22話 援軍を待つ
「幻獣達がやられてんな」
エリオットはクライブに顔を向ける。
「クライブ、戦局はどう見る?」
指で数を数えるクライブ。
「…」
確かに言う通りだ。鬼の数が分からない。だが、グリーンマンは洞窟に戻っているだろうし、鬼はグラッドバックの草原に来るルートが無い。これ以上増えないだろう。
首を横にふるクライブ。
「…」
「何?それ本当か?グリーンマンの集団が?」
頷くクライブ。
「…」
「って事は…ガッドランドがヤバいな」
エリオットとクライブは求道者達の危険を察知した。
グラッドバックの草原では、ハッセルが異変に気が付く。
「鬼が増えているな…」
それにデータが異を唱える。
「鬼が増えている?ルッド教会からグラッドバックの草原に入る通路には、グリーンマンが戻ってきているはず。鬼は事前に来た数だけでは?」
「…鬼め。グリーンマン達を退治して来たか」
「グリーンマン達を?」
「…結界が壊された様だな」
山鬼よりも一回り大きい、手足の長い鬼達がエルジェーベトの居る本部に続々と集まって来ていた。
「ふっはっはっはっ!やっと来たか。ピクチェン達よ。どうやらグリーンマンは処理し終わったか」
吸血鬼と呼ばれる鬼の種族・ピクチェンは隊を成し、数千匹単位でグラッドバックの草原に集まって来ていた。
「ジュルルル」
ピクチェン達の口元と毛皮は乾いていない血で赤く滲んでいた。
「さぁ、弱い者いじめをしようか」
その頃、ガッドランドから求道者陣の後衛に早馬がやってくる。
「宮廷から、ハッセル様に伝言だ!」
「伝言だと?」
「あぁ、何でも早急に伝えて欲しいそうだ」
槍隊は手紙を調べる。
「玉璽は間違いないな。承知した」
手紙を受け取った槍隊はハッセルの元へ駆けた。
鬼の様子を見て動きを止めるハッセル隊。
データはハッセルに語る。
「先生!グリーンマンの住処が鬼によって破壊されたとしたら、鬼の城から絶え間なく援軍がやってくる事になります!これは大変な事です!」
「伝令!宮廷から伝令です!」
槍隊求道者がハッセルに手紙を渡す。
「…サンダース殿か」
「サンダース先生が。異変に気が付いていたのか」
ハッセルは手紙を読む。
「サンダース先生は、手紙に何を?」
「援軍を呼んだらしい。それまで防衛せよ、との事だ」
「援軍?」
データは疑問を抱いた。
ガッドランドの求道者はほとんどが隊に参加している。他の国から?いや、そんな簡単に援軍を頼める様な国は無い。ならば誰を?
「防衛じゃ!陣を敷き直せ!聖道士のヒールは一旦止め!陣全体に防御効果を!」
「はっ!」
ハッセル隊は後衛に下がった。
「カルファーさん!一度後ろに、とのご命令です!」
「あぁ何だって!?ハッセル先生ひよったか!?」
求道者の軍は一度隊列を正した。
「召喚士!一度下がれ!」
召喚士隊がそれぞれ詠唱を唱えた。
鬼と争っていた幻獣は消え、魂となり召喚士の元へ戻っていく。
だが、子どもの幻獣・ユニコーンはすぐに消えていなかった。
「早く!コーン!戻ってこい!」
ジルは詠唱を唱える。
十数匹の鬼に囲まれたユニコーンは、鬼の斧を寸前でかわしながら、寸前の所で魂に戻り、ジルの元へ帰っていく。
「良かった。コーン、無事だった…」
「魔道士隊!煙火!」
それと同時に百人の魔道士が一斉に詠唱を唱える。
求道者の前衛の前に、数百メートル規模の炎が湧き上がった。
大火を起こし、鬼が隊に近づかない様に分断を図った。
それを見たエリオットとクライブ。
「ん?煙火だ。鬼との対峙を解いたぞ?一度陣を敷き直すっつー事か?」
その時、エリオットとクライブの後ろの茂みから葉音が聞こえる。
エリオットは警戒しながら後ろを向く。
「誰だ!?」
「こんな所に居たのか」
2人の前に姿を現したのはアルフレッド・クラウゼだった。
「クラウゼか。相変わらず見ろよ。お前の言った通り、鬼とガッドランドの全面戦争が始まっているんだよ!」
「あぁ。その様だな」
「相変わらず帽子がどデカ過ぎて前が見えねぇんじゃねぇの?」
「それよりエリオット、クライブ。ビジネスだ」
「おっ。そうか。なら仕方ない。いい所だったが、行こうぜクライブ!」
エリオットとクライブは立ち上がる。
ベン・エリオット、追放者。
クライム・クライブ、追放者。
丁度その頃、ガッドランドの閉じられた門が開き、三人の求道者が出てきた。
「馬ぐらい貸してくれよな!」
「あっ、歩くの疲れたら、ヒールしましょうか?」
「いや、とりあえずまだいいや」
「さぁ鬼退治だ!行くぞ!」
「何だかワクワクしてない?テトラ」
ジンとゾフィーとテトラがグラッドバックに向けて走り出した。




