塵一つ残しません
「お前誰だって顔してるな?あんな派手にどてっ腹に手ぇ突っこんでおいて、つれないねぇ」
─────ああなんだ、最初に手突っこんだおっさんか。こりゃまた、派手な頭になったねぇ。頭の毛もそうだけど、全体的に張りがあって、まるで別人だ。さっきまで車椅子でしょぼくれていた人とは、とても同一人物に見えない。
─────というかその頭は、それで正解なのか?おっさんのくせして派手すぎじゃないのか?
私の視線の先に気づいたのか、おっさんはフフンとトサカを撫で上げる。─────あ、気に入ってるのね。まぁ、私は個人の趣味にあまり口は出さないよ。本人の好みだからね。
「ワシはドルクだ。前は騎士団の団長なんて肩書だったが、今は引退した老いぼれさ」
「今でも十分、現役じゃないの?」
「ハハハハハハっ言うね、姉ちゃん」
別にお世辞のつもりでも何でもないんだけど、このおっさん引退したとか言ったけど、そこらにいる隊員達より、よっぽど強い気配がビンビンする。
腕の筋肉なんかパツパツで、鍛えられているのが十分わかる。
「なに、古いモンがいつまでも上にいると、邪魔扱いされるんでな、さっさと席を空けたわけだ。まあ、そのおかげで個人的に、姫様の護衛に加わる事が出来たんだから、儲けもんだ」
「それで、足一本持っていかれたわけだ」
「ああ、ちょっとヘマしちまってな。歳は取りたくないもんだ」
そう言って元に戻った足を、パンパン叩く。
「戦いに身をおいてりゃままある話だが、あの後姫様に泣かれてな。あれがひどく堪えたもんだ」
そう言いながら、私の前に並べられた肉料理の中から、串に刺さった肉を取っていく。 豪快に齧り付きながら「ん?コレはビッグボアの肉か」と更に串を取る。
「さすがに参ってたんだが、アル坊と姫様が試してくれって言うもんだから、何をされるかと思ったらこの通りだ」
シャラララと髪の毛を撫でる。─────いや、それは違うからね。
「というのは置いといてだ。────それで?ワシの腹から出てきたのは何だったんだ?」
チラッと周りを確認したが、私達に気にしている人はいないようだ。
ここで適当に誤魔化しても、このおっさんは解放してくれなさそうだ。まあ、当事者だし、本人には知る権利もあるか。
「あれは『毒素』」
らしいよ。私も知らなかったけどね。
「『毒素』じゃと?」
「魔獣に襲われたでしょ?その時に故意に植え付けられたのよ。ゆっくり、確実に、死に向かうように」
「‥‥‥‥そんな物が。他の者は大丈夫なのか?」
「全部取ったよ。そりゃもう塵一つ残らないぐらいにね」
ズビシィと肉の串でおっさんを差す。取られてばかりじゃ面白くない。
「故意と言ったな。術師がいるという事か?」
「─────いた?んじゃないかな?勘だけど『深淵の森』にいた、ピンク教の奴がそうだと思う」
─────穴に落として埋めたケド。
そう言いながら、串焼きに齧り付く。─────ナニコレうま。
「‥‥‥‥奴らか。落として埋めたとは、穏やかじゃないの」
「ゴミ掃除しただけよ」
ピンク頭崇拝している輩に慈悲?─────ないよ。




