が布団の中で丸まっていると、襖が開いた。
おいちゃんが入ってきた。イナと一緒に。
「裁判長」
リンクが、イナを見ると不思議そうに言った。
「何で、裁判長が?」
華菜も驚いている。
私もびっくりした。
何しに?
「うさぎちゃん、大丈夫かな?」
「うん。おいちゃん、心配かけてごめんなさい」
「ははは、無事でよかった。皆、少しだけ席を外してもらえないか?」
「めんご、めんご、突然来て。うさぎと二人にさせてほしい」
リンク、華菜、直哉が私を見た。
「大丈夫。お願い、イナと二人にして」
イナは、暫く黙って私を見ていた。
「何しに来た?」
「あれだけ派手に血を吐いて倒れたら、心配するよー。でも、そうなるよね? 人の気持ちを盗むなんてさ」
「どういう事?」
「制約だよ。盗む物によって制約があるんだ」
「制約?」
「そうだよー。制約なしに、何でも盗めるなんてね?」
「盗むだけ?」
「うん。でも、このままだとうさぎ死んじゃうから、うさぎだけにスキルを新しく作成してるから確認してね」
イナが言う通りに、スキルを確認してみた。
ウィンドウを開くと「NEW!」の文字が目に入る。
新しいスキルを見ると、「盗む範囲」とあった。
「これは?」
「盗むスキルがね、範囲指定できるようになったと思うといいよー」
「範囲……」
「そう。私も不本意なんだけどね。でも、そうしないと、うさぎ死んじゃうよ? でもね、私の目的の一つが果たせない可能性が高くなるから、悩んだんだよ?」
「目的て何?」
「ひ・み・つ」
「ふざけるな」
「じゃあ、話は終わり。盗むのは物とかだと大した制約ないから、じゃ、スキルの確認はちゃんとしてね。使いすぎるとまた倒れるから」
「どれくらい使ったら倒れるの?」
「知らない」
「おい」
「だって、うさぎ専用スキルだもん。私も実験中」
「実験すんな!」
「めんご、めんご」
イナは立ち上がる。
その時、襖の向こうから華菜の声が聞こえた。
「うさぎー? 大丈夫ー?」
「大丈夫!」
私は反射的に答えた。
イナは襖に手をかける前に、振り返った。
「うさぎ」
「何?」
「次は、血を吐くくらいじゃ済まないかもね」
「……脅し?」
「忠告」
イナは、にこっと笑った。
「それでも使わないと、皆死ぬよ? じゃあまたね」
襖が開いた。
イナは最後にもう一度だけ私に笑って、おいちゃんを連れて出て行った。
新しいスキル。
盗む範囲。
皆死ぬ?
絶対に死なせない……。
皆が死ぬ事だって、盗めるなら盗んでやる。
イナとおいちゃんが出て行ったあと、華菜達が一斉に部屋へ戻ってきた。
私はとりあえず服を換装し、布団の上で正座させられた。
そして、リンクから私が倒れた後の話を聞いた。
結果。
私は今、叫んでいる。
「うおおおおお!!」
頭を抱えて、枕に顔を埋め、足をバタつかせている。
簡単に話すと、処刑は中止になったけど……。
賠償金「八十二億」
四億と合わせて……。
「八十六億ペニー」
ハチジュウロクオクですってええええ!!!
「何でこんな事に……」
「ふーん? 分からないの?」
「おい、華菜」
「うさぎ、まだ体調が」
「あーん? 黙れぇ……」
華菜は、低い声で言うとリンクと直哉を睨みつけていた。
「お前ら、正座しろ」
「はい!」
「はい!」
二人は、正座した。
あの?
華菜さん?
華菜は、私を睨んだ。
王様くらい怖い形相で。
私のほっぺを両手で思い切り引っ張った。
「いひゃーい!! 華菜様!!」
「全部! あんたのせいでしょうがあああ!! どうすんのよおおお!! 八十六億!!」
「大丈夫! 私が何とかする!」
「あんたがやったら、また増えるでしょうが!! このポンコツがあああ!!」
「うわ! ひっど! ねえ、華菜がポンコツって言うんだけど? リンク、直哉、酷くない?」
「いえ、華菜様の」
「言う通りかと思います」
「会話を繋げるな……華菜、落ち着いて? 次、次は絶対に大丈夫だから……ね?」
「ああっ!? お前は、金に絡むなああ!!!」
「待って! 秘策! 秘策思いついた!」
立ち上がると、目眩が。
大量の血を吐いたせいか、それとも八十六億の借金のせいなのか……。
バタッ。
「うさぎ!!」




