26話 ジン・バーネット、また捕まる。
見えてきたな。
合戦の声がグラッドバックの草原の先から聞こえる。
草原には砂埃が舞っており、緊張感がこの距離でも伝わってきそうだ。
「さて、これからどうするか…」
3人は合戦への加入を思考する。
「そうですね…勝手に入って戦いに参加しちゃいます?」
「いや、求道者の軍に俺達が来たと、伝えないといけないだろう。軍からすれば人手は多いほど良いはずだ。とにかく声をかければ悪いようにはならないさ」
「そうですね」
もう合戦は目と鼻の先となっていた。
緊張感が増すジン。テトラはおそらく高揚しているだろう。いや、もしかしたらすぐに飛び出してしまうかもしれない。
チラッとテトラを見るジン。
テトラはどこかモジモジしている様子だ。何かおかしい。
「どうした?テトラ」
「…あっ、そうだ。なんかジンに渡す物があってさ」
「渡すもの?」
「いや、要らなかったら良いんだけどね…」
珍しく歯切れの悪いテトラ。
何かカバンをゴソゴソと探っている。
嫌な予感しかしない…。
「…はいよ」
「グローブ?」
テトラはジンに黒いグローブを渡した。
「あら、素敵な手袋ですね」
ゾフィーが言った言葉にテトラは過剰に反応する。
「いや、いらないなら良いんだけどね。家に行って剣を持ってきたついでにかっぱらってきたんだ。ほら、ジンは魔法陣布が無かったら火を起こせないだろ?」
「あぁ、燃焼用のグローブ?」
「“インフレーショングローブ”だ。このグローブは、親指と人差し指の部分に赤リンが縫い込まれているから、火種を起こせるんだよ」
「初心者の魔導士が持つ補助用のグローブだね。ありがとう、テトラ!」
「いや別に…」
グローブを右手にはめるジン。
「親指と人差し指を擦るだけで着火するのか。確かにこれがあれば燃焼の魔法陣布が無くてもいいな」
グローブは表面部分が分厚くなっており、防火の役割も果たしている。
「だけど何で今?昨日渡してくれても良かったのに」
「昨日の夜は…渡しそびれて気まずくなったんだよ!察しろよ!」
頬を赤らめながら怒るテトラ。
「…ご、ごめん」
「あら?昨晩何かあったんですか?」
ゾフィーは二人の変わった様子を肌で感じた。
「いや、何もないよ」
「そうですか!なら、頑張りましょうね!」
だが、ゾフィーはそれ以上には興味が無かったらしい。
「しかしどんな風に燃焼するかわからないな。一回擦ってみるか」
ジンは親指と人差し指を擦る。すると、かすかにだが火花が散った。
「結構軽くこすっても火花が出るんだな」
「気をつけろよ。炎の調整出来ないんだから」
テトラは注意を促すが、ジンにはもう少し調整が必要だった。
「分かっているよ。これで軽く炎をイメージして…」
ボォォォン!!
突然、ジンの右手から上空に火柱が放たれた。
「うわっ!!!」
「ちょっ!!」
「きゃーー!!」
魔力伝導率の高いグローブはほんのちょっとの魔力で大きな火となった。
「そこにいるのは誰だ!?」
炎が立った事で気が付いたのか、求道者軍の後衛の槍隊がこちらに向かってくる。
「だから言っただろ。火力調整しろって。何の反省もしない奴だな」
「ごめん。でも凄いんだなこのグローブ。でも、こっちに気づいてくれて声を掛ける手間が省けた」
「そうですね。お願いして参戦しましょう!」
ジンは向かってくる槍隊に声を掛ける。
「すいませ〜ん。俺達、援軍に来たんですけどー!」
「追放者だ!ここに残っていたぞ!」
「みんな!追放者が居たぞ!」
本部に向けて叫ぶ槍隊。
「えっ?バンカー?」
数名の求道者に囲まれ槍を向けられるジン・テトラ・ゾフィーの3人。
「えっ?あの…だから僕たち援軍です!味方ですよ!」
「援軍だと?もう騙されんぞ!おい!こいつらを捕らえろ!」
「え〜!!」
ジン・テトラ・ゾフィーの3人は縄で縛られ本部の野営地に連れて行かれた。
「…何でこんな事になっているの?」
「…私たち、捕まり過ぎじゃないですか?」
「…くそっ。全員剣の錆にしてやろうか」
野営地の床に座らされ、数名の槍隊がこちらを睨んでいる。
そこに槍を持った大柄な男が3人の元へやってきた。
「槍隊隊長のポール・ハンプソンだ。なぜ連れてこられたかは分かっているな」
ジンは考えたが答えが出てこない。
「すいません、わかりません」
「追放者の目的は何だ?」
「わかりません」
「他の者はどうしている?」
「他の者…居ません」
「ほう。仲間は売らぬか。助かりたく無いようだな」
「売りたいし、助かりたいんですけど…」
「ならば全てを吐け!」
「だから僕たち援軍なんですよ!」
「援軍のフリをするのはやめろ!」
「してませんよ!」
ジンとハンプソンの押し問答が続いた後、本部の野営地にハッセルが入ってくる。
「ハッセルさん!」
ハンプソンは姿勢を正す。
「ハンプソン、そいつらが残党か?」
「はっ!後衛で炎を出していました。おそらく我々を狙ったものと思われます!」
「違いますよ!」
「うちらを何だと思ってるんだ!」
「そうです!私たち、援軍なんですよ!」
ジン達は必死に訂正した。
「援軍か…」
ハッセルはジンの目を見つめた。
「そうです。僕たちを鬼の討伐に参加させて下さい!」
「…つまり、何も言うつもりは無いと言う事かの?」
「…?いや、無いというか、何というか…一生懸命頑張ります!」
「そうか」
「分かってくれましたか?」
「宮廷の地下牢に送ってやれ」
「えええ〜!!!」




