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男の娘って何ですか?  作者: とらいぜん
4章 ミリニシア
74/84

10 謎の一団

オルイドはミラエスに救い出され

その蔓の中でその蔓から放出される精霊の力で治療を受けて居た。

今迄焼ける様な背中の痛みは徐々に引き心地よい温もりへと変わって行くが

今、目の前で斬られ自分の腕の中に力無く倒れたタルトの事がオルイドの頭から離れないで居た。

誰一人守れなかった所か自分自身も傷つきミラエスに助け出された。

自分自身の油断、力不足、思い上がりが今回の悲惨な結果を生む原因になってしまった事に涙した。

オルイドはその様な事を考えながらも傷が癒えるに従いその想いとは逆に心地よい暖かさに包まれ

次第に意識を手放していった。


一方先にシトラルの元へ向かったイズミは

その視線の先に広がる荒れ果てた部屋の様子に驚き呆然とシトラルの隣で立ちすくんで居ると

そのシトラルから少女の悪魔が来て勇者を襲った事を聞かされた。

そしてもう一つ更にイズミを驚かせる事実を聞かされる事になった。


『オルイド達が襲われた』


彼等が襲って来る事は予想がついて居たがこんなにも早く来るとは思って居なかったイズミ。

敵はシトラルが襲われれば必ずイズミがそれを助けに行く事を計算に入れ

ワザと勇者を仕留める為に派手な魔法を使いイズミをオルイドの元へ誘き寄せる事に成功した。

そしてイズミはまんまとその作戦に嵌ってしまいその隙を突かれた。


間も無くしてミラエスに救い出されたオルイド達が蔓に包まれたまま

連れて来られその蔓を解くとその中から気を失ったオルイドが転げる様にベッドに置かれた。

傷は既に治癒して居たがその服やズボンには幾つもの切り刻まれた跡が残り

襲われた時の凄惨さが思い浮かばれた。


「ミラエス他の人達は?」


「後の人は全員急所を突かれて居て・・・」


その言葉の後に残りの者達がベッドに置かれるとその傷も露わになる。


「酷い・・」


タルトは背から腹部に掛けて一突きされ

抵抗したと思われるセティア達は何度も斬りつけられた跡が有った。

そしてシェルシアは肩から一太刀、しかも確認の為と思われる切り口が数か所見られた。


「おそらく術を解く事が出来るシェルシアを狙って来たのだろう。

と言う事は奴らは人を操る事を前提に動いて来る事への証明になり

ミラエスの予想が当たった事になるが・・・」


「思いの外彼らの行動が早かったです。

でも一番危険な役をして貰ったオルイドが無事で」


「ミラエス!」


ミラエスの言葉をシトラルが止め首を横に振るとミラエスは慌てた様に

その言葉を止めオルイド以外のセティア達の身体を又蔓に中へ包み込み地中へ埋めた。


しかしその日はそれだけに終わらず午後からは

魔王国からの応援としてヤグスとリオガルドそしてドリアの3人が合流

その他今迄静観を決めて居ると思われて居たナリエスから7人の間諜が加わった。

彼等はシトラルにも一人しか名を明かさず他の者は全くどの様な人物かさえ分からない者達

どうやら帝国程大きくは無いが暗部の様な組織らしい事が窺い知れた。


そしてその翌日の夜イズミが部屋でミラエスと話をして居ると

ズゥウン、ズゥウンと施設内に爆裂系魔法が放たれた様な音が響き渡った。


「エッ!そんな!イズミ!悪魔が来てる!」


ミラエスがそこまで云うと突然走り出しシトラルの居る部屋の中へ飛び込んで行った。


「悪魔が来て居ます。この頭上!」


叫ぶようなその声はまだその部屋の外に居たイズミの耳にも入って来た。


「私が行きます!シルクは皆を守って。」


シルクにそう伝えて飛び出そうとすると突然誰かに肩を掴まれ後ろを振り向くと

そこにはやっと自分の出番が回って来た悪戯っ子の様な笑顔を見せる悪魔のレアがそこに居た。


「待てイズミ。俺も行く!俺とフェスタをバカにしたあの女を懲らしめて来る。」


そう云って居るがおそらく暴れられる嬉しさがそういう行動に走らせたに違いない。

しかしそれを聞いて居た悪魔が来た事を伝えたミラエスが首を横に振った。


「レア、イズミこれは彼女じゃない!私の知らない悪魔!

