24話 援軍・追放者
「バンカー…」
データは追放者と会うのは初めてだった。
「噂に聞いていた、宮廷に属さず、免許を持たない上級求道者レベルの集団」
「あいつらに援軍を頼むなんて、サンダース宰相は何を考えているんだ?」
カルファーは言う。
「私はあいつらの事が、大嫌いなんだよ」
宮廷で王都を守る事、そして魔獣を狩って国へ資源を持ち帰る事が求道者の本懐である。だが追放者は天から授かった力を自らの為だけに違法に使い、ひいては宮廷を狙っているとも噂されていた。
「なぜバンカーが宮廷軍へ援軍に入ったのでしょう」
「どうせ金だろう。奴らは道ではなく金を求めている求金者だからな」
「カルファーさんは、彼らに詳しいんですか?」
「バンカーは、リーダーのフランシスコ・コデラリオを中心とした100人程度の少数精鋭グループだ」
「100人?それじゃあ援軍とは呼べませんよ!相手は3万匹から居るんですよ!」
「確かに数に入れるようなレベルではない。集団戦闘に関しては未知数だし、こちらとの統率も測れないだろう。だが、言いたくないが…」
「何ですか?」
「とにかく奴らはべらぼうに強い」
羽を持つ竜に乗ったエリオットが上空から敵を見下ろす。
「おーおー、鬼達がひーふーみー…」
「エリオット、敵の数は?」
クラウゼがエリオットに声を掛ける。
「こっちの右側は…奥が暗くて数えらんねぇっつーの!」
「ったく。一匹ずつ数える奴がいるかよ」
「とにかく明るくしてやるよ!」
エリオットが手綱を引くと、竜が口から炎を吐き出した。
十数匹の鬼を燃焼させるには十分の火力だった。
「竜を操る男!?レアの魔獣使いの求道者か!?」
データの言葉をカルファーは突き放す様に否定する。
「違ぇんだよ。あいつ、ドラゴン・エリオットはな…」
動揺すると見るや否や、クライブが颯爽とピクチェンの集団に入っていく。
「…」
クライブは両手を広げると、腕が長く伸び、鋭利に硬化する。
ザンッ!
その勢いのままクライブはピクチェンの喉元を腕で切り裂いていく。
「肉体硬化!?それと形状変化も!一体何の求道者なんだ?」
クラウゼも敵前に立つ。
「ったく。集団戦は苦手なんだよな」
クラウゼは両手で空気を掴み、圧縮させる。そして、それをまるでドッチボールの様にピクチェンに投げ、帽子で自分の顔を覆う。
ボンッ!
「ギャーー!」
ピクチェンの周辺で爆発が起きる。
「空圧変化?この人達、レアな求道者ばかりじゃないか!一体…」
「やかましいぞデータ」
カルファーは追放者を評価する事が気に入らない様に見えた。
「失礼しました…彼らは追放者のトップ集団ですか?」
「いや、奴らはリーダーのコデラリオ以外に上下関係を持たない。隊を組まず、100人が100人それぞれ自由に戦う集団だ」
「100人それぞれが、あれほどの強さを…なんという求道者集団だ…」
「あいつらは求道者じゃねぇ」
「…どういう事ですか?」
「1つの道を極めんと、求めて行くのが求道者だろう。お前も神様から弓道の道を示された筈だ。私は拳道の道を示された」
「はい。求道者の祠により道を示して頂きました」
「求道者たる者、神様から示された道を突き進む事が当然の条件。それは宮廷求道者の隊長・ハッセルさんが身を持って示してくれた」
「ええ。ハッセル先生の剣道は一本道です。剣のみを追求した強さがあります」
「それが我々求道者の誇りであり、正義だ。だが、追放者は道を自ら外した」
「…それはあってはならない事です」
「勝手な意思で道を歩む者には、切り開ける未来は無い」
「…はい」
「前衛隊!列固めろ!ピクチェンと1体1で対峙するな!」
「はっ!」
カルファーの指示により隊が固まる。炎により視界が開けたおかげで敵の姿や状況が見える様になった。
「追放者達に好き勝手やらせるな!」
「はっ!」
鬼隊の先から銅鑼の鐘が聞こえる。
その鐘に合わせるかの様に、ピクチェン達は鬼軍へ撤退した。
「何だよ。もう終わり?早すぎるっつーの!」
エリオットは竜を地面に着地させる。
「カルファー、久しいな」
クラウゼはカルファーに近づいて握手を求めた。
「触ろうとするんじゃねぇ追放者が」
「…ったく」
その様子を見ているデータ。
「カルファーさんとこの人は、知り合い?」
その頃隊の本部では、ハッセルが前衛の様子を見ている。
「お久しぶりですハッセルさん」
腰に剣を差した男がハッセルに近づいた。
「…コデラリオか」
「あなたと共に戦う事になるとは思いませんでしたよ」
「わしも老いぼれたものだ。求道者以外の人間の手を借りる事になるとは…」
ハッセルはコデラリオを睨んだ。




