7 王都シャシス
私達はエルフのタルトとオルイドを先頭に浄化の森を突っ切ってカラナス王国の王都シャシスへ向かって居る。
元々この森は魔物も少なくそんな脅威の有る魔物が少ない事で有名な森だけあってここまで
比較的スムーズに進む事が出来た。
しかし全く危険な魔物や動物が居ない分けでも無くシルクに前方を探索してもらいながら進んで居る。
そして少しでも時間のロスを無くす為私が全員の荷物をアイテムボックスを全て入れ
そしてモーゼの海割の如く風の力を利用して私達が行く先々の草や木の枝を左右に分けて道を造り
更に追い風と下から吹き上げる風を
作り身体を軽くして通常より早く楽に走れる様にしている為
思っていたよりも早くこの森を抜け出せそうだ。
そして一番の問題児シェルシアは
「汚れるのはれるのは嫌。疲れるのは嫌。」
等と愚図りながらも置いて行かれるのは嫌らしく
渋々私達の後を付いて来ている。
そして私達が浄化の森へ入って4日目もう少しでこの森を抜けようとした時
シルクから私達と同じ様に浄化の森の中を抜けようと走って居る人達を見つけた。
「イズミ私達の先に7人の男性が森を抜けようとしてるわ。」
「ん?カラナスの冒険者じゃ無いの?」
「そうかも知れないけれど、何だかとても急いで居る様にも見えるのよね。」
「何かに追われて居るって訳じゃ無いわよね。」
「彼等の周りには逃げる様な対象は居ないから違うと思うけからその行き先に問題がありそうね」
「私達も急いで居るし余り関わりたく無いわね。」
その事を前に居るタルトに伝えると彼女も同意見だと
少し速度を落とし彼らをやり過ごすことにした。
私達が森の出口まで来るとその男達が走り去って行くのが見えた。
私達は森に沿って少し走り彼らが見えなくなるのを確認してからシャシスへ向けて走り出した。
「タルトやっぱり冒険者だったね。でも何であんなに急いでたんだろう?」
「あれ本当に冒険者かな?」
「どう言う事?」
「ううん何となくそう思っただけ。」
タルトは走りながらそう言うと更に速度を上げた。
「うわ~速い!速い!こんな速度で走り続けたら私死んじゃうから、
私が死んだら世界の大損失よ。
多くの男性が私の美貌を見られなくなるのよ!
ねえ聞いてる?
ねえ、イズミ〜!
もうイヤ~~~~~~!」
「うん通常運転問題無し!」
後ろからシエルシアらしき声が聞こえたが
全く問題無さそうなのでそのまま走り続ける事にした。
その夜の野営では散々文句を言って居たシェルシアだったけれども
食事を人一倍食べ食後に甘い物を少し食べたら上機嫌になった。
こんな所は扱い易くて助かる。
その夜はオルイドが最初の見張りに付き私達はテントで寝に入って間の無くの事突然
オルイドがテントの外から静かに声を掛けて来居た。
「起きろ、誰かが近づいて来る。」
まだ完全に寝入って居なかった私達は静かにテントの外へ出て
オルイドの指さす方向を見ると確かに薄っすらと人影の様な物が見えた。
タルトもその影を確認するとそっとオルイドに近づき耳元に口を近付けた。
「オルイド何人位居そう?」
「分からんしかし少なくても5人以上は居そうだな。」
2人の話を聞き私はシルクを呼び出した。
「シルク。何人居るか調べて」
「ちょっと待ってて」
シルクがその場でまるで暗闇の中でもすべて見えるかの様に
回りを見渡す仕草をすると一瞬何か考える様な仕草をして私にその人数を伝えて来た。
「イズミ、人数は18人だけれどその中には魔族が6人程含まれて居るわ。」
「「「「魔族!」」」」
「それじゃ残りの12人は人族で良いのね」
「そうなんだけど、この感じ・・イズミこの人達は操られて居るかも知れないわ。」
『操られた人族が12人に魔族が6人紛れ込んで居る。これは・・・』
それを聞いてシェルシアの方を見るとシャルシアは腰に手を当てて嬉しそうにして居た。
「いよいよ私の出番ね。」
そう言って前へ出ようとするシェルシアをシルクが片手で止めた。
「囲まれた。魔族は人族の間にバラバラに紛れ込んで居るから気を付けて。」
その言葉に全員
無言で頷くと全員が背を合わせて周りを見つめるとオルイド、セティア、カリナが剣を抜き
タルトが詠唱を始めた。
「行け!」
暗闇から低い声が聞こえると同時に潜んでた彼等が私達に向かって走り出した。
「シェルシア!」
私が叫ぶとシェルシアは両手を広げ私にも聞き取れない程の小さな声で何かを呟くと
バタバタと12人の男達がその場で倒れた。
それを確認したセティアが叫ぶ!