今上に居るのは大人の悪魔で少女なんかじゃない!

しかも怒りを魔法に乗せて来てる。

あの少女の悪魔と同じ様に考えない方が良いわ。」


「つまり敵側が違う悪魔を召喚したと言う事か?とんでもない事になって来た。」


「そんな事は関係ねえ!ただぶっ潰すのみ!イズミ行くぞ!」


シトラルの悩みを他所にイズミと共にレアが窓から飛び出そうとするのをシトラルが止めた。


「まて、まだ暫くは結界は持つそれまでに少しでも相手の事を知るのが先だ。」


シトラルのその言葉の間にも結界を攻撃する音が響き渡り

相手が今までと全く違う方法で攻めて来ていることが判る。


「ああ~、言いたい事は判るがそんな悠長な事を言って居る暇はなさそうだぜ。」


レアのその視線の先を見ると結界が張られている空間にひびが走って居るのが見えた。


「そんな・・・」


驚いて居るシトラルにレアがイズミの肩に手をやり窓を開けた。


「兎に角俺とイズミが出る一時結界を解いてくれ。」


シトラルは亀裂の入った結界を見つめるとレアに視線を向けた。

そしてその合図と共に一瞬結界が解かれ窓から外へ飛び出しミラエスの云って居た上空へ飛んで行くと

そこには悪魔特有の赤い瞳に黒髪は腰まで伸ばし私達を睨み付ける女性の悪魔がそこに居た。

彼女は私達がシトラル達が居る施設とその悪魔の間に居る事に腹立たしく思ったのか

荒々しい声で怒鳴りつけた。


「貴方達邪魔!そこを退きなさい!」


その声はイズミでさえ一瞬ビクッと震える様な怖ろしささえ感じる物。

『真面にやって勝てる相手じゃない。』

イズミは身体中の鳥肌が立つのを感じた。

しかし隣に居るレアは逆に嬉しそうに更に相手を挑発する様な言葉を発した。


「何処のババアだか知らねえがこんなトコロで爆裂系の魔法を使う

頭イカレタ奴を放って置けなくてな。

それにそのお陰で目が冷めちまったじゃねえか。」


「目が冷めた?それは悪かったわね。じゃあ永遠に眠らせてあげるわ。」


その悪魔はその表情を変える事無くレアに向けて今までと同じ爆裂系の魔法を放って来た。

それを慌てて二重の防御魔法を展開して何とか回避しながら直ぐに体勢を整えるとさらにその悪魔に挑発

し始めた。

『こいつバカだ・・・』

思わず小さな声で呟くイズミを他所に言いたい放題ぶつけるレア。


「ババア!俺が避ければ周りの民家に被害が及ぶ事を計算づくで攻撃しやがって。許さねえ。」


しかし思いの外相手の悪魔は逆に少し落ち着いたのか先程の怒りが少し柔らいだ感じを受けた。


「許さないならどうするつもり?

