ヤベェやつがいる‥‥‥‥
「‥‥‥‥逃げられた‥‥‥‥めっちゃムカつく‥‥‥‥」
テッシテッシテッシテッシ
「もうちょっとで、イケる所だったのに‥‥‥‥」
テッシテッシテッシテッシ
「あの聖女モドキも、それなりに『チート』だった訳だ‥‥‥‥」
テッシテッシテッシテッシ
「まあ、情報はちょっと覗かせてもらったから、良しとするか‥‥‥‥」
「ワウワウワウッ!(おい!コイツ何とかしろよっ!)」
「シロ君。私は今夜の風呂の為に、この壁を修復する使命を負っているのだ」
「ワウワウワワウ!(面倒くさいだけだろ!)」
─────正解である。
正直、面倒くさい。何かって言うと、ただいま自分達の周りを、『流れの聖騎士』ジークこと『はた迷惑な脳筋』が、私とシロ君の周りをウロウロしながら「自分はジークと申します!」「貴方の技に感服いたしました」「フェンリル殿にも出会えて感激です。これからよろしくお願いします!」と一方的にぬかしながら、今もシロ君の周りを「いいい毛艶ですね。最高です」と付きまとう始末。
賢いシロ君はそれを無視しているが、見知らぬ男にウロチョロされて鬱陶しいとばかりに、尻尾が不機嫌にシタンシタンと地面に打ち付けられている。
─────技って何だよ。ぶっちゃけ自分は、折った杖でフルスイングをかまして肋骨を粉砕したくらいで、感服するような事は一切何もしていない。
空から着地地点にして、半分陥没させた事? ─────アレは皆の幻だから‥‥‥‥ノーカンで。
かなりのダメージを負わせたはずなのだが、我に返った奴は自分で『ヒール』をかけて秒で直しやがった。─────何コイツ。これが脳筋チートって奴か。
「─────何言ってんの?意味解んないわ」
言いながら半分になかった杖を、またポキポキ粉砕してやった。金属製だからバキンバキン派手な音が鳴って皆にドン引きされたけど。
最後に、杖の先端に装飾されていた『宝玉』みたいなものを握り込んで粉砕しようとしたら、お姫さんに『コレお高い奴なんです!』って分捕られた。まぁ、石の色はピンクじゃないから見逃してやろう。
「第一私、ピンク嫌いなんだよね」
森の中にいたイカれた奴と同じく、ピンク裏地のマント。加えて奴は、差し色にピンクが入った聖騎士服なる物を着ていたので、嫌なものを見るような目つきで見ていると、「それもそうですね」と男はにわかに仁王立ちになり、己の筋肉で、パアァン─────と自らの服を粉砕させて真っ裸になった。
─────そう、真っ裸である。
「きぃやぁああああぁぁぁ!!」
「うわぁ!お前何してんだよッ!」
「アル隊長。そちらの服貸してくれませんかね?」
「その前に色々隠してくださいっっ!!」
「‥‥‥‥」
─────修羅場だ。
真っ裸の男に、ぎゃあぎゃあと取り囲む男達。きゃあきゃあ悲鳴を上げながらも、顔を隠した指の間から、チラッチラッと盗み見しているお姫さん達。
いろいろツッコミたいが‥‥‥‥。─────私?あまりの事に白目になったよ。
─────こいつヤベェ奴だ‥‥‥‥だけである。
ぎゃあぎゃあ騒いでいるのを横目に、白陽は一体人間たちは何をやっているんだ、とばかりに寝そべってまったりしていたのだが、今度は着替えてきた男に、自分の周りをウロウロされて鬱陶しい事態になったのである。




