2、小人ノ指揮者 1-5
「ちょっとお客様!」
背後からの店員からの呼び止めの声、僕はバレたのだと即座に理解した。ここで捕まったら……最悪だ。
僕は全力で空っぽの足に喝を入れてダッシュする。運動会の合図と同時にスタートダッシュを切るみたいに、疲れなど忘れてフルスピードで駆ける。振り向かずに逃げる僕を見た店員は明らかに動揺した声で「あ。!待って!!」とガタガタと鳴らしながらに僕の方へと向かってくる。
けれどもスタート位置が明らかに僕にとって有利そのもので僕は出入り口まじか定員はレジを跨いだ向こう側。どう足掻いても転んでも僕の勝ちに違いない。知らない土地を知らないなりに駆け回る。信号無視をして車に轢かれそうになる。入り組んだ道を無心でぐるぐると猛進し行く。
「もう無理だ。」
誰か知らん家の塀に体重を任せ座り込む。足が石みたいに固くなってしまった。乳酸が溜まりに溜まってる。
走ってきた方向を見たがそこにはもう店員はいなかった。謎の達成感に手を上に掲げて喜ぶ。
内心逃げ切れるなんて到底思わなかった、ゲボが流れそうだが胃袋が空で何も出てこない。盗んだものの重さと今日の疲労ですぐに滅入ると半ば諦めていたと言うのに、いざ走り出すと些かに走れてしまった。アドレナリンとかそこら辺が脳から放出されたのだろう、麻痺っているんだ。
やっと、やっとだ!念願の飯!ありつける。服の下にポッケに両手に背負い隠していたおにぎりやその数々を地面に置いて眺める、これだけでも言える、幸せだ。自然と笑みが溢れて笑顔になる。
生きることに精一杯になるってなんかいいな。
ちゃんと笑ったの、結構久しぶりかも。
こんなにもご飯に感謝したのは今までこの方あっただろうか、日々のありがたみが薄れていたのが身に沁みる。これからはしっかりとこのありがたさを噛み締めて食べよう。
「いただきます」と合掌してからおにぎりの袋をびりっと勢いよく破いて口いっぱいに頬張る。
「うんまっ!!何これ、うんまぁ」
全細胞が歓喜で湧き上がるほどにうまい。ただのおにぎり、されどおにぎり。まじでうまい。美味すぎる。
泣きそうだ。どうしよう好きだ、おにぎりやばいな。この魔力に魅了されてしまいそうだ。いや、もうされている、気づいた時にはもう遅い。すでに虜になってる。コンビニのおにぎりってこんなに美味しいんだなぁ、今度からこれ買おう。……今度、か。
海苔の塩見のある香りとパリッとした食感に酢飯の少しの酸味に中に入っている鮭の旨み、贅沢品すぎる。
すると。
「あれ、」
もうない、手元にもうおにぎりがない。まだ食べ足りない。
「少な。」
普段ならちょうど良いぐらいなのに、そんな食べる頻度は多いわけじゃないけど。にしても少ないなハズレでも引いたのかな。
「まあいいや」
すると次は、サンドイッチを開ける。これも勢いよく破いてガブっと一気に食いつく。
「うんまぁ!!」
悉く旨味が口に押し寄せる。力が抜けて脱力モードに入ってしまった。動けない。もう休も、ここで。猫とかたぬきとか、自然で生きてる動物もこんな感じなのかな。うまい物食って明日も生きよーってなってたのだろうか。
「でもそっか、やっちまったんだな」
盗み。犯罪に片足突っ込むとかではないく全身どっぷりと浸かってしまった。晴れて僕も犯罪者の仲間入りってやつか。もうきっと防犯カメラで僕の顔が割れている頃だろうか、警察に通報されて周辺捜査とか、そこらに仕掛けてある防犯カメラとか見てあっちこっち探すんだろうな。店側からしたら、ただの営業妨害でしかないもんな。かと言って同情してくれとかそんなんも言う気もないけどさ。
そう考えながらに缶ジュースをプシュっと開けて一気飲みする、これもバカみたいに美味い、ぶどうジュースってこんなにも甘くて至福になるんだ。
「平気?家の前で何してるのかな?」




