お約束
「え、姫様。本気ですか!?」
なぜか少年が、お姫様に聞きかえしている。
─────え、何?何か問題でもあるの?
「え~と、取りあえずこちらです~。あの~女性用なので、僕はここで失礼します~」
女性専用という事で、少年はそそくさと退散していった。さすがに居づらいらしい。
ちなみにシロ君は、お腹が満足したのか、お姫さんの部屋でお間抜けな姿をさらしてる。 どうも絨毯の感触を、全身で感じているらしい。
「さささ、リオ姉さん。どーぞこちらへ」
二人きりになった所で、お姫さんが「どーぞどーぞ」とグイグイ私を扉の方へ押しやる。
どぱぁーんと開いた扉の向こう。
「きゃ─────。すご─────い!ひろ─────い!おおき─────い!」
そして、ガクッと膝から崩れる。
「思ってたのと違─────う!うわ─────ん」
扉の向こうは確かに広々とした大浴場だった。‥‥‥‥だった。
「これ使ってないよね?ていうか使わなくなってから、どれだけ経ってるの?」
「知りませんっ!私達がここへ来たときには既にこの状態ですっ!」
どどんっとおかめ顔でドヤられた‥‥‥‥。
浴場は大きな湯舟らしき跡と洗い場、湯が出ていたであろう湯口は、何やら黒い染みや何やらこびりついている。全体的に埃っぽく薄暗い。
「こ、ここって結構な人数いるよね?そのための施設だよね?」
─────今までどうしてたの?他にあるの?と聞けば。
「ありませんっ!王都ではお風呂は貴族の贅沢です!基本みんな水浴びですっ!」
ちなみに私は『クリーン』が使えますっ!お姫様はのたまった。‥‥‥‥私もだよ、お姫様。
「‥‥‥‥水浴び」
「お城に居た侍女達も、近くの川でザバザバしてます‥‥‥‥」
お城の侍女ってそれなりのお嬢様達じゃないの?と聞けば、皆それなりのお家の出らしいが「大した事ないです」の一言で雪解け水が流れる川に飛び込むらしい‥‥‥‥。
‥‥‥‥逞しすぎる。
「私は『チート』じゃないんで、こういう施設の構造はどうなっているのか分からないですけど、お姉さんならいけそうな気がします」
そして、両手を────パンっと合わせる。
「それはやっちゃダメやつ‥‥‥‥」
言いながら自分もパンっと両手を鳴らす。某有名漫画の代名詞だよね。
「ま、いいや。出来るかどうか分かんないけど、取りあえずやってみよう」
─────パタンと扉をしっかりと閉めて。
「目つぶっておいた方がいいよ。─────たぶん」
─────なんで?首をかしげるお姫様の目の前で『ナビ』が出現する。
『「クリーン・強」「修復・中」を推奨します』
「─────はいよ!ごりごりいこうか!」
私は熱い湯につかりたいんだっ!
─────パアァと広がる白い世界。─────あ、まぶ‥‥‥‥。




