4。裕福獣1-5
水を撮りにいくために立ち上がりその場を離れる。家族を、人を殺すか。どんな感じなんだろう、決して考えてはいけないのだろう。だけど好奇心が抱きついてくる、少々クラクラする、季節の変わり目だしな、仕方ないか。
砂利だらけの川辺を歩いて水を一度手で掬う。
「冷てぇ」
持ってきたペットボトルに水を入れて、焚き火の炎でオレンジかかった水面をじっと何も考えずに観察してる。うっすらと僕の姿が投影されて霞のような揺らぎで蜃気楼を食い入るように見ている。
足元に無数に散らばった小石を拾って川へと投げる、ポチャンっと可愛らしい音と共に水面に凪る。
戻ろう。
戻ってきた僕の姿を見て海斗が「おかえり」と一言だけ口にする、焚き木の側へと戻り座る。一呼吸を置いてから僕は海斗へ語りかける。
「海斗ってなんでこんなにサバイバル知識あんの?」
「まー漫画で俺は学んだで。結構最近のやつだと知識多めの漫画とか多くなってきてるし、ここで生かされるとは思ってもいなかったけどな」
漫画か。今の時代そんな便利な漫画あるんだ、僕が読んでたのなんてただのコメディとかだったからそこら辺は通ってこなかったな、にしても海斗は本当に覚えがは悪いのだろうか。
ここまでのサバイバル知識だとか、食べていい木の実やいけない雑草の見分け方とか随分知っていた。意欲が欠落してただけなのかもな。悩んだりとか疲れたりとか。色々あるんだろうな。
「わりぃ俺、もう寝るわ。」
「わかった、おやすみ、海斗」
海斗は木のそばまで歩いて行き敷かれていた段ボールの上で横になった。焚き火の熱のせいか変な汗をかく。
暑いな。この火、綺麗だな。触ったら火傷してしまうけれど、どこか美しい炎に見惚れ手を伸ばしてしまいそうになる。寝る前まではついていて、起きたら灰になって火は消えてる。
そう、。。寂しいのだ。
時々早く起きて炎がまだ残っているのを見た時はとてつもなく嬉しくなる。まるでガチャでシークレットのキーホルダーが一発で出てきた時の興奮と感動に近しいものを感じる。
長い時間炎を見つめて僕は寝落ちていた。暖かさも相待って睡魔が誘発されて瞼が自重で降りてきた。いつ頃寝てしまったのか、それすら記憶がない、夢すら見なかった。
珍しく。相当熟睡していたか疲労困憊だったのだろう。
火は消えていた。
灰だけがその場に残り、余しい生活感だけがその場に滞留して僕を見ていた。
寂しい。その一言に尽きる。人生そんなもんだ。
遊歩道を二人でダラダラを歩いてる。余るほど時間があるからだ、テキトーに駄弁りながら居ると海斗が突拍子もないようなことを言い出す。
「なぁ香、今日実家寄ってってもいい?」
実家ってあの実家?家族がいる家?、帰れるのか。ただでさえ家出をしている身であるのに突然家に戻って居場所なんてできるのか。分からない。
「良いけど、帰れるの?」
「こっからそう遠くなくて、風呂流石に浴びたいし今日父ちゃん帰ってくるんだよね」
「わかるの?そんなこと」
「おう、今日父ちゃんの誕生日だから、そう言う時は決まって朝から家で酒飲んでんだよ、警察官が聞いて呆れるだろ?」
「まぁ疲れてるんだろうね」
「それはそう」
警察官って普段どんな仕事してんだろ、パトロールだけじゃないだろうし、事務作業とかも同時進行で進めるのかな。ご飯もいつ食べているんだろう、車を走らせながら食べるわけにも行かないだろうし。考えてみたらめちゃくちゃ大変じゃないか?僕ならごめんだな。警察は嫌いだけど。
現在時刻、十一四十二分。
海斗が行く分には構わないのだけど、僕は気まずくて家には上がれないだろうな、人の家とか上がったことないし挨拶の仕方もよくわかんないし、ましてや警察官なんて尚更だ、僕が世界で一番大嫌いな役職。警察と聞くとアイツの顔が出てくる、雪を奪ったあの警官の顔が。一歩間違えたら暴言を言ってしまいそうで。
「楽しんできてね」
「何言ってんだ?お前も行くんだよ」
「気まずいよ」
「気にすんな俺がついてるから、」
そう言う問題じゃないんだけどな、断っても下がってくれないの結構腹立つ、と言っても口には出さないけどさ。
「わかったよ」
とりあえず愛想笑いを並べてはべらかしておく。
「よし、そう来なくっちゃ」
そう歩いてると、一軒家の隅が見えてきた、山の麓にある一軒家、庭の葉はかなり生い茂り手入れがあまり成されていないのがすぐにでもわかる、家が綺麗なのに勿体無いな。




