11 反撃開始
イズミ達が現場に到着して最初に目にしたのがワーウルフに襲われて居るハッシュ達の姿だった。
今迄戦って居た両者が今は協力し合って魔物に対峙して居る姿は奇妙にも見えたが
それが又功を奏して未だ誰一人掛ける事無く魔物と戦えている事に安堵して居ると
そこへ誰よりも早くシフォンさんとレイラさんが互いの顔を見合い微笑みながら飛び込んで行った。
シフォンさんはハッシュに襲い掛かろうとして居たワーウルフに『アイスアロー』で倒すと
そのままその先に居るワーウルフに斬りつけて行った。
本来固く通常の刃物では一太刀で傷付けるのがようやく出来る程度の剛毛で覆われた身体を
いともたやすく斬りつけその身体を真っ二つに切り裂いた。
そして次から次へと襲い掛かるワーウルフをレイラさんと共にまるで踊って居るかの様に
連携の取れた動きで倒す姿に思わず見惚れてしまった私達は
ただ呆然とその場で見守る事しか出来ずに居た。
そして気が付くとものの数分で10頭は居たワーウルフを全て倒した2人が此方を見た時
ハッシュ達と戦って居たと思われる8人が突然シフォンさんに向かい片膝を着き頭を下げた。
何が起きたかと私達が見て居る目の前で彼等は自分達がオアニニス王国
国王リリス・ケマフ・ビロド王の命によりシフォンさんの力になる為に来たと云う事を明かした。
すると互いに相手が敵側の者と思い込み戦って居た?
もしかしたら仲間同しで共倒れと言う事も十分有りえたその場面に背中に冷たい物が流れて行った。
『あっぶな~。互に秘密裏に行動しなければならない身だとしても
連絡が付かないとこんな危ない場面もあるんだ』
しかし軽傷者は居たが動けない程の傷を負った物が誰一人居ない事は幸いだった。
そして互いの正体が判ると手を握りシフォンさんの力になる事をうと
丁度その時繁華街の方から幾多の叫び声が聞こえて来るとほぼ同時に火の手が上がるのが見えた。
シフォンさんはその方向を確認し過ぐに此方へ向き直ると
新しく仲間に加わったオアニニス王国のボイスに声を掛けた。
「ボイス早速頼むわ。おそらくまだ多くの魔物が暴れている可能性が有る。
ここに居る全員で王都を守るわよ。」
その言葉に全員が頷き一斉にその火の元の方へ走り出した。
火は数件の店から出ておりその他民家らしき所からも煙が出始めて居る所が
1~2軒見える。
その下では魔物が本能のままに暴れまわって居るのが見えた。
「オークにワーウルフ?頭数はそんなに多くない様だけれど街中で暴れまわれると厄介ね。」
「でも、それだけ暴れがいが有るってもんだ。」
私の言葉に嬉しそうに答えるレアが今にもそれらの魔物に飛びつきそうな勢いでそれらの魔物を見つめて居た。
全員が現場に到着するのをシフォンさんが確認すると直ぐにシフォンさんとレイラさん
そして私とレアが組んで魔物討伐へ向かう事になりシルクは
フェスタ達の安全を考え彼女達と共に王都守護兵に協力して
人々の救助と安全な場所への誘導に行かせた何しろ此方には
魔族をも簡単倒す悪魔のレアが居るので
今回私はその補助位で魔物を片付けられる筈。
そうして私達はシフォンさんと別れレアが最初に目を付けた
魔物達が暴れている食堂らしき店近くへ駆け寄ると
その店の前で転んで恐怖で動けなくなって居る少女を襲い掛かろうとして居るオークに目を付け
レアが飛び上がり全体重を掛けた剣をその背に突き立てた。
ワーウルフに比べ柔らかな毛のオークは厚い脂肪に守られては居たが
それらをも突き抜け腹部まで達したその剣に一撃で絶命した。
少女に倒れ掛かろうとするオークを突き立てた剣を後ろへ引き摺るように引き抜き
後ろへ倒すとレアがその少女の方へ歩み寄って行く。
その少女は家族と食事に来てそこで襲われ逸れたのか
周りには家族らしき人影は無かった。
しかも裕福な家なのか庶民では着る事の出来ない様な綺麗なドレスに身を包み
脅えた目で左の足首を擦りながらレアを見つめた。
「もう大丈夫だ。怪我は無いか?」
「それが挫いてしまった様で・・」
何故かその少女の頬が赤くなったような気がした。
この様な場所でこの場面、
どう見てもレアは白馬に乗った悪魔・・訂正・・王子に見えるかも知れない?
