十一話 絞首台の上に立つ
今、私達は、絞首台の上に立っている。
「やだやだやだあああ! 死にたくない! 死にたくない!! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさーーい!」
隣で、華菜が泣き喚いている。
何故こんな事に……。
三日前、私達は城に忍び込んだ。
「スキップ♩ スキップ♩ ランランラン」
「何でそんなに楽しそうなのよ。やめようよ」
「一応、行くだけな」
「リンク」
「一応な」
「だな」
華菜が泣きそうな顔で私の袖を掴む。
「うさぎ、ね? やめよう? ね?」
「ヤダ! ここまで来たら後には引けねえぜ」
リンクが周囲を見渡していた。
「でも、本当に誰もいないな」
「ね? いける! これなら! 誰かいたらにげよ?」
華菜は、掴んでいる袖を振る。
「約束だからね」
事前においちゃんから情報を聞いていたのは、良かった。
ここのお城は、電気がないらしい。
すべて油で、灯りをつけていると言っていた。
電気にすると、油を売っている人たちが困ると王様が言っているみたい。
本当は、いい人?
あの見た目で?
どう見てもヤクザ。
私達は、松明を用意した。
おいちゃんの助言だ。
教会の前を通り過ぎる時、窓からシスターが見えた。
「やばい。シスターが」
「え?」
前を見ると、リンクと直哉が走って逃げていた。
おい!
女の子二人見捨てるな!
「うさぎ、早く!」
私達は、無我夢中で走った。
「ちょっと〜。リンク、直哉、見捨てないでくれる?」
「いや……ごめん」
「悪い」
「二人、後で罰ね」
暫くして、お城の前に立つ『かなり。』の面々。
「ここから、始まるのだ。私達の伝説は」
「はぁ? 伝説? 犯罪の間違いでしょ?」
「でも、本当に誰もいねえな。門番すらいないぞ?」
「これは、いけるかも。浪漫が溢れる」
「でしょ?」
「三人とも、もう一回、話合おうよ。ね? やめるなら今のうちだって。卵みたいになったら……ね?」
「四億ペニー貰いにきましたー!」
「うさぎ!」
「華菜、大丈夫。誰も、本当にいない」
「でも」
「ま、行ってみるか」
「どこに行けばいいんだ?」
「こっち!」
華菜が、私の袖を引っ張ってついてくる。
松明の明かりを頼りに進んで行った。
「分かるのか?」
「金の匂いがする」
「うさぎ、もう、金の亡者だな」
そんな事を言いながら地下に進むと、厳重に鍵がかけられている扉があった。
「ここだ、絶対に」
「で、どうやって鍵あけるんだ?」
「だよな? 無理じゃね?」
「ねぇ、無理なら帰ろうよ」
「ふふふ……わたしを誰だと?」
「いけるのか?」
「開錠スキルがある」
「おお! 浪漫だ! マジで四億なんとかなるかも」
「だな!」
「ね? 華菜、大丈夫だって、四億手に入れよう」
華菜も、流石に目の前に四億あると思ったのか、頷いた。
シーフ専用のスキル、『開錠』を使用した。
扉には、一〇個の鍵がついている。
全て開錠し扉を開けると、同じ扉が現れた。そして、同じ様に鍵が掛かっていた。
「ねえ、ここ、マジであるんじゃない? ここまで厳重だし」
「ああ、マジで……」
「浪漫だ……」
この扉を開けた時だった。
変な匂いがした。
「なにこれ?」
「金の匂いじゃないな」
「でも、厳重だぞ?」
松明を掲げた。
壁に、大きな文字が書かれていた。
――火気厳禁。
その下に、もう一つ。
――火薬保管庫。
……。
火薬?
その時だった。
バチッ。
バチバチバチと松明の火が火薬の筋に燃え移り、火が火薬保管庫の方に向かって行った。
「お、おい!!」
「やばいだろ!! 浪漫じゃねええ!!」
「きゃあああ!!」
その瞬間、スキル『疾風』を使用した。
「皆、私に掴まって!」
皆が私に抱きついた瞬間に走った。
城の外に出た瞬間に飛ぶように、地面を蹴った。
一瞬で教会前まで、三人に抱きつかれたまま到着した。
リンクが言う。
「教会の中に避難!」
教会に飛び込んだ。
「お前ら、今日はなんだ?」
「城が! 爆発する!」
「は?」
「伏せて!」
「頼む! 爆発しないでくれ!」
華菜は震えている。
「今度は、何したんじゃああ!!」
シスターの叫びを合図に、とてつもない轟音が響き渡った。
教会中が震え凄まじい衝撃と破壊音がしたかと思うと、教会の上半分が吹き飛んだ。
「お、お前らああ!! 何やったんならああ!!」
シスターは、半狂乱となり怒鳴り始めた。
「ねえ、リンク」
「何だ?」
「やっぱり教会って安全じゃないね」
城大爆発の話は、大演習中の王様の耳に入り、大演習は中止になった。
その三日後に、私達は街の広場にて公開裁判が行われた。
いや、裁判ではない。
ただの処刑だ。
広場に行くまでに、お城の方を見た。
雄大に建っていた城の姿はなく、瓦礫が所々に散らばり、多くの建物などが破損しているみたいだった。
王様が姿を現した瞬間に、一言、裁判長に言った。
「処刑しろ」
裁判長はイナじゃないんだ……。
初めて、イナの出番に期待した。
お願い。
しかし、裁判長は一言。
「御意」
ひいいい。
わたし達の処刑が即決定した。
その時、シスターが進み出た。
「陛下、お待ちください。この方々にも釈明の余地を、すぐに処刑などと」
シスター、頑張って!!
「ああ? この者達を庇うのか? ならお前も処刑だ」
王様の額には、何本も血管が浮いていた。
「陛下、私の勘違いでした」
おおい!
シスター!!
引き下がるなああ!
そして、すぐに絞首台が用意され、私達はその上に立たされた。
シスターが十字を切っている。
見物の人達が、私達を見ていた。
リンクも直哉も血の気が引いた顔で震えている。
どうする事も出来なかった。
華菜が叫んだ。
「ヤダああああ!!!」
王様が手を挙げた。
処刑人が華菜の腕を押さえ、首に縄をかけようとした。
華菜は首を振って、必死に抵抗する。
その時、ふと思った。
盗む?
何でも?
命以外盗む事が出来る?
それなら……。
……。
人の気持ちだって!
「一か八かだ!!」
私が叫ぶと、皆が私に注目した。
スキル『盗む』を発動する。
「王様の私達を処刑したい気持ちを盗め!!」
次の瞬間に、私の右手に黒い霧の様な物が握られていたが、すぐに消滅した。
リンク、華菜、直哉が私を見ている。
王様は、動きが止まっていた。
その時、お腹?胸?から熱いものを感じた。
「うえええええ」
ビチャビチャビチャ。
口から大量の血が吐き出され、意識がそこで途切れた。
王城爆発は、ただ城が爆発しただけではなかった。
この爆発をきっかけに、この世界は大きく揺らぐ。
戦乱の火種となり、多くの人が命を散らす事となる。
その渦の中に、私達も飲み込まれる事に……。
そんな未来を、この時の私はまだ知る由もなかった。




