4。裕福獣1-3
「これ食べれそうかな」
「いいんじゃない?もうそろ」
僕らは飛蝗や蟋蟀、ゲジゲジなどの虫を取っては焼いて食べての生活をしる、最初こそ抵抗があったものの空腹には勝てず恐る恐る食べてみた、そしたらとんでもなく美味しかったんだ、出来立てで殺してすぐに焼いて食ったからか鮮度も良くて、とんでない絶品で開いた口が塞がらなかった。
それを知れたのは海斗のおかげだ。
暗い森林の中、川のそばで焚き火をして時間を潰してる。
「ありがとう」
「何急に、怖いわ」
「なんでもない」
半月前に僕らは偶然と出会い今はこうして共に旅をしている。たまたま公園でホームレスへの炊き出しをしているのを見つけて空腹の紛らわしで僕も貰いに行った。周りはご老人ばかりで年齢制限とかあるのだろうか、と心配になって行こうかかなり迷った。
並ぶのが怖いのだ。
「止まっても始まんないか」と意を決し僕も並ぶ。ボランティアなのだろうか、それなりに若い人たちが炊き出しを行なっている。並んでいる間、周りの人間たちが僕を物珍しそうにチラチラと見てきている、鬱陶しいことこの上ない。まるでゴミを漁ってるネズミを蔑んで近づいてくるなと、物申す様な目だ。
時々肩がぶつかる、わざとなんだろう。訳のわからん仲間意識で部外者を除け者にしたがっているって感じかな。僕よりも臭いジジイらがなんかしてるよ。
僕の番だ、炊き出しの料理を受け取り一通りの会釈の後僕はそそくさとその場を立ち退く。
これは。うどん?。あ、ちげーや。ラーメンだ。
暖かい湯気が立ち昇ってしよっぱいラーメンの匂いがする、良い匂い。
「隣良い?」
「はい?」
顔を上げると、若い。僕と同い年ぐらいの年齢だろうか。
「どちら様ですか」
「俺は江野海斗、お前ひとりぼっちだったから、あのじじい達ウザいだろ、一緒だよ、俺もぼっちにされてる、どうせならさ一緒に食おうぜ」
隣に座る海斗と名乗る男は半袖のパーカーのような服を着ていて妙に距離が近い。
「お前、今日当たりだよ」
「当たり?」
「そう、当たり。炊き出しラーメンだろ?普段だったらこんな良い飯出てこねーもん。初めて見る顔だし。新入りだろ?」
今日は良い日だったのか。たまたま来たのに。だから周りもピリピリしていたのか、数少ない炊き出しを普段いないやつが貰っていくのが気に食わなかったのか。
「新入りっていうか、今日でここからいなくなりますけどね」
「そーなん?じゃあさ俺いつもここに居るからたまには来いよ」
「いや、もう来ないと思う」
膝の上にラーメンを置き割り箸を真っ二つに割りながら言う。
「家にでも帰るのか?」
「いえ、帰り方はわかんないし、僕なんかと話してても楽しくないでしょ」
「うん、楽しくない」
「正直だね」
そういえば雪と食べる約束してたな、高校入ってバイトしたら、一緒に食べるって。話してたな、麺を啜りながらに浸る。雪、何してんだろ、随分と長いこと歩いて渡って進んで来たな。雨が降って土砂降りになる時もあったし、梅雨に偏頭痛でおかしくなりそうになっていた時もあった。人混みが少しずつ慣れてきた。人の顔にも、声にも、姿や暖かさにも。嫌いなら嫌いだと好きなら好きだと。思えるようになった。明るくなったのだろうか、僕は、強くなっているのだあろうか。
でも、どんだけ経っても心にポッカリと空いた何かはなくなってくれない。塞がってくれやしない。
時々、思うんだ。ベンチで座っている時、歩いている時。あの時逃げていたら、隣に君がいてくれたんじゃないのかなって。僕の弱さの代償でしかないけれど、後悔はどこまで行っても後悔に過ぎないけれど。
どうして、僕は平気な顔して今を生きてんだ。
「なぁ、連れてってくれよ」
「はい?」
__ダメだよ。
「帰り方わかんないって、旅してんだろ?どうせこのままここで止まってても何も始まんないし、人数増えた方が楽しいだろ?」
「でも今、楽しくないって」
「これからお前を知れば楽しくなるだろ」
自分勝手だ、一人がいい、気を使いたくない。断ろう。
「いいよ、来なくても。辛いことばっかだし、楽しいって思えることとか殆どないよ、貴方こそ家に帰った方がいいんじゃないですか?」
「俺は帰らん、帰っても…、ていうか、追い出されたし俺」
「何したんですか」
「さーね」
適当だ。やっぱ人には人なりの苦労があるんだ、楽そうに見えてもそんなことないんだろう。
「それじゃあ、来ますか?一緒に」
___ダメだよ。
海斗は僕の顔を見る。
「いいのか?」