「残りは全員魔族!油断せず全力で倒すわよ!」
その声を合図に全員が攻撃に移った。
私は風の刃を全方位に放ち
「アイスピア!」
タルトは魔法攻撃で相手を迎えそれを確認するとオルイド達は
剣を片手に彼等に突っ込んで行った。
「イズミ、タルトを頼む。」
「了解。」
「タルト他の魔族をオルイド達に近づけない様に」
「判った。」
私とタルトが他の4人の魔族に遠隔攻撃を加え私達の防御にシェルシアが私達の直ぐ後ろで何時でも
防御魔法を張れるようにして居た。
その時私達が攻撃して居た魔族の一人から攻撃魔法が放たれた。
「ファイアーボム」
直ぐにシェルシアが防御魔法を展開すると私達の目の前に黒い壁が現れそれらを飲み込んだが
残りの3人の魔族がその魔法とほぼ同時に斬り込んで来ていた。
シェルシアは動じる事無くその魔族が私達に斬りかかろうとした瞬間防御魔法をさらに
私達の前方全てに広げると魔族の剣はその黒い壁に当たるとそのまま吸い込まれ消えて行った。
「「「何だこれは!」」」
彼等は魔法攻撃を放ちながら後ずさりして行くがその全ての魔法は
その黒い壁に音も無く吸い込まれて行く。
「ふふ、どう?凄いでしょう。これが最強の防御魔法よ。」
「シェルシア判ったからほら前を見て!」
誰かが放った数本のアイスアローが弧を描いてシェルシアに向かって落ちて来る所だった。
慌ててシェルシアがその前に防御魔法を展開させ
到達直前でアイスアローを吸い込ませて難を逃れたが私は冷や汗が止まらなかった。
「シェルシア油断しないで!私の寿命縮まるじゃない。」
「だっ大丈夫・・問題ない・・わ・よ・・」
そう言って笑っては居るが彼女も冷や汗をかいたに違いなかった。
そして更にオルイドが1人魔族を倒し私とタルト合わせて2人セティア達も
1人の魔族を追い込み止めを刺そうとした時突然セティアの悲鳴が上がった!
「ウワッ!」
「「「「セティア!」」」」
見るとセティアがわき腹を片手で抑え蹲っていた。
その脇には剣を片手に持った今まで倒れて居た筈の人族の男が立って居る。
「えっ!シェルシアが術を解いたんじゃ?」
「私解いたわよ。・・あっ!あの男元々術に掛かって居ない。」
「それじゃまさか!」
そう言って一歩下がろうとした時シェルシアの動きが一瞬止り急に転がり始めた。
「うっわっ!いっ痛い痛い!しっ死んじゃう!死んじゃう!良い男に出会う前に死ぬのは嫌だ!」
振り返るとそこには倒れていたもう一人の人族の男が上半身を起こし下から剣を突きたてシェルシアに斬りつけていたがしかしその男自身もシェルシアの騒ぎ様に驚いて居る様だった。
見るとその剣にはシェルシアの血は付いて居ない
シェルシアの方は大騒ぎで斬られた服から見える背中にも傷一つ見えなかった。
「うん、あれだけ暴れられれば大丈夫かな?」
直ぐにその男を切倒したタルトが傷の手当てに向かって行ったが
自重が掛からない剣で斬りつけられたせいか
シェルシアの服だけが切らただけなのに彼女自身斬られたと勘違いして居たらしく
タルトが側でため息をついて居た。
問題はセティア、そちらへは私が走り傷口に唇を当てると間も無く傷口は塞がり
痛みも引いて行ったが流れた血液が再生される訳ではない為
セティアが自分で立ち上がる事が難しい様に見えた。
「イズミ助かったわ、有難う。」
「どう致しまして、それより・・・今は動かない方が良いかも。」
