8 シェルシアの力?
その部屋に居たのはシトラルの他帝国の勇者と以前イズミと戦った事の有る悪魔のレアそして
その契約者のフェスタだった。
その中でも勇者は辛そうに椅子に座り腕の傷の治療をして居る最中の様だった。
「勇者様!その傷は!・・・」
イズミの見た勇者の右腕の傷は竜人のシトラルが治療して居るにも拘らず
傷口が開き腐り初めている様に見える。
「ああ、面目ない。やられたよ。どうやら毒を使われたみたいでね。
シトラルでもこの毒は解毒できないらしい。早くあいつを捕まえて解毒剤を手に入れないと行けないんだが・・・僕がこのざまでは・・」
『竜人には毒を解毒する力が無い?それならミナトの受けた毒を解毒したシェルシアなら』
そう思うと疲れ果てた顔をして居るシェルシアを勇者の前へ連れて来た。
「勇者様!毒は、彼女なら何とかなるかも知れません。」
シェルシアの方を見ると疲れ顔で呆然とこちらを焦点の合わない目で見て居た。
「シェルシア勇者様の毒を解毒出来る?」
「イズミ?・・もう・私・歩けない~・・・」
『あっこれ聞いて無いな。』
そう思うとイズミはシェルシアをベッドまで連れて行き座らせると
シェルシアに視線を合わせる様に屈んだ。
「ねえ。勇者様の治療終わったら美味しい物食べに行こうか?
好きな物食べさせてあげる。」
そしてキラーンと輝く4つの瞳。
「イズミさんそれ本当ですか?私頑張ります!」
後ろから突然話し掛けられ振り向くと森の精霊ミラエスがキラキラ輝く瞳で見つめて来ていた。
「ちょっと待ちなさいよ!イズミは私に言ったのよ!貴女に行った訳じゃ無いわ。
イズミそうでしょ!勇者の解毒任せて。」
すると今までの疲れた様子が嘘の様にシェルシアがスクッと立ち上がり勇者の解毒を始めると
その隣でミラエスが傷口の治療を始めた。
「解毒の邪魔!勇者の解毒は私に任せなさい!」
「勿論それは任せるわよ。でも解毒の次に必要なのは内臓の治療と傷口の処理でしょ。
それは魔法より精霊の力の方が優しくて早いわ。」
「何言ってるの!貴女は美味しいもの食べたいだけでしょ。」
「いいえ!私は解毒は出来なくても傷の治療は得意なんです!
私も勇者様の為に治療したいんです!」
「じゃあ美味しいもの食べなくても良いのね。」
「えっえっ・・そっそれは~~。」
「ほ~~ら~ヤッパリ。」
精霊のミラエスとシェルシアが早口で言い合いをしながら治療は進み
気が付けば勇者の解毒及び傷の治療は終わって居た。
それを見て居たシトラルは綺麗に塞がった傷口と良くなった顔色の勇者の顔を見て
呆然として居た。
「何でこんな事が出来る!この人は一体何者だ?」
シトラルが私に向かい驚いた様に言って来たので思わず。
「彼女元女神だから。・・・」
「「「「女神?」」」」
その場に居た勇者にシトラルそしてフェスタとレアの驚きの声が揃い
セティア達は何時もの事の様にスルーを決めていた。
「それではあの幻術も女神ならではの事なのか?」
シトラルのその言葉に嬉しそうにピースサインをするシェルシアを見たイズミは
シトラス達につい謝ってしまった。
「らしくない元女神で御免なさい。」
「イズミ何よ。らしくないって!こんなにも美しい私が女神らしく無い?
私程女神らしい女神なんて居ないわよ。」
「それ、ミリニシア様の前でも言える?」
「えっ・・それは・・・」
『まったく女神らしく無いシェルシアで御免なさい』
更に心の中で謝って置く事にした。
「所でシトラル、これだけ皆が狙われてると言う事はこの場所も既に知られてるんじゃない?
