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花盗人  作者: 楠ゆう
2章 流星の燈

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5、飛騨夜。1-4

「帰りたくない」

 「え、」


 「まだ。帰りたくない。一緒がいい、ずっと、家に。帰りたくない。香、逃げたい。一緒に逃げようよ」


 これは心細さとか寂しさじゃない、怯えている。恐怖に怯えて目が滲んでいる。どうして?なんでそこまで怯えているんだ。


 「どうして?、どうしたの?雪、大丈夫?」


 「また。いつもに戻るのが嫌なの、また帰ってお母さんとかに怯えて寝るのがどうしようもなく怖いの、辛いの。」


 「でもさ心配されちゃうよ?。僕も逃げたい、できることなら、今すぐにでも逃げたい、全部放り投げて雪と一緒にどこまでも走って逃げたい」


 「じゃあ!」


 雪の表情がパッと変わった、元気がどこからともなくやってきたみたいに。いつもの笑顔になった。だけど。


 「逃げた先は?、どうするの?」

 「それは。」


 逃げるのは構わない、けれども問題なのはその後なんだよ、今が辛いのは僕だって同じだ、なんな変わらない、辛いさ僕だって。だからと言って逃げてその後には何が待っているんだって話で、今以上の苦難が大きな壁が待っているかもしれない、多分だけど。そんなの僕には耐えられない。泣き出してその場で立ち止まってしまう。


 死にたくなるほど這いつくばって気力が皆無で全部を恨んでしまう。


 「高校に行って、バイトしてお金が貯まったら二人で一緒に逃げよう。二人で同じところに住んで、休日はゴロゴロして。平日は一緒に学校行って、バイトして。家事の分担して。同じ布団で寝よう。だから、それまではさ」


 「分かった、」


 渋々だろうな、納得はしていなさそうだ、でも仕方がないよ、しょうがないんだ。土台作りは大事なんだから。雪はゆっくりと気だるそうに立ち上がって僕にまた抱きついていた。


 「ありがとう」

 「お互い様」


 雪は笑って僕の背中を押した、少し痛い。でも、心地いい。「帰ろっか」と悠々に言葉と託して。


 「花火終わるの早かったね」

 「ねー、三十分


 二人で真っ暗になったサイクリングロードを歩く。寄り添って進んでく、夏の蒸し暑さの中で。二人で御託をどこまでも並べ話し歩いた。これからのこと今までのこと。、何度も飽きるまで話したことも。もう距離感なんてどこにも感じることはなかった。初めて話した時は、近づくことすらできなかったのに。やっぱり。逃げてしまいたいな。本当に。幸せな程に尊い。


 「なんか、信じられないって言うか、ほんとに僕でいいの?」


 「いいの。私は香だからオーケイしたし、私からもどっかで言おうって思ってたから、めちゃ嬉しい」

 今は息をすることすら楽しい、どうでもいい事でもきっと今ならすごく高揚感がやってくると思う。


 「それじゃあ、私はここで」

 「家まで行かないの?」


 「今日美香ん家で着付けしてもらったから、そっちに行かないと洋服とかないんだよね、親に言ってないんだよね、花火大会に行くの。勉強してくるって言い訳で出てきたから、急いで行かないとバレるかも」


 「そう言うことね、じゃあ仕方ないか」

 「じゃあ、またね」と僕は言ってからその場を後にした。


 帰りたくねぇ。寝たら夢が覚めてしまう。それなら寝なければいいのか。安直過ぎるか。思っておこう。


 「これは現実だ」と。


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― 新着の感想 ―
永遠と続くものはないから残酷ですよね たた帰りたくないと駄々をこねてるわけじゃないと分かるのも、さすがです
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