4。勿忘 #1-2
「ほんとに同じでよかったんですか?、つまらなく?」
「気にしなーい気にしなーい」
「ならいいんですけど」
井上さんはウキウキしながら料理を待っている。僕はそれを見ながら一口コップの水を飲む。
しばらくしてから順々にご飯が配膳されてきた。まずは品少ない僕からその後に井上さんへ料理が順に運ばれる。良いほどまでに立ち込める湯気に鮮やかな梔子色のオムライス。どちらにも全く同じものが運ばれる、とても食欲をそそる見た目と匂いで空いてたお腹はより一層空腹となった。今か今かと待っていた井上さんは目を輝かせて僕を凝視する。
「香さん、すっごい美味しそうですよ!おんなじのにして良かったー、あー、でもこれだけ美味しそうなら別のも絶対美味しいじゃん、追加で頼んじゃおうかな」
「そんなに食べれます?」
「行けるっしょー。甘いものなら別腹だし、でも心配だから食べ終わってから考えよ、あでも香さんがいるし食べきれなかったら食べてもらおうかな」
「そんなに食べれるかわかりませんよ、僕そこまで大食いってわけじゃないですし、どっちかっ言うと多分少食な方なんじゃないですかね」
「大丈夫大丈夫」っと井上さんは言うと早速料理に手をつけ始めた。美味しそうに食べているのを見ていると僕まで心地よくなってくる、食べている人を見るのが楽しい、と言う人がいるのもわかってしまう、井上さんはきっと良い人なんだろう、まだ少ししか話していないけれどそれぐらいならわかる、善人か悪人かの違いなら。まだ少し疑ってはいるけど今目の前で美味そうにご飯を食べる井上さんから嘘なんて、微塵も感じたりしていない、嬉しそうに楽しそうに食べている。
「美味しいですか?」
「ものすっごい美味しいですよココ、正解でしたねーいやー天晴れですよ私天才!」
店内中に聞こえそうなほどの声で意気揚々と僕に言う、相当美味しいのだろう。そして僕もスプーンを手に取り手元にあるオムライスへと徐にスプーンをオムライスに突き刺す、まるで豆腐だ、滑るように何もそこには無いみたいにすんなりとスプーンは入っていく。
そして突き刺した部分からさらに湯気が溢れ出る。閉じ込められていた湯気が開放されて一気に飛び出てきたのだ、それを見て僕は真っ先に美味しそうよりも熱そうが勝ってしまった。ほぼそれと同時に閉じ込められていた中の匂いもすかさず鼻を掠める。
「美味しそう」といつの間にか僕は口ずさんