3、模型の本 1-3
井上美香。放課後、楢崎書店。
「珍しいね、雪が本読みたいとか言い出すなんて」
「うん、なんとなく。友達が小説ばっか読んでてさ。ずっと読んでるからそんなに面白いなら私もちょっと読んでみよっかな〜と思って、適当に探してんだけどさぁ、パッとしないんだよね。ビビッ!とくる題名っていうか、そういうのが見当たらなくて」
「私も小説とかマジ見ないから、オススメとかできないや、てかそのお友達と来たらよかったんじゃね?私とじゃなくて」
「連れてきたかったんだけどさ、誘いづらいっていうか、その。それも含めて今日は美香を呼んだの」
「含めてってなんや、わたしゃバカだけん理解できんど」
よくわからないどこの方言だか知らない訛りを遊び入れて私のパンクした脳で最大限ふざけ雪に答える。
「そのーさ。んまぁいいや、一旦本探してからにしよ、本題はそこから!」
耳が赤い、可愛い。女の子らしい雪を見れて私はニコニコが止まりませんなぁ、もっと見せなさい乙女の心ってやつを。私と雪は今日商店街の小さな個人経営の本屋さんに来て本を探している。放課後そのまんま行くことになり制服姿で。本来なら校則でこういうことは禁止されているが、青春だと思って私はしょっちゅうこんな事をしてる。
けど雪はそんなこと普段しないから、この持ち掛けを話してくれた時、嬉しくて二つ返事で、「オッケーい」と言った。思い出して私は「んへへ」と変な笑い声が出てしまう。雪はそれを見て「えぇ、」と引いたような反応をした。
「ついにゆきのすけが不良の仲間入りしちゃうのかぁ、お母さん考え深いものがございますことよ、およよよ」
「不良じゃないし〜ふざけたこと言ってんじゃないよ、鉄拳が飛んできるぞ!私の心強い鉄拳が!」
「こりゃ失敬、ほなら、私も候補探してきてあげましょうかな、ゆきもすけのためにも私のためにも」
「手分けだぁ!」と商店街全体に響いていそうなぐらい気合の入ったでかい声を出したら、雪の方がビクッとなって雪が何か言おうとした時、奥からおじいちゃんの声が先に聞こえてきて私達は同時にそっちの方へ顔をやる。
「本屋さんでは静かにねー、」
柔らかいのほほんとした、優しい声を聞いて私は「はーい」と若干距離近めに返事をする。それを聞いた雪が私に言う。
「美香ってさぁ、ほんと距離近いよね。うらやま」
「雪も適当でいいんだよ。そんなに人の考えすぎてもいつか壊れちゃうよ、適当でいいのさー適当でー」
雪の話を聞きながら私は適当に本を探す。表紙を見たりタイトルをなぞったりして面白そうな本を探す、けれどもビビッとくる作品が見当たらずやはり二人とも右往左往してします。
すると雪は何も言わず一冊の本を手に取りそそくさと会計を済ませに行った。
あ、いいの見つかったんだ。よかった。
耳を済ませスキャナーがバーコードをピッと読み取る音と「お会計八百七十円ね〜」という声が微か聞こえる。
すると会計を終えた雪はビニール袋の中に入った本を胸と両手でしっかりと大切そうに抱きながら走ってきた。
「買えた?」
「うん。買えた」
「何買ったの?」
「んーとね」
雪はビニール袋から本を取り出し私に表紙を見せてくれた。そこには女の子と狼男だろうか、絵本用な絵柄で灰色の表紙をした、
「メメント・モリ?」