もしかしたら場所を移った方が良いのかも?」
「それは既に手を打ってある。
冒険者ギルドマスターの承諾を得て以前ギルドで使用して居た宿泊施設を借りる事になって居るので
そこへ移動するつもりだ。
何方にしろ相手からは私達の居場所は直ぐに気付くだろうが
何か有った場合の被害は少ない方が良いだろうからな。
勇者も動ける様になったし直ぐに移動した方が良いだろう。」
「場所は何処に在るの?」
「中心地から少し離れて居るがその方が私達にとっても都合が良いだろう。」
その後全員でその施設へ移動する事になった。
場所は中心地から少し離れて居ると言ったが実際にはそれよりもさらに離れた場所に在り
王都の塀際に建てられた2階建ての古びた宿泊施設跡と言った感じの建物で
1階の一部の部屋はギルドの倉庫代わりに使われて居るらしく2部屋にカギがかけられ
その他の部屋は自由に使って良いとの事だった。
部屋数は倉庫を除いて6人部屋が6つ2人部屋が2つどれも質素な部屋で飾り気らしい物は何一つ無い。
ギルマスの話によると新しい施設が出来るまでは新米冒険者や金銭的に厳しい
冒険者が良く利用して居たギルド経営の安く泊まれる施設だったらしい。
風呂は男性用と女性用それぞれ一か所づつにトイレもそれぞれ一カ所づつ
食堂は20人位が同時に食べられる位の広さで倉庫に使って居る部屋の事も考えると
この大きさにしては少し小さ目の様な気がしたが低料金で風呂付のこの様な施設は
新米冒険者には有難い施設だったに違いない。
それに私達だけで使うには十分な広さを持って居る事には変わりなかった。
そして今私達はシトラルがその施設に結界を張り終えると食堂で後の話し合いを始めた。
シェルシアは直ぐに食事に行きたそうにして居たがそこは話し合いが終わるまでもう少し我慢してもらうしかない。
しかし先程からずっとシェルシアと並んで話をして居る精霊のミラエスが
何故か意気投合して居るのが何故か気になって居る
あの二人一緒に居て大丈夫かな?
まあ一人は私の右手の恩人だしシェルシアは私の命の恩人には違いないのだけれど
この不安感は一体なんだろう?
そんな不安を他所にシェルシアと話をして居たその不安の元ミラエスが突然手を上げた。
「ハイ!提案が有ります!」
元気にそう云うとシトラルや勇者始め『ニシアの風』全てのメンバーを巻き込んで
話し合いが過熱し始めた。
「ちょっとそれは危なくない?」
「しかし意表を突くには良いかも知れないな。」
「わたしもその案には賛成だがその先の事を考えなくては成功は望めないんじゃないかな?」
セティアは不安を抱きオルイドは、身を乗り出しやる気満々だがシトラルは更に慎重を期すべきと
云いながらもミラエスの案が請けいられそうだ。
そして人族を操る術に対抗処置としてシェルシアの力を借りる事になった。
「シェルシアあの術を解く事出来るわよね。」
「あら、私を誰だと思って居るの?あのミリニシアの屋敷の事覚えて居るでしょ。
まあ余り広い範囲は無理だけれど私がその場に居なくてもここの周り半径100メートル位なら大丈夫よ」
シェルシアが云い終えるとポケットから羊皮紙を取り出し
魔法陣を描くと今度は自分の魔力をそこへ注ぎ込んだ。
「うん、出来た。後はこれを張るだけ。」
「シェルシアこの魔法陣が彼等の術を破る物?」
「魔法陣自体は凡庸な物だけれどそこに注ぎ込んだ魔力は彼等の術を破る魔法を練り込んで有るわ。
それをこの家の中心に張って時々私が魔力を注いで置けば私が居なくても彼等の術を勝手に使えなくしてくれる仕組みよ。」
「結構器用なんだね。」
私が感心しながらその魔方陣を見て居るとシェルシアが腕組しながら偉そうに仰け反って居た。
既に食事の事は忘れて・・・は居ないよね。
何しろその時もミラエスの視線が私にずっと釘付けだからな~。
私達はその魔方陣を部屋の天井に張るとこの家で数日間過ごす為の買い出しと
約束の食事に出かける事にした。
ただまだ体力が戻って居ない勇者と看病の為シトラルは残る事にした。
勿論半径100メートル以内で。
『腹が減っては戦は出来ぬ』
だよね。
「それではこれから結界を弱めるので皆早めに帰って来てくれ。