兎に角レアはその少女を抱き抱えると直ぐに
「イズミすまん彼女を安全な場所まで連れて行くからその間頼む。」
その言葉だけを残し安全な場所まで走り出した。
「へっ・・・」
結局残った私は3頭のオークに囲まれ・・・。
「レッ・・レッ・レアのバカーーーー!」
世界の中心で思いっ切り叫び
たった一人で3頭ものオークの相手をする羽目になった原因のレアが走り去る後ろ姿を見ながら
飛びう掛かって来るオークに向けて風の刃を放ち応戦。
勿論周りにはオークばかりではなく逃げ惑う人達やたった一人残った私に協力しようと
オークに斬り掛かる冒険者らしい人達も居る為無暗に風の刃を放つ訳にもいかず
確実に1頭づつ倒して行く。
そして3頭目のオークを倒した時走り寄るオークに気づき剣を向けるとその後ろには
そのオークを狙ってか1頭のワーウルフ追い掛けて来ていた。
「ウッウソ!」
向かって来るオークを躱すとその後ろから追い掛けて来ていたワーウルフが標的を
オークから私に変え襲い掛かる。
「レアのバカッたれ!早く戻って来い!」
「何で私一人だけ残すのよ!私だってか弱い女性なのに~」
「うわ~!唾液が飛んで来た!
レアにこの服洗わせてやる!・・あっ!・・それは止めて置こう・・・(恥)
あ~~もうゆるせない!帰って来たら1発殴ってやるんだから~~!」
散々レアの悪口を喚きながら何度も風の刃を放ちそして吹き飛ばして間合いを取っては
勢いを付けて斬り掛かる事数回。
そして動きの鈍った所で一旦上空に飛びそのまま全体重を掛けて剣を突き刺し仕留めると
肩で息をする私にレアが爽やかな笑顔を見せながら走り寄って来た。
「待たせた。残りのオークは?」
平然と云うレアに私は無言で一発その頭を思いっきり殴るがキョトンとしたレアに比べ私は
自分の拳を擦りながら
「イッ痛い!この石頭!」
頭を擦りながら呆然と私を見つめるレア
「ん?どうした?」
「このバカ!」
当然ながら先程ワーウルフに追われて居たオークや近くに居た魔物達を全てレアに退治させ
私は逃げ惑う人達の誘導や火災の消火の手伝に専念した。
一通り魔物を倒しシフォンさん達と合流すると一人の黒髪の男性が仲間に加わって居た。
名はレイ、どうやらシフォンさんの命の恩人らしくこの騒ぎの中
シフォンさんを心配して駆けつけて来てくれたとの事だった。
剣の腕は一流らしくあの脂ぎったオークを一刀両断にしたらしいが
何故かそのレイがシフォンさんの目の前で気絶して居る事が気になる。
シフォンさんにそれを聞いてもただから笑いするだけで何も教えてくれないし
レイラさんは彼を必死に起こそうと襟首を掴んで揺すって居るが
逆にあれはレイに暴力を振るって居る様に見えるのは私だけなのだろうか?
その翌日シフォンさんが国王に呼ばれ出て行き
私はミラエス達と彼女の作戦の準備に追われその日は
あっと言うまに過ぎ遂に
その2日後遂に私達の反撃の日に決まった。
その決行の日の朝全員の準備が出来たとウキウキとシフォンさんを呼びに行ったレイが何故か
戻って来ると朦朧として居る事が気に掛かりシフォンさん達に目を向けると
レイラさんがスッと目を背けた。
『原因はレイラさん?』
そう思うと何となく理解出来た気がした。
『レイラさんはシフォンさん一途だと聞いたからな~。
多分レイが呼びに行った時何か邪魔でもしたかな?』
思わず色んな想像が頭を過るがそこは出来る限りスルーする事にして
今日の作戦に集中する事にしたがつい余計な想像が頭に浮かぶ。
『うわ~、女同士で一体何してた?』
『まさかあんな事やそんな事とか・・・』
すいません下衆な考えだと判って居ても男の記憶があるシフォンさんだからこそ思わず・・・と。
そしてその思いとは別に時は進み遂に作戦実行の時が来た。
正午の鐘の音とほぼ同時に私達は敵側の拠点の一つに飛び込んだ。




