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花盗人  作者: 楠ゆう
3章 小心物

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5演者 1-3

         久梨原香、逃避行。


 毎度毎度の事ながら、空腹で死にそう。


 なんで日本って山しかないんだ。風も強いし。最悪だ。このままくたばってしまいそうだ。まだやりたいことあったのに。母さんにも謝れていない。雪のお墓にもお参りに行けてない。僕に正直になれなかった償いができてない。

まだ。


 クソだ。クソが。

 死んでたまるか。

 こんなところでくたばってたまるか。

 負けてたまるものか。

 運命に殺されてたまるものか。


 「ワンっ!」


 ワン?。犬?、

犬か。赤い首輪のついた犬、何犬だろう、小型じゃない中型犬ぐらいのやつ。芝だろうか。


 僕は名前の知らない犬を撫でてみる。柔らかい毛の感触に生暖かい生き物の温度。可愛らしい目をしてる。遊んで欲しい、のかな。黒い目に僕の顔や周囲の景色が反射している。


 誰に飼われていたのだろうか。過去形はおかしいか。この子が脱走してきただけで逃したわけじゃないだろう。首輪がその証拠だ。電話番号が書かれてる。携帯なんて大そうなもん生憎僕は持ち合わせていない。


 「ごめんだけど、君のお家は知らないんだ。一緒に探してあげたいけどね。人見知りで話しかけにとか行けないんだ」


 首輪には電話番号だけ、名前は書かれていない。不親切だ。名前。書いといてあげなよ。


 舌を出して元気に「ワン!!」と鳴いてる。


 僕も飼ってみたかったな。犬。


 顎の下を優しく掻いてあげるとすごい気持ちよさそうな顔をしてくれる。


 生き物を飼うって何気に残酷だよな。平等ってなんだっけ。しっかりと命を扱うという認識がハッキリとしている方々はいいが、それがわかっていない奴は正直、生きる価値はないと思う。粗末に扱って最終的に捨てるやつ。大嫌いだ。


 犬の甘える声に紛れてそれに似た腹の音もなる。


 腹が減っていたこと、思い出しちゃった。


 二日か?三日かな。もう何にも食ってない。人間って腹が減り過ぎると気持ち悪くなったり胃が痛くなるんだよな、腸が空っぽでちょっとばかし違和感もある。この時期虫もあんまりいないし、木の実もないし。なんなら森だし。


 そういえばリュックにハサミが入っていたな。


 _____。

………それはいけない。


 そんなことはないだろ、牛も豚も、鶏も、虫も。平等だって僕は言った。お前はそう言ったんだ。ならいいじゃないか。ちょうどいい肉塊が目の前にいる、腹。減っているんだろ?食えよ。殺して。まさか殺せないなんて言わないよね、今更善人ぶっても遅いんだよ。人殺し。


 「違う」

 違くない。もう殺してる。

 「違う」

 違わない。

 「黙れ」

 どれだけ行ってもお前は変われない。

 誰もお前を見てくれない。

 誰もお前を愛してくれない。

 もう誰も、僕を、お前を。信じてくれない。


 「あっ、」


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