5、出会い。憂・「自由」
久梨原香。放課後。
行ってしまった。なんだったのだろう。遠のく怕竹さんを見送り、嵐みたいだったなと一息ついてから本を閉じる。
「なんか。すごかったな」
唖然と本を眺め先のことを思い出す。風が髪を揺らして時間を知らせてくれるようで落ち葉が空から降ってきた。
枯葉を手に取り僕は何を思ったのか本を開いた、無意識的に僕はその枯葉をページの間に挟んだ。栞を挟むよう、軌跡を忘れぬように飾っておくように。旅行の出来事を写真に残して後から辿れるように。
通学鞄をガバッと勢いよく開いて、本をしまう。
「また、か。」
怕竹さんは僕にまたねと言った。そう言った。間違いは無いはずだ。つまりは、もう一度会ってくれるということになるだろうか。それとも一度きりだとしても、建前としてその「またね」という言葉を残しただけなのか。それは怕竹さんにしかわからない。どれだけ僕が脳で手探りに考えようと理解はできない。
僕はきっと後者であると思ってる。願うとするなら前者が好ましいが、そんな事万が一にもない。こんな人間だ、関わりたくは無いはずだから。
もたれかかっていたベンチから立ち上がり、微妙に重たい通学鞄を背中に背負う。平日は毎日これを背負う、今日は然程重たく無いからいいが、社会だったり英語の辞書だったりを持ってこいとか言われた次の日には、筋トレとさほど変わらないだろってぐらいには重たい。微かにだるさと嫌悪が生まれて育っていく。あぁ、早く帰りたい、家に帰ってお風呂に入りたい。
校門の方へ、スタスタ歩いくいく、後ろから自転車で帰ってゆく数人たちが僕を抜かして進んでく、辺りからは部活動で気合の入った声も轟いている。天晴れだ是非これからも頑張ってくれたまえ。サッカー部は確か今週の土曜日に大会があるとか全校集会で川下先生が言っていた気がする、像やら勝てば県大会に進めるとかで随分気合が入っているみたいだ。
ただひたすらに変わり映えのしない道のりをいつも通り歩いてく。車で送り迎えとかして欲しい、この時間かなり無駄じゃないか?と歩いていると常に考えてしまう。
「暇〜〜、あぁぁぁぁぁ!」
周りを念入りに確認してから、誰もいないことがわかるとすかさず貯めていたどデカい声を解放する。さながら遠吠えのように、普段から大きな声を出すわけじゃ無いから慣れていないもので不愉快な気持ちの悪い声が出ただけだった。
そして不満を全力で吐露する。
「みんな死ねばいいんだ、死んでしまえばいい。僕が思う人みんな死んでくれよ、なんで適当に生かしてくんないんだよ、クソが、楽しくねーよ」
僕にとっての一番大事は家族だけ。それ以外ならみんな死んでしまったって構わない。もし僕が嫌いな人が死ぬボタンと僕のことが嫌いな人が死ぬボタンが目の前にあったら僕はどちらを押して幸甚を得るとするのかな。
僕が嫌いな人、であるなら。迷う事はない。でも僕のことが嫌いな人が死ぬ場合。もし母か雄介どちらか或いは二人ともが死んだら、想像もしたくない、今までの関わり、紡ぎ、繋がりが嘘偽りでしかなかった、今度こそ僕は人間不信に急降下いて行くこと間違いなしだろう。信じれない。ではなく、信じたくない、だからきっと、どこかでまた。信じてしまうのだろうけど。
これが僕の弱いところだ。裏切られても、嫌われても、また好いてしまうから、また信じてしまうんだ。まだ僕への良心が残っているのではと思ってしまうのだ。良いことか悪いことかイマイチ、紙一重でしかない。
横では蜘蛛が巣に捉えられた蝶を食っている、自分よりも大きな肉体の蝶を蜘蛛は気に求めず貪り食っている。食物連鎖の構図によく似ていると思った、当たり前だけど。こうやって命は紡がれていくんだ。儚くも美しい、されとて残酷でいてそこ知れぬ怖さもある。
だが生態系ピラミッドの頂点は人間なのだ、僕は蝶を咥えた蜘蛛をはたき落とし、靴で潰した。
潰した姿は見ないで帰路を歩き続けた。
虫や動物は生きるために命を奪う。けれども人間ときたら自身の力の証明や愉悦で安易に命を殺める。身勝手そのもの。僕は今ひとつ殺したんだ。小さな命を。