それにあの男が自分の居る場所だけ結界を張ってると思ってる訳?バッカじゃない。

あれはもっと用意周到な男よ。周りにも結界を貼ってるに決まってるじゃない。」


そう言われレア共々下の民家の屋根を見ると確かに結界らしき輝きがその屋根に張られている事に気付いた。


「ババア、お前シトラルを知ってるのか?」


「…」


その言葉に答える事なくイズミとレアに攻撃魔法を放ったその悪魔に

それを避けながら攻撃魔法と風の刃で反撃しようとした隙を突き

その悪魔はシトラル達が居る施設に向かって攻撃魔法を放ちながら飛び込んで行った。

『素早い!』

イズミがそう思うとほぼ同時に彼女は亀裂が入って居たその場所が魔法攻撃に耐えきれず

ガラスが割れる様に砕け散る結界の亀裂の中へ飛び込んで行った。


「しまった!」



急いでその悪魔の後を付け飛び込んで行くと彼女はシトラルの前に怒りの表情を露わにして立って居た。


「「シトラルが殺される!」」


流石にその時ばかりはレアと声がハモった。

レアとイズミが急いで二人の間に入ろうとした時シトラルが片手をイズミの前に差し出し

それを阻んだ。

『何故?』

イズミが一瞬立ち止まりシトラルの顔を見るとその緊張感が伝わって来るほど彼の目はその悪魔を凝視していた。


「トカゲ!私のシフォンをどうした!お前が守る筈だっただろうが!」


「レイラどうやってここへ来た。」


「そんな事はどうでも良い!シフォンだ!私のシフォンは何処に居る!」


その2人のやり取りを聞いて居たイズミはシフォンの言葉を思い出していた。

あの冒険者学校で模擬戦の時の一言。


「私の親友」


そう、確かシフォンさんはその親友の名を『レイラ』と云って居た。

そのレイラが今、目の前に居る。


そのシフォンさんの親友で有る筈の彼女は必死にシトラルに訴えていた。

シトラルがシフォンさんを守れなかった事。

しかしそれは自分へ向けての言葉にも聞こえた。

多分彼女は魔界に居た為

シフォンさんの力になれなかった自分に対し

シフォンさんを守れなかった自分に対し

そして今シフォンさんの居場所が判らない自分への苛立ちに

その怒りが収まらないのではないかと思えてならなかった。


そのレイラがシフォンさんから来たと言うレターリーフをシトラルから受け取ると

今迄の怒りが嘘の様にその場に崩れ落ちた。


「シフォンの字だ・・生きてる・・良かった・・」


私自身悪魔の事は詳しく無いがレアがそのレイラに不思議そうな顔を向けている事に気付いた。

私が問うとレアが話してくれた。


「悪魔は契約する為に召喚されるのが本来の姿なんだがその他にもこちら側に来る方法がある。

それは自分の力を使い此方に来る方法なんだがこれには幾つかのマイナス部分が生じる。

一つはこちらへ来る為自分の力の殆どを使い果たす為こちらで本来の自分の力を使えない事。

しかしこいつはあれだけの魔法を使ていたからきっと違う方法で此方に来たに違いない。

そしてもう一つ自分から此方へ来た悪魔の誰もが逃れられない事

それはその場に縛られると言う事だ。

つまりこの女はこの王都から外へは出られない。

しかも話を聞くと此方に居られなくなって間もないんだよな。

すると此方に居られる期間が限定される。」


そこまで話すとレアはレイラに向き直り顔を覗き込んだ。


「どうやって来た?何時まで居られる?」


「は~、全部お見通しか。・・話すわよ。」


レイラは近くの椅子に座ると全員の視線が自分に集まって居るのを見て

大分気持ちが落ち着いたのか静かに話てくれた。

彼女の話によると初めて此方へ召喚した代償として召喚者のメイリから再生の力を貰ったそうだ

その力を使い此方へ来たのだと言って居た。

しかしそれの本来の使い方ではないのでそれは2度と使えないという。

そしてこちら側に居られるのはおそらく10日程

しかし大きな悪魔の力を使えばその日数は減り

今後の事を考えるとおそらく7日位ではないかと言う事だった。


つまりレイラさんはこの王都から出られずしかも7日間しか居られないにも関わらずシフォンの為に

此方へ来たと云う事らしい。


今迄噂でしか聞いて居なかったシフォンさんの親友レイラさんが今目の前に居る。

その

レイラさんを部屋へ案内した時少し話をした時彼女の意外な一面を見てしまった。

始めあんなにも怒りモード全開だったレイラさんも大分落ち着き最後に発した言葉。


「シフォンは私の大事な人、掛け替えの無い人」


「シフォンに会いたい!」


その言葉に今のレイラさんの気持ち全てが押し込められている様に感じた。


『掛け外の無い人』か・・・

彼女にとってシフォンさんはその全てなのかも知れない。

掛け替えの無い人・・

レイラさんには・・シフォンさん・・

私には・・「ミナト」

思わずその名が口から出てしまった。


翌日事は大きく動き出した

その日の朝早くから何度もレイラさんは探索魔法を使ってシフォンさんの行方を調べている。

そしてこの日何度目の探索魔法を行使した時突然レイラさんが立ち上がったかと思うと

珍しくシトラルに嬉しそうな笑顔を向けた。


「居た!シフォン!

