なつい
現れたのは、どこぞで見覚えのある全身黒装束の‥‥‥‥
「ハルじゃないか。もう来たのか」
「来ましたよ。私は貴方付きの者なので、先行で来させていただきました」
「別に付いてこなくてもいいんだが‥‥‥‥」
「御屋形様から目を離さないよう、命を受けておりますゆえ」
‥‥‥‥あれか、お姫さんが言っていた、もれなく『ついてくる』ってヤツの一部って事か‥‥‥‥というか。
「忍んでない忍びの者?御庭番かい‥‥‥‥マジ?」
思わず思ったことが口から出てしまった。
─────だって、ザ・忍者的な黒装束の人がこの異世界にまで来て会えるとか‥‥‥‥。元世界だって、アトラクションのある所しか会えないのに。
私の独り言に、チロリと目線をくれる忍者君。
「普通の平民だと見ておりましたが、どうやら違うようですね」
─────おおぅーと、皆さん聞きまして? 平民ですって、へ い み ん。
今まで散々自ら主張してきた、『普通の一般人』でしてよ~。─────ん?『違う』?
「違わないよ。私は『普通の一般人』だよ」
「─────普通の平民は、『御庭番』という言葉を知りません」
「え~それ~?自分その格好でがっつり主張してるじゃん~」
「その事も、一般人は知りません」
─────あ~、そう。そうですかいな、はいはい。じゃあなんで、その格好で出て来るんだよ!
なんかコイツ、こちらを不審者を見るような目つきで睨んでくるな~。
あちら側からすれば、私は怪しい人物になるのか? ─────え~それはちょっと納得いかないわ~、そっちは公然猥褻の不審者なのに~。
一人、ぷんすこしている私には興味がないらしく、奴は懐から一冊の『ノート』を取り出した。
─────そう『ノート』だ。
「一族に伝わる『古文書』を勝手に持ちだすなど、あってはなりません。ましてや他人に渡すなど」
「‥‥‥‥いや、アリサが読めると言うから、翻訳してもらおうと」
「その御仁は、一族に伝わる大事な『古文書』をチラっと見ただけで、後は自室で大変雑に置いてましたよ」
─────我慢ならず回収してまいりました。
と、主人に渡す御庭番。
チラッと見えた『ノート』は、懐かしの○ンパスノート。
やべぇ、学生時代を思い出すわ。自分も大変お世話になったわ。
─────ぽす。
何故か○ンパスノートが、今自分の手にあります。
─────うわっガチ本物じゃん。なっつ ─────いや、違う違うちがうぅっ。
「な、なんで、私に渡す?」
この公然猥褻男、従者から渡された、一族の大切な(たぶん)『古文書』とやらを何のためらいもなく、こっちに渡してきやがった。
見ろ、お前の従者も、驚愕の表情を隠せてないぞ。
「え?見たかったんですよね?どうぞ」
─────軽っ!
自分には関係ないが、そういう扱いの物じゃないと思うぞ‥‥‥‥知らないけど。
お前付きの従者が、今にも死にそうな顔になってんじゃん。
懐かしの『ノート』に目をやれば、がっつり表紙に書き込みがしてあった。
『 和也の日記 』
─────おぅふっ。日記帳なのか‥‥‥これ。