命は皆平等である、誰かがそんなことを言っていた。そんなわけがあるものか、そりゃあ最初は皆同じ土俵で一斉にスタートしてく、そしてその後だ。付加価値やその地位で人間の価値は大きく上振れしてく。
誰かが人を殺す。だがそれは極刑になるだろうか。せいぜい五年かそこらか無期懲役で済むが偉い人、例えば天皇や総理を殺したら?間違いなくそれは極刑である。もう目に見えているんだ。価値は平等じゃない。
それなら僕の価値は一体どれほどなのだろう。先の本に挟んだ枯葉ほどの価値しかないのだろうか。それとも赤子にとってのおしゃぶりのような、五感にとっての感覚みたいなそんな価値であるのだろうか。
まぁ、僕にとっての価値は然程いい物ではない事は僕が一番理解してる。でも誰かの主観で価値を見られたら?かけがえのないものであれるのかもしれない、大切な何かであるかも知れない。
「爺ちゃんはきっと、僕を信じてくれる」
父や母から、祖父や雄介からの僕への価値は、己の価値以上の物なのかな。正直不安がなくならない。本当に愛してくれていたのかと真っ暗な思考が絶えず消えない。
地面に転がっている小石を勢いよく蹴飛ばす。手加減をせず、僕の持つ力全部を小石にぶつける。そこに小石があったから蹴った、何にも考えず、八つ当たりに近い心情でストレスの発散がてらに、サッカーをするように。
何か標的があったのならそれに向けて蹴っていたかも知れないな。そんなに人道からは外れてないとは思うけど。
コロコロと転がって遠くに吹っ飛んだ石を眺める、意味もなくひたすら見つめる。愛おしさすら覚えている。
ふっと鼻で苦笑いをかまし石を追い越す。
「僕の勝ち」
なにに勝負しているのかもわかんないのに僕は勝負に勝ったと思った。
久梨原香…黒羽和美術展。
行き着いた場所、黒羽和美術展。どうしてここに来たんだろう。当然来た理由は僕が一番知ってる。知りたかったんだ、母の姿を、母としての姿ではなく、母自身。世界に存在している母という一人の女性の形を。知りたかったんだ。
母の職業は芸術家、特に絵を描いて生計を立てている。どんな絵を描いているか、僕は見たことなかった。風景なのか人物なのか、風刺画なのか。そこすら知らない。世に絵が出回っているんなら一度は見た事ぐらいあるのでは?となるが、以前の母の絵は人気があまりなかった。見る機会なんてそうそう無い。
人気だとか不評だとか、そんなん母には関係がなかったらしく、好きなことをしているから苦ではないと。数少ないファンのために頑張ることが何よりも楽しいと、笑顔を絶やさずむしろ燃えていたように見えた、以前まで。
そして誰よりも熱烈で身近なファンが父だった。
父が初めて、母の絵を見た時とてつもなく感動したそうだ、生き生きしているというのか、もがいているようで一生懸命が伝わってきて唯一無二で母にしか描けない。そう父は思っていたみたい、だけども世間は母の絵には然程も興味がなかったようだった。
そして皮肉なことに、父が死んで。それから描いた絵が世間の目に止まり、爆発的な人気を得て今となっては美術展まで開けるレベルまでにもなっているという。
なんたることか、最も身近で愛していて、最も応援していた者が死して、やっと花が開花した、喜ばしいことも現状が伏せを命令してだまれと言っている。
「黒羽和」この名は母の活動名で、どうしてこの名にしたのか。それは母と父しか知らない。僕が知っていても意味はないけれど。
僕は入り口で待ちぼうけをして木偶の坊のみたく立ちすくんで呆けている。何かを待っている訳ではない、いや。望んでるんだろう、あの日みたく、母と父がスーパーや図書館から出てくる姿を。もう一度、あの笑顔を見たかったんだ。
好奇心に負けた、僕は母の書いた絵が気になりそのまま美術展の中へと入っていった。