トカゲ!結界を解け!直ぐ出る!」


シトラルはその言葉に答え直ぐに結界を解くとそのままレイラさんは飛び去ってしまった。

そして数分後その傍らにはレイラさんに手を繋がれたシフォンさんが飛んで戻って来るのが窓越しに見え

私達も外へ飛び出すと丁度施設の庭に降り立つ所だった。


シフォンさんは今迄王都に居た竜人に助けられたと云って居たが

詳しい事は中へ入ってからと部屋へ案内しようと私がシフォンさんの手を取ると

「パチン!」

とっ突然その手を叩かれた。


「貴女はシフォンの親友と云ってたけれどそれは私が先、いいえそれ以上の仲!だから私が案内する。」


その時のレイラさんは昨夜私にシフォンさんの事を話してくれた時とはまるで別人の様に

私を睨み付けた。

彼女の中では何よりもシフォンさんの事が最優先されるので有ろう事が直ぐに判った。

『まるで恋焦がれた恋人みたい』

何故かそれがしっくり来る程シフォンさんの手を繋ぎ施設の中へ入って行く彼女の後ろ姿が

ウキウキと嬉しくて堪らないそんな風に感じられた。


「あそこまで一途に思えるなんて凄いな」


「ん?何がだ?」


「ううん、何でもない」


思わず呟いたその一言に

後から飛び出して来たレアが訪ねて来たが

おそらく彼には一生判らないのかも知れないと苦笑いで返した。


しかしその夜、私達の元へナリエスの間者の1人から施設近くで8名の不審者と

対峙してるとの報告が有り直ぐにシフォンさんとレイラさんレアと契約者のフェスタ達と現場へ向うとそこには彼等が共闘して居る姿が目に入った。


「え?どう言う事?」


私は自分の目を疑った。

そこには王都内に居る筈が無い10頭近いワーウルフの群れが彼等を襲って居たのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


それより少し後王都の外で翌日の朝の開門を待つ商団等が野営して居る広場にも

多くの魔物が襲い掛かって来ていた。


「見て!王都が燃えてる!」


その女性が指さすその先には燃え盛る炎が誰の目にも移った。

しかし直ぐにその周りに居た者達は自分達の置かれた状況を見てその対処に当たった。

護衛に雇われた冒険者は雇い主と荷を守る為魔物に立ち向かい

力無き者は彼らの指示に従い隠れたり逃げ惑っていた。


その中魔物を薙ぎ払い彼等を助けながら雑談をして居る賑やかな謎の一団が居た。


「セティ『シーーーー!』魔物に襲われてる人達を助けたいから出て来たけど

本当に大丈夫だったのかな?

一応私達隠れて居なくちゃならなかったんじゃない

それにあんなに王都が燃えてるのに大丈夫なのかな?」


相手の名を言おうとしたその女性を他の者達が

自分の口に人差し指を立てその名を言わせない様にしていた。


「だってこんなに多くの人が襲われてるんだもの助けない訳には行かないでしょ。

それにしても向こうも結構派手にやられてるわね。

向こうにはハクギンの『シーーーーー!』様やイ『シーーーー!』が居るから戦力的には問題無い筈だけれど人を助けながらだと厳しいでしょうね。」


「でもこの魔物一体何処から来たのよ。倒しても倒しても後から出て来てキリが無い。

幾らシェ『シーーー!』やユウ『シーーーー!』が頑張っても全員助け出すには時間掛かるわよ。」


「一応怪我人はタル『シーーー!』貴女が頑張ってくれてるけど余りに多いと身体が持たないもんね。」


「カ『シーーー!』口ばかり動かさないで貴女も少しは手伝いなさいよ。

その手は何のためにあるのよ。」


「セ『シーーーー!』だって私達の所へ来る魔物はあっという間に全部ユウ『シーーー!』が倒しちゃうし

飛んで来るものは全部シェ『シーーー!』が弾き返すか取り込んじゃうんだもん、やる事無いわよ。」


「ねえねえ、所でハクギンの『シーーー!』様の所にレ『シーーー!』が来たんだって?

私会って見たい!」


「私はそんな事よりカッコイイ男の人との出会いを求めたいわ。

ほら見てよ折角のドレスが汚れちゃうじゃない。

あっ!

見て見て!あそこに騎士が来てる!あの人ちょっとカッコ良くない?

私だってユウ『シーーー!』に負けない位幸せな結婚したいもの。ねえあの人の所へ行こう♪」


「お前ら!いい加減にしろ~~~!『シーーーー!』」


「「「「あっ要らなかった。」」」」


そこには魔物を蹴散らす一人の男とその後ろには無駄口を叩く4人の女性の無敵の謎の一団が居た。・・・



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