直ぐにシルクを呼びセティアを守らせてると
剣を交らわせているカリナと相手の魔族の男の声が聞こえて来た。
「イズミ~、ちょっとこっち!こっち!ちょっと何か大事な事忘れてませんか?って!うわっわっ!危なっ!」
「何余裕を見せてよそ見をしてる。ほら、気を付けろ、もう後が無いぞ。」
「余裕なんて無いって!イズミ~~!ヘル~プ!」
「ゴメン!」
カリナからの救援要請が出て居る事に気付き急いでカリナの応援の為走り出すと
何処からともなく先程シェルシアを狙ったと同じアイスアローが私を目掛けて飛んで来た。
その前に風の防壁を発生させると同時に飛んで来た方向へ風の刃を放った。
するとその先から何かが倒れる音がしたのを確認するとそのままカリナの相手の魔族に突っ込んで行た。
キン!
私の最初の一撃は剣で防がれたがその隙にカリナが懐に潜り込みその魔族に会心の一撃を
その腹部に放ちその魔族は沈んだ。
「良し!まず一人」
カリナは力こぶを作り頷いて居たがまだ魔族達は2人残ている。
そして操られて居た人に混じって私達に剣を向けて来る人が後何人居るかそれを考えると
倒れている人全てに気を付けなければならなくなる。
そう思い静かになったシェルシアの方を見ると
顔真っ赤にしてパンパンと服を叩いて汚れを落としている姿が見えた。
するとパン!
っと自分の顔を両手で叩くと私達の方を見て。
「イズミ行くわよ!」
「「「「一体何を!」」」」
シェルシアが両手を広げると今迄斬り掛かって来ていた魔族の動きが止まった。
そして私達も動けなくなった・・・。
「ウッなっ何で私達にも幻術掛けるのよ・・ウッ、判ってても凄い重圧が掛かって来て動けない・・」
「ごめ~~ん、だって入り乱れてるから分けられなかったのよ。でも魔族の動き弱まったでしょ。」
「わっ私達も・・動けない・・じゃない・・・」
確かにシェルシアの幻術に掛かり魔族の動きは鈍り襲って来た人族の男達はその場で蹲り・・・
私達も動けずその場で蹲り・・・
「ゴメン今解く・・・」
意気消沈したシェルシアが私達だけ幻術を解くと直ぐ目の前までぎこちない動きながら
2人の魔族が私達に斬り掛かって来るのが見えた。
「くっこっこんな事で負ける物か!・・」
私達は一歩も動けなかったのにこの魔族は何故こんなにも動ける?
しかし先程までの動きはそこには無くその動きは鈍い
オルイドとカリナが最後の2人を仕留めるとようやく
自分達以外に動く者が何も無くなった。
その日はテントをそのままアイテムボックスへしまい
野営地を移してそこで一晩を過ごした。
それ以降襲われる事も無くシャシスへ着いたのは森を抜けてから2日後だった。
王都シャシスへ入ると直ぐにシトラルが滞在して居るという宿を直ぐ見つかり
シトラルと会う事が出来たがその顔には疲れが垣間見えた。
「皆良く来てくれた部屋はこっちだ」
「シトラル、何だか疲れてるみたいだけど大丈夫?」
「ああ問題ない、大丈夫だ。」
そうは行って居たけれどとても大丈夫そうには見えない。
やはりシフォンさんの事が相当効いて居るんじゃ無いかと思えてならなかったが
シトラルに案内された部屋の前まで行くと既に誰か来て居るのか人の気配を感じ
彼に言われるがまま部屋へ入るとそこには椅子に座ったままの帝国の勇者が私達の目に入り
それだけでは無い事がその時初めて判った。
「勇者様!その傷は!・・・」




