かみさま
突然叫びながら立ち上がった男。
背中を覆うほどの、めっちゃロン毛。手入れもされていないようで、ばさんばさんしている。
─────あんな恰好の人いたっけ?
その証拠に周りも「おい、あれ誰?」「あんな奴いたか?」ひそひそ遠巻きに見ている。騎士であるならば、ある程度身綺麗にしておかないと、怒られるのじゃないのかな?
そんな事を思っていると、件の人物がぐりんっと振り向いた、と思う。
顔があるであろう部分も、背中と同じ髪の長さで、さっぱり顔が見えなかったからだ。
髪の毛の隙間から辛うじて、血走った右目が覗いてる。はっきり言って─────ホラーだ。
「うおぉぉぉぉぉ─────ん。あんた!神様だろうっ!神だよなっ!ぜったいそうだよな!?」
「ちょ─────っ!」
─────ゴっ。
飛びついてきた妖怪(?)の顔面を、思わず足で止めた自分は悪くないはずだ。
顔面にヒールの部分が喰い込んでいるのもお構いなしに「神だ!神が現れた」と両手を広げたままジリジリ進んでくる。‥‥‥‥なにぃ、私が妖怪(?)に押し負けている、だと。
「やめんかっ!ニルス!」
ごちんっと隊長の拳骨が落ち、妖怪(?)は強制退場となった。
「ニルス?あれニルスなのか?」「は?マジ?」「嘘だろ‥‥‥‥」「そんな事あるのか‥‥‥‥」「すげぇ‥‥‥」
ズリズリ引きずりながら連行されていく人物を、皆が驚愕の視線で見送る。
なんとなく奴の視界に入りたくなくて、雑用係の少年の背後に回って盾にする。
「なにあの人、どうしたの?」
「ニルス隊員はですね、‥‥‥‥ちょっと、髪が‥‥‥‥。本人は気にしてない、むしろこれは男の色気だって言ってたんですけどね‥‥‥‥違ったんですね‥‥‥‥」
少年はイチゴの入った籠を大事そうに抱え、ため息をつく。
─────あ、察し。やべぇ『治癒』やべぇヤツじゃん。
うん、ヤラカシタ。シロ君、ジト目がきついです。だって仕方ないじゃないか!そんな所に作用するなんて思わなかったもんっ!経験値があんまりないから、知らなかったもんっ!花畑にならなかっただけマシじゃんっ!やめて、糸目にならないでっ!
ラングは一連の騒動を、焚火の前に座ったまま、唖然と眺めていた。
─────そこである事に気づく。うちの隊はこういう騒ぎの場合、隊長より先に副隊長様が動くはずなのだが。
その副隊長を見やれば、何故か目を見開いたまま微動だにしない。
「‥‥‥‥お前どうしたんだ?」
声をかけると、はっと起動し始め、そっと眼鏡を外す。そのまま眼鏡は、ゆっくりと内ポケットへとしまわれた。
「眼鏡が必要なくなりました‥‥‥‥」
「‥‥‥‥マジか」
「子供の時以来の視界。感激です‥‥‥‥」
「‥‥‥‥おう‥‥‥‥そりゃよかったな‥‥‥‥」




