むかしむかし
─────にこぉぉと、笑顔で答えてあげたのに、何故かおっさんは青い顔になった。 笑顔で答えてあげたのに、なぜに?─────解せん。
「んん゛っ、─────じゃあひとまず安心って所だな」
ハハハと何故かワザとらしい笑いを出しながら、ワインを飲み干すおっさん。
ワインはそんな一気に飲む物じゃないと思うが、こちらでは違うのかな?
「‥‥‥‥それで、異国の来訪者よ。こちらに好意的なのは分かった。どうじゃ姫様の『呪詛』は解けそうか?」
『異国の来訪者』?ああそっか、びっくりした。他国ってことね。正確には私は『異世界の来訪者』だけどね。
「‥‥‥‥ああ、あれね。時間がかかりそうだけど‥‥‥出来るよ」
「本当か!?」
─────やった事ないけどねっ!てへっ。
『鑑定』とか『ナビ』とかいろいろ、ガリガリゴリゴリ全開に使いまわせば、なにか糸口が見つかるだろう。
─────というより『呪詛』が、ピンク教関連ってのが一番気に入らない理由だったりする。
「ピンクの奴らに優越感なんか与えるもんか!─────ヌハハハ」
カツンとフォークが皿に当たった。─────あれ?ここに美味しいお肉があったはずなんだけど。皿の上には、肉があったであろうソースが少し残っているだけ。
「‥‥‥‥」
思わず目の前のおっさんに視線を向けるが、濡れ衣だと言わんばかりに、高速で首を横に振って、私の隣を指さす。
そこにはとてもいい姿勢で、口をモゴモゴさせているシロ君がいた。
「─────ちょ、ちょっとシロ君っ!」
「ワウワウワウ!(冷めると味が落ちるだろ!)」
きっちり食べてからお返事が来た。味が落ちるとか、グルメの感想かい!
「噂のフェンリルか。こんな近くで見れる日が来るとはな。まるで、『勇者の物語』のようじゃな」
「─────え?」
─────ナニソレ初耳。
「お前さんは異国人だから知らんのか」
なんでも『むかしむかしあるところに、フェンリルをつれた勇者がいました』の出だしから始まる物語があるそう。
幼児でも一度は絵本で読むような、ごく一般的なおとぎ話らしい。
「絵本はおとぎ話だが、元はちゃんとした話だ。『勇者とフェンリル』の絵画なんかは今でも人気がある、貴族の屋敷なんかは必ず一枚はあるぞ。─────家にもあるし」
「はいっ質問!勇者は『俺は勇者だ』って自ら名乗るモンなの?」
「ワシに聞くなっ!だいだい毎年、その手の奴が湧くんだぞ?牢にぶち込んで、説教するこっちの身にもなってくれ」
「あ~あったかくなって来ると、湧いてくるヤツね~メンドくさそう~」
向こうの世界でもあったな~、春になるとおかしい奴が湧くんだよね~。
こっちは捕まって、ある意味人生の黒歴史を作るわけだ。
「お姉さん、お肉のおかわりいかがですか?」
きゃ~救世主が来たわ─────。
「お、良さそうだな。ワシの分もあるか?」
「はい、ドルク様の分もありますので」
雑用係の少年の方を振り向いた瞬間、おっさんの胸元で何かが光った。
よく見れば、それはタグのような物だった。
─────ん?どっかで見たような‥‥‥‥どこだっけ。