このままでは外の様子は分らないし皆が帰って来ても中へ入る事が出来ないからな。」
シトラルが云うには強力な結界を張ると出入りが出来ないばかりか
中から外の様子も判り辛くなり私達が帰って来てもそのままでは気付かない事も十分有りえ
帰って来た私達が結界内へ入れなくなってしまうとの事だった。
その為最小限の結界を張りえざる得ないとの事を言われた。
私達は近くの食堂で食事に入るとシェルシアとミラエスが目を輝かせ
直ぐにメニューの隅から隅まで目を走らせるとまだ皆が注文を終えない内に
5人前の料理と3人前のデザートの注文をすでに終えていた。
「中々やるわね。」
「シェルシアさんこそ。でも負けませんから!」
2人の睨み合いが続き料理が来たと同時に早食い競争が如く2人の食事が始まった。
ガツガツと食べるその姿は以前私が日本人であった頃良くTVで見た大食い選手権の
あの姿によく似て居て思わず笑いが零れた。
幾ら勇者様の怪我が治ったと言えまだシフォンさんとミナトの行方が分からないのに
不謹慎にも思えたがその時ばかりは2人のその姿に少し癒された気がした。
私達が食後食品等を買って居る頃シトラルの所へギルマスのミリアスからレターリーフが届いた。
そのレターリーフを見たシトラルは腰かけていた椅子から突然立ち上がり驚きの声を上げ
ベッドに寝ていた勇者に目を向けた。
「やられた。・・」
「どうした?」
「調査を頼んでおいた冒険者パーティ『女神の翼』が全滅した。」
シトラルがその場で立ったまま勇者に説明してい居るその時シトラル張った結界が消滅した。
「マズイ!」
急いで結界を張り直そうとしたが時すでに遅く
勇者のベッドの脇に黒髪の赤い瞳の少女が上半身を起こしたままの勇者の肩に
片手を乗せ立って居た。
「やあ、元気そうで何より。」
「勇者から離れろ!」
「離れる分け無いじゃん。でもどうやったか判らないけどボクの毒が解毒されてるみたいだね。」
少女の悪魔は勇者の肩に手を乗せたまま勇者を見下ろし繁々と見て居ると
その手を跳ね除けようとする勇者の手をもう一方の手で押さえた。
「あれ~、でもまだ力は戻って居ないみたいだね。それじゃ今の内に」
その言葉と同時にその表情は薄気味悪い笑いを浮かべ
肩に乗せた手をぎゅっと勇者に押し付けた。
「フレイムバースト!」
その魔法を発動させると勇者の寝ていたベッド事勇者が炎に包まれ
大きな音と共に爆裂して消えた。
残ったのは黒く煤け大きな穴の開いたた床のみ。
「あれっ?
ちょっと強過ぎたかな?
遺体を持って来るように言われたけど消し飛んじゃった。
でも、・・・」
そう言ってシトラルに向けてニヤっと笑う悪魔に
シトラルが怒りをぶつける様に魔法を放った。
「サンダーアロー」
それを事なげに防壁魔法を使う事も無く悪魔が躱すと片手をシトラルに向けた。
「攻撃魔法はこうやるんだよ。
サンダーアロー!」
幾本もの雷の矢がシトラルに襲いかかりそれを
「マッドウォール」
土の壁で阻むシトラル。
しかし突然背中に痺れる様な痛みを感じその場に倒れた。
「ほら~、後ろが疎かになってる。ダメだよ。後ろも気を付けなくちゃ。」
笑いながら見下ろすその悪魔に片手を向け攻撃魔法を放とうとしたがその手を悪魔に蹴飛ばされ
そのまま横たわってしまった。
「竜人ともあろう者が情けない格好だね。目の前で仲間を殺され自分の攻撃魔法もその相手にさえ当たらない。
どう?
情けないだろう?
悔しいだろう?
そして今度は、・・・フフフ、ハハハッハ」
「何がおかしい!私が這いつくばって居るのがそんなにおかしいのか?」
「いいや。まだ終わらない。お前のその情けない顔をもっと見たくなってね。
襲わせてもらったよ。キミの仲間をね。」
「まさか!イズミ達を!」
「さあ~てね。・・サーチ。」
悪魔はシトラルの片手を踏みつけながら探索魔法を発動させ
何かを確認すると更にシトラルへ顔を近付けて来た。
「ああ、こちらへ向かって来るのも居るけどその他は終わったみたいだよ。
さあこれからどうする?フフ・・・」
その悪魔は勝ち誇ったようにシトラルを見下ろして居た。




