空も飛べる
出来上がったホッカホカのフライドポテト。
その上から念願の!塩をパラパラと振りかけましてっとっ!
「やりぃ!出来たっ!」
細長く切り刻んだ、ホカホカポテト。
第一陣を我慢できずにパクリといただく。
‥‥‥‥あ。と周りのギャラリーから声が出るが、そんなの関係ねぇ。
「うまっ!外はパリッと中はホクホク。上出来、上出来。やっぱ塩が一番ね」
もっもっもっ。と次から次へと口に入れる自分を、じーっと見つめるマールさん。
「‥‥‥‥あたしも味見していいかい?」
もちろんどうぞ、熱いから気を付けてね。と揚げたてのポテトを籠ごと差し出すと、恐る恐る口に入れる。そんな警戒しなくっていいのに~と言いつつ、感想が気になる。気になる。気になる。
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
‥‥‥‥マールさんや、なぜ無言なのだ。
私を含めた皆が、何故か無言のマールさんを見つめる。
「‥‥‥‥マールさん?」
マールさんの隣にいた人物が、沈黙にたまりかねて訊ねると。
─────はっと気付いたマールさん。何故か籠を両手で囲い込む。
「こ、これは、もうちょっと食べないと、わ、わからないヤツだねっ!」
─────あ、後引いてるな。食べだしたら止まらないやつだ。
「ちょ、俺も味見したいっ!」
「マールさんずるいっ!」
「絶対美味しいヤツだっ!」
わあわあと、マールさん対周りの人間の奪い合いが始まった。やれやれ、と鍋の中で仕上がった第二陣を掬い上げ、次々と籠に積んでいく。背後の奪い合い戦争をBGMにサクサクと作業が進み、結構な数が出来上がった。その間、戦争からはじき飛ばされた数人が、コソコソ寄ってきたので、顔も見ないで、すっと渡す。自分の食材じゃないしね~布教は大事よね~。
「マールさ~ん。この籠、借りていっていい?」
綺麗に盛り付けた籠を二つ持ち、背後を振り向けば、マールさんの籠は見事に空になっていた。
「‥‥‥‥あ、ああ。そりゃ構わないが、何するんだい?」
「─────出前かな。あ、残りは皆さんでどうぞ」
周りの目がギラッとした。─────こわっ。皆さ~ん、何事も食べすぎは良くないよ~っと言ってみたが、聞いちゃあいねぇ。まあいいか。
とはいえ、砦の内部はまだ知らないので、マールさんが一つ籠を持って案内してくれている。
「あんたが芽って言ったのは、そういう事だったのかい」
歩きながら、ジャガイモ料理の説明を求められたので、詳しく説明するとやっと納得してもらえた。アレンジも色々利くよというと、メニューが増えるとキラキラしてた。
そう言えば、この人の料理も美味しいって聞いたな。楽しみ。
そんな料理談義をしていると、目的地と思われる扉付近は、なにやら大騒ぎの真っ最中のようだった。
「─────そこをどきなさいっ!私の求めているのがあるのよっ!」
「だから、窓からはマズイってお嬢っ!」
「ここ三階ですよっ!」
「私はフライドポテトが食べられるなら空をも飛べるわっ!」
「ちょっと、何いってるんですかっ!」
空は飛んじゃ駄目だよ~私みたいなのが増えちゃうかもだし。
やっぱりさっき叫んでた女の子、『同郷』だね。
「お邪魔するよ~。ご希望のフライドポテト、出来立てだよ」
開けっ放しのドアから、そのまま室内に乱入していくと、中にいた全員の視線が集中する。 顔なじみになった三人と少年、なぜか長椅子を占拠しているシロ君と、そして女の子‥‥‥‥?
そこには何故か、時代劇か歴史の教科書資料でしか見ない、旅姿の女の子がいた。 ただし、下の衣装は洋装っぽい。
「ん?‥‥‥‥虫の垂れ衣?室内だよな?」
「ひゃああぁぁぁぁ─────っ!待ってました─────っ!」
私の疑問にはお構いなく、女の子はラングを突き飛ばして突進してくる。
あまりの勢いに、市女笠風の帽子が傾く。
─────ぽんっ。
勢いに負けて、帽子が飛ぶ。
それでもお構いなしに、女の子は突進してくる。
「念願のポテト─────っ!」
「おわ─────っ!おかめ─────!?」
布の壁の中身は、昔懐かしい『おかめさん』だった。