本来なら入るのに入場料が取られる、だけど僕は。これは「母の書いた絵だ」、「僕はあの人の息子だ」、と言ってそのまま中へと行った。悪知恵がこの時ばかりが働いた。本来はそんなこと許さない。入れなければ帰るつもりだったし、変な気を起こす気もない。ただ見て帰るだけ。ただ見るだけ。見るだけ。
どうして、創作物に金を出すのか。人を喜ばせるために作った物であるのに、どうしてお金を支払わなければならないのか。僕が子供だから分からないのか、興味がないから分からないのか。僕は然程も絵や創作に興味がない。見ても共感や感情移入ができないから。
母のしていた話を思い出した。なんで、どうして、今なんだろうか。
「________」
ふかふかのマットの上を土足で歩いて辺りを見渡していく。僕は足を止めず、流し目で母の描いてきた絵たちを見ていく。花や、街並み、夜景や人、魚や動物。どれも複雑で手の混んでいた品物たちでいっぱい、そりゃあ。人気が出るというものか。
どれもこれも色彩が凝っている、ただ色を重ねるだけでは作れないであろう見た目。努力してきたんんだろうな。あっ、。
「これ、知ってる。」
すっと足を止めた。見たことがある。母が、家のリビングで手掛けていたもの。鳥の絵。白い鳥が青い空を背景に羽ばたいている。作品の名前は。「自由」
自由と書かれた絵は他の物と違い、色が薄い。他は油絵のように厚く塗りたくられているのにも関わらず、この絵だけは水彩画のようで、どう表現したらいいのだろう。
海、みたいだ
滔々と流れる流、液体のようだった。これが、母なんだろうか。
僕はその絵を触ろうと手を伸ばすがお触り厳禁の看板に目が行き伸ばすのをやめた。絵を破こうとした、壊そうと衝動が働いた、どうしてなのだろう、どうして壊そうとしたのだろうか。どうしようもない程の怒りが沸々と心身を蝕んで。ただ、
壊したかった。
だけど……。
「やっぱやめた、」
呆気なくそれを諦めた、僕にとっての覚悟なんて言って仕舞えば紙切れみたいなものだ。乾燥してちょっと力を入れたら破れてしまう、本のページと変わらない、簡単に諦められるし、過ぎにでも丸めてポイって捨てられる。固い意志とかそんなもん僕にはない。適当で仕舞いにできるならそれがいい、深く考えたくない。
僕は左手で右手をそっと撫でながらに考える。
「母さん、自由がなんで欲しかったんだろ、やりたいことやって、生きたいように生きられて、食べたいものを食べられて、好きなことやって、寝たい時に沢山寝られるというのに。母さんにとっての自由って、どれが自由だったの?。」
目を瞑り、見えないモヤを眺める。けれども正体も理由も、自由も。
何も分からない、、分かろうとしない。、、、、分かろうとしてないんだ。僕は入口の方へと向いて黒羽和美術展を後にする。奥の方に物販もあったらしいが、目で映したくなかったからそのまま外に出た。
通りすがりの人が僕を目で追っていた気がする、そりゃあそうだ、学校の制服で汗かいて、通学鞄を背負ってこんなところまで来ているんだ。変人と何ら変化はない。もはや変人よりも変人をしている。着ぐるみとか周りにないかな、かぶって帰りたい。
「香くん?」
隣から声をかけられた。ビクッと「ぅ、くっ!」と唸るような声を出して足が止まる。知らない大人びた声をしていた、誰だ。こいつ。
「どちら様ですか」
「由香里さんのお子さん、であってるよね」
母さんの名前、てことは母さんの友達か何かか。何か聞きたいことでもあるんだろうか。お金を払っていないのがバレたのかな。話しかけてきたのは、母さんと同じぐらいの年齢に見える女の人で服装は灰色のワンピースを着て僕の顔をじっと見つめている。
「いや、宗木さんが逝ってしまってから、由香里さんすごい雰囲気が変わっちゃっててもしかしたら、と思って、その大丈夫?、何か辛いことでもあったらいつでもお話し聞くからね。」
「あっ、っえ。はい、えっと」
だめだ、脳が回らない。言葉が止まって話にならない。これだから対面で話をしたくない んだ。ましてや初対面なのだ、ビビって硬直してしまう。アホらしいが現実で、とても怖い。
