コスプレ?
「これです。これに会いたかったんですっ!」
「‥‥‥‥うん」
実にシュールな光景だ。
『おかめさん』が涙を流しながら、フライドポテトを食している。
突進してきた『おかめさん』に引きはしたが、そこは日本人。コスプレ文化がある。
そういうものかと馴染むのが早い。『おかめさん』頭だけだけどねっ。
細い垂れ目に、ご丁寧にぐりぐりに頬紅が描かれ、小さな口には歯まで見える仕様。
知らないとビビるよな。
しかも、何故か仮面じゃなくて頭部をすっぽり被っている仕様で髪も見えない。
まるで、着ぐるみの頭部だけを被っている感じだ。どうなってるのコレ?
「それ、どっから食べてるの?」
「よくわからないですけど、口からです」
へ~~と言うしかない。
ソファに座っているのは、私達だけで、後は入口付近でマールさんにたかっている。
今食べているのが、一時騒ぎになった食材と知って、マールさんに説明を求めているのだ。マールさんごめんね。
私は、長椅子に寝そべっていたシロ君の隣に強引に座っているが、そのシロ君が前足でチョイチョイ私をつついてくる。
泣きながら食べる彼女には引いているが、味には興味があるようだ。
「はい、シロ君」
一口で食べてしまうと、気に入ったのかもっと寄こせとテシテシしてくる。
一通り食べて、飲み物を入れてもらった彼女は、やっと一息ついたようだ。
「取り乱して申し訳ございません。‥‥‥‥それでですね」
チラリと彼女は室内の人間に顔を向ける。
そちらも心得たもので、ササっと代わりのお茶セットを用意して、退室していく。
パタンと閉じられた室内には、私達と彼女と、隊長さんたち三人。
何故か、フリート副隊長の手に、フライドポテトの籠が握られている。─────気に入ったんだ。
「俺達は立ち会うぞ」
「ポテト手に持ったまま、何言ってんのよ」
キリッと宣言するが、ポテト手に持ったままじゃ、締まんないよ。
「‥‥‥‥あの、今更なんですが、私の姿に拒否感はないですか?」
「ん? まあ、突進されればさすがにびっくりするけど、それ『おかめさん』でしょ?コスプレ?趣味なの?」
「こんな中途半端なコスプレ私は認めませんっ ─────これは『呪詛』なんです」
『おかめさん』頭部の呪い?なんだそりゃ?シロ君と一緒に首が右に傾く。
「ええとですね、とりあえずやりにくいので『日本語にしませんか?』」
うええぇぇ?私日本語喋ってないの?こちらに来てから言語に苦労してないから、一緒の言葉と勝手に認識してた。
「私、日本語じゃない?何語喋ってるの?」
「綺麗なこちらの共通語です」
「普通に会話出来ているから、分からなかった。『こうかな?』」
『そうそうっ!』
久しぶりの日本語に彼女は喜んだ。
彼女はクリスティーナと名乗り、例にもれず『転生者』だという。
王国の王女様という身分に生まれ、『転生者』よろしく地道にレベルアップを図った結果、聖女さまと言われる存在にまでなり、国のアイドル的存在にまでなったらしい。
『お姫様は、お城にいるもんじゃないの?』
『それがさぁ、もう!聞いてよ聞いてよ~!私すっっごく頑張ってたのにさ~』
お姫さんの口調がだいぶ崩れて、愚痴大会の様になってきた。
─────おかしいな。このお茶、アルコール入ってないよね?




