第57話 羊が一匹
あぁ。やっと暖まった感じ。
服を着て暖かいミルクを飲んだ。ヤギも飼っている牧場らしい。あとで見にいってみよう。
それよりも……。
「ねえ、ユイジュさん。清めるってどうやればいいの? 洗うの?」
「それを俺に聞くな! なんて書いてあるんだ」
「清める事が可能になるって書いてある」
「それって魔法系と同じなんじゃないか?」
「同じって?」
「だからそれ自体が使えるわけじゃないって事だ」
「え? 覚えたのに使えないの?」
『他に覚えなかったのか?』
「うん? あ、なんだっけ? ピなんとかリング?? なんか長い名前のスキルも覚えたかな? 連続して幾つか覚えたんだよね」
「連続してって……羨ましい限りだ」
はぁ……とまたもやため息をするユイジュさん。僕の話を聞く度にするの止めてくれないかな。
『もしかして、ピュリファイングではなくて?』
「そ、それだ!」
サザナミが言った言葉に僕は頷いた。
「それってなんだ?」
「えっと、ピュ……」
『ピュリファイングだ。言えないと使えないぞ。これは、一瞬で綺麗にする魔法だな。われはロマドに洗ってもらう方がいいがな』
「え? そうなの? へえ便利な魔法だね」
「……魔法を覚えたのか?」
「うん。綺麗にする魔法だって」
「じゃ、それを試してみよう!」
「わかった。やってみるよ」
まずはマトルドにやってみよう。僕は立ち上がって、マトルドに近づいた。
「で、なんだっけ?」
「お前なぁ……」
『ピュリファイングだ』
『ピュリファイングよ』
「ありがとう」
僕は、マトルドに右手をかざす。
「ピュリファイング」
さぁっと一瞬光を帯びた様に見えたけど、色は変わらない。
「何か発動したようだけど、変わらないな。本当に羊と同じく色がついたのか? うーん。明日、羊にもやって試してみよう。お前は、もう今日は休め」
「うん」
ユイジュさんはそう言うと、たき火を消した。
ミズウミを背に、僕達は村へと戻った。
□
「おい! 起きろ!」
「うーん。チェトもう少し……」
「チェトじゃない! 朝ごはんを食べて羊に試すぞ!」
「じゃ誰? あ、ユイジュさん」
チェトは、僕の腕の中でまだ寝ていた。サザナミも横で一緒にいる。
「お前達、仲良しだな……。聖獣と寝る奴なんてお前ぐらいだぞ」
「うーん」
僕は膝の上にチェトを置いて、手を上げ背中を伸ばす。
朝食は、村の人が用意してくれた。チェト達の分もあった。
ミルクとパン。
『肉を食したい』
『そうね。またこっそりと……』
「ダメだからね。生肉はだめ!!」
「食べさせてやればいいだろうが……」
とユイジュさんが面倒くさそうに言った。
「お腹壊すから」
「壊さないって。お前な……聖獣は動物じゃないんだぞ」
ユイジュさんは、声を小さくしてそう言った。
「動物じゃないの? え? 犬だよね?」
「いや、いいわ。チェト達も何も言わないんだろう」
「別に何も」
『いや、言っているだろうが……』
「うん? お肉はダーメ!」
『なぜ肉の話に戻る!』
『通じないわね……』
『まあいい。今はそれより試す事だろう』
『そうね』
「ねえ、もし成功したら全部するの?」
「当たり前だろう?」
当たり前って100匹以上いるよね? 魔力足りるのかな?
朝食後、羊がいる小屋へ向かった。小屋というか、大部屋? そこから一匹だけ、小さな囲いに連れて来た。
羊は囲いの中を駆けまわっている。
「止まって! 魔法を掛けられないよ」
通じたのかピタッと止まった。
「昨日も思ったけどお前の命令を聞いてないか?」
「そう? 命令しているつもりはないけど? ピュリファイング」
止まった羊に魔法をかけると、昨日と同じく一瞬光を帯びるも見た目は変わらない。
そっと触れてみると、フワフワだ。
「凄いねこれ。洗って乾いている感じになるんだ」
「ダメか……。この魔法ではダメみたいだな。他にはないのか?」
「え? まだ試すの?」
「あのな、いくつもスキル覚えられるのお前だけだぞ? 探し出して連れて来るのも大変なんだ。やれるのならやってほしい」
「……そう言われてもなぁ」
『昨日、連続して覚えた様な事を言っていたが、他に何を覚えた?』
「後は……浄化、肺活量UP」
「浄化!? それじゃないか?」
『浄化だと!! それは光魔法ではないか!』
「え? そうなの?」
「そうなのじゃない! それを試せ!」
『われもそれなら効くと思うぞ』
そうなのって返したのは、チェトになんだけどな。まあ試すだけなら……。
「さっきと同じ方法でやればいいの?」
『そうだ。穢れを落とす事が出来る』
「浄化!」
右手をかざし唱えると、羊が一瞬で真っ白に!!
「うそ!! 何これ」
「何これって……これが本来の姿だ」
本当にチェトの様に真っ白でごわっとしたフワフワの毛だった。一匹だけ違う種類の羊になったよ!




