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8話 ローズとの再会

「凄いな。松明(たいまつ)いらずだよな」


「良かったです。太陽の日に雨が降ればここへは辿り着けないかもしれませんでしたし」


「ふんっ。私はグリーンマンが居ても良かったんだけどな」


つい昨日まで殺されかけたじゃねぇか。


「何か言った?」


「いや何も」


ジン・バーネットはテトラとゾフィーの2人に挟まれ道を進む。


「しかし、筋肉のトレーニングだけでここまで体って大きくなるんですね」


「ええ。私もビックリです。だけどこの体、やけにお腹が空くのでジンさんが沢山肉を持っていてくれて良かったです」


「肉商人だからね」


「えっ?そうなんですか?てっきり求道者かと…」


「まぁ色々あって…」


「こいつは定住者だよ」


その言い方辞めろって。


俺をルッド教会へ連れて行く罪悪感とかないのかこいつは?


――洞窟内を歩くテトラを見つめる。


俺は昨晩の会話を思い出す。


テトラは鬼が攻めると言っていたが、一体どういう事だ?テトラの目的は…


「見えてきたぞ」


一本道を抜けると眼前には広大な草原が現れた。


「タンタウン広場か…昔は人間が住んでいたんだよな」


今は鬼の領土であり、人が来る事は無い。


「しっかし綺麗だな」


「ええ、本当にお綺麗。ここでお弁当を食べたいですね」


一面の花畑が広がるのどかな光景。蝶が花の蜜を吸い小鳥が鳴く。


「鬼が居るとは思えねぇな…」


3人は花畑を通り過ぎ、ポツンと立つルッド教会を見つけた。


「あれか?」


木陰に隠れる3人。


ボロボロにくたびれているが、まるで鬼の住処とは思えないぐらい平和な教会に見えた。


「見た所、鬼は出てきていない様だな」


テトラが息を潜めながら周辺を観察している。


「本当に見るだけなんだろうな?」


「ええ、そうよ」


ルッド教会へ近づくにつれテトラが緊張しているのがわかる。それにしてもこいつの目的は…。


と、聞き忘れた事を思い出した。


「そういえばゾフィーは、どうしてルッド教会へ来たんだ?」


「あっ、すいませんまだ言っていませんでしたね。実は鬼に妹を連れ去られてしまって」


「…えっ?」


「ルッド教会にいる鬼だという事は分かったので、ここに来れば妹を救出できると思いまして」


「ルッド教会の鬼って事は…」


「チェンチェンという鬼です」


ジンとテトラの顔面が強張る。


一気に血の気が引く。


チェンチェンとは、ルッド教会を根城とする鬼の一種だ。


「…それは、妹がいくつの時?」


「9年前なので、私が15歳だったから、妹が2歳の時です」


「それって…」


「止めろテトラ!」


テトラの口を塞いだ。


「…この話をすると皆そうして口をつぐみます。分かっています。妹は殺されている可能性が高いでしょう。でも、やっと見つけた手がかりなんです。自分で確かめたいんです」


「…知らないのか?チェンチェンの事を…」


「テトラ!」


思わず叫んでしまった。


教会から数匹の鬼顔を覗かせ、こちらの方向を見つめる。


「チッ。音が響いた」


「静かに!チェンチェンが来る!」


教会から出てきたのは、2本のツノとフクロウの様に灰色の羽毛に覆われた鬼だ。


「やっぱり。チェンチェンだ」


「あっ!あれは!」


ゾフィーが声を出した。


チェンチェンの背後に小さく、ブロンズの髪でツノが生えていない小柄な子どもの姿を見つけた。


「ローズ!ローズなのね!」


「止めろ!ゾフィー!」


ジンは突然立ち上がるゾフィーを静止する。


「ローズ!私よ!ゾフィーよ!」


「バカっ!聞こえるだろ!」


「ローズ!生きていたのね!もう大丈夫よ!私が助けるから!」


「ゾフィー…」


2匹のチェンチェンは羽根を広げこちらへ飛んできた。


「ギャ!ギャ!ギャ!」


「来たぞ!ジン!ゾフィーを守って!」


「ゾフィー、こっちへ!」


「どいて!ローズが居るの!」


ゾフィーは杖で1匹のチェンチェンを殴打し叩き落とした。


「ギャー!ギャー!」


「チッ。鬼をやっちまったか」


「もう後戻りは出来ないよ!トランスフォーム!」


テトラは剣を伸ばし1匹のチェンチェンを串刺しにする。


よし、動きは止まった!


「ローズ!どこ!ローズ!」


ゾフィーが草原に出てローズを探す。


「危ない!ゾフィー下がれ!」


「痛っ…」


ゾフィーは足に痛みを感じ下を見る。


幼いブロンズの髪をした子どもが、ゾフィーの足に噛み付いていた。


「ローズ!私よ!ゾフィーよ!ローズ!」


噛み付いている子ども“ローズ・リーン”の目は狂気に満ちていた。


思わず足を振り払うゾフィー。

ローズは草原に飛ばされた。


「…ローズ?」


近寄ろうとするゾフィーをジンが静止した。


「待て!ゾフィー!」

「離して!」


「知らないのか?チェンチェンは、人間の夫婦から生まれたばかりの子どもを盗む、子盗みの鬼だ」


「…子盗み?」


「そうして羽根から鱗粉をふりかけ、人間の子を下僕として仕立て上げるんだ」


起きあがろうとするローズの背中には灰色の毛がびっしりと生えていた。


「…チェンチェンに盗まれた子はもう人間には戻らない」


「…人間には、戻らない?」


ローズは鬼の狂気の目でゾフィーを睨みつけていた。


「…ローズ?」


ゾフィーは壊れた。


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