「大丈夫、お姉さんここの展示会が終わるまで大体ここで受付してるから、なんかあったらいつでもここに来てね、息子さんだもんね、特別で勝手に入っても良いからね」
特別?僕に特別な待遇なんていらない、てか。そんなこと言われてももう来ないし。会話を爆速で終わらせたいがために話を遮ってまで言葉を口にする。
「はい、あの。失礼します」
そそくさとその場を後にした。後ろを振り返るとその名の知らぬ女性は手を振って僕を見送っていた。いい人なのだろうか。母の友達と言っていた、どんな関係であるのか、仕事関係は確実だろうけど。もしかしたら母の同級生だったりもするのかもしれない。
柔らかいふかふかのマットと打って変わってまたアスファルトを踏み進む。硬い地面が足を押し戻す感覚が妙に膝にくる。
次第に肩も痛くなってくる、微妙に重たい通学鞄がズキズキと毒のように体力を低下させていく、体も脆弱だからかもしれないけれど、筋トレとかしている人ってこれが好きでやっているのかな、誰かがいじめて良いのは筋肉だけだって脳筋言葉を言っていた気がする。誰だっけ。
「あ、如月先生だ」
体育を担当している教師で、僕のクラスの副担任ですげー体がデカい、多分身長185とか、いや190超えてるかも。縦だけじゃなく横までもデカい、肩幅もデカい、もうあれゴリラだ。言ってしまえば人の姿に擬態したゴリラだ。暴言かも知れないが、ほんとにゴリラだ。優しいゴリラだ。
めちゃんこにゴツい見た目をしているのにも関わらず、蚊を殺すことすら躊躇する人だ、ギャップが凄すぎて失神するんじゃないかってぐらい優しい、動物園の飼育員が優しかったんだろうな、よかったよかった。にして鞄が重い。
「重い、、、、」
無愛想の度を越したまでに低い声が蛇がうねるが如く苦し出て滲む。
僕ばっか、これだって先ほどの後悔が心底流れ溢れてく、自業自得だと説得しても言い訳ばかり、有刺鉄線や荊が腹の巻きつかれている感覚に取り憑かれている、吐きそうで仕方がない。
どうしよう、動きたくない。このまま足を止めて座りたい。寝っ転がりたい。
「”あ”あぁぁぁぁ」
我儘が脳みそで、倒れ込みたいと命令し続けているというのに、座れば時間が直ぐに過ぎてしまう、縛りが動けと何度も喝と命令を轟かせてくる。何より身体の体力と気力を盗んでくのは、眠気だ。
今。道路に飛び出たら。
僕は。
死ぬんだろうか。
今、僕がこの世界を飛べたとするなら、
父さんのいる世界まで、遊びに行けるのであろうか。
どうせ。 誰も見ていないんだ。 それなら今。
それならば。
「僕が死ねば、解決じゃないか」
重力に押し返されるみたいに僕は足を止めた。動けと命令していた喝が嘘のように、やっぱり本心には勝てないのか。
あぁ。何であの絵を破ろうとしたのか、僕、わかった気がするよ。
「自由って、そういうこと、」
空を見上げる。茜色、曇っていないのにだんだんと暗くなっていく、まだ前は見える、落照が夜を沸々と伝えている。
鳥が飛んでいる絵だった。空を「自由」に飛び回っている、生きるを象徴しているような、生きろ!と言っているようなのが絶妙に気に食わなかったんだ、だから僕は嫌いなんだ、創作が。生きろと、辛いのは今だけ、幸福な未来が待っていると気取ってる物語が、
薄っぺらい語り部が雑音のようで大嫌いなんだ、何にも知らないくせに、生きろって何言ってんだよ。
「じゃあ死ねよ」
車の音が聞こえる、右からだ。それと同時に頭の中で、僕の声が狂うしく響いた。ちょうどいいや。人生は自分が選んだ道が正解だ、正解にして仕舞えばいい、間違いだなんて誰が咎める。こんな人生だって僕が楽しかったって言えればそれでいいんだ。
普通って。難しいな。
終われるんだ、楽になれるんだ。
深呼吸で一拍置いて、
足を踏み出す、目を瞑って何度も息を整えて大きく吐いて、遊びに行くように。遊園地にでも公園にでも遊びに行くように、色彩色が僕を包んだ、震えているんだよ、武者震いだろうか、嬉しさ?寂しさ?喜ばしさ?
………違う。
また足を止めた。地面と足が磁石でくっついたみたいにキッパリと停止した、死にたいのに、死んでしまいたいのに、どうしようもないほどに。どうしようもないまでに死にたくて仕方がないのに足が動かない。動いてくれない。そして車は僕の目の前を何事もなかったように通過していった。通過していく時の風と音が煩かった、それ以上に僕は煩い。
「何で!何で!何で!何で!何で!何でだよ!」
叫んだ、叫んだ、僕は側にあったうざったい白のガードレールを思い切り蹴った。勝手に僕らを守りやがってこっちはそんなん一切として、望んでなんかいないんだよ。何ドヤ顔して突っ立ってんだよ!、思い切りに精一杯殺すつもりで蹴った。
「っ、、」
痛い、即座に痛みが脳まで届き体に巡り巡って神経が勝手に反応する。うずくまって脛を震えながらに抑え悶えてゆく、僕は涙を流すのを必死に堪えて歯を食いしばり全力で耐える。弱い僕が憎いからか、ただ単に痛いからなのか。ヘタって動けない、ダンゴムシみたいだ。
だから、弱虫なんだよ。
「最悪、」
ズボンの裾を捲り蹴り当たった箇所をどうなっているか確認する。痣ができていた、青紫に変色した脛が可哀想に懇願して喚いている。
「はあぁ」と呼吸済ませに息を吐いて僕は立ち上がる。痛い。もうめんどくさいな。帰ろうか。茜色だったはずの空がどことなく藍色を帯びてきた、大丈夫かな、帰れるだろうか、そして怒られやしないだろうか。叱られたらそれはそれでいいのだけど。今後のやる気に大きく影響するかもしれないと思うと急いで帰らなくては。
そっと立ち上がってから僕は一息置いて呼吸を整えまた地球を踏んで歩く。
これ、骨までイってないだろうか。歩くとヅキっと芯の奥の方で痛みが暴れている、耐えられないような痛さじゃないから折れてないだろうが、気が散る。寝る直前に虫を見てしまった時の感じのゾワゾワ感がある。
先の風からずっと油菜の匂いがする、臭くはない。けれども独特で青臭さの中に甘い香りが生きているというか。どっかの日の図書室で読んだな。油菜の匂いって人によっては汗の匂いだとか唾液の匂いに感じる人がいるんだとか。
僕はいい匂いだと思ってる。僕と似た匂いだから。
嫌いな感じはしないし、何より春を感じる、身近に季節を感じる。この黄色い花弁を背景にこの独特な芳香が鼻腔を蕩かすと、真っ先に季節の変わり目を感覚として実感として受け取れる。よく見ると蝶が飛んでいる、あいつらもいつか喰われるのかな。可哀想に。
「やっぱ。綺麗事って大っ嫌いだ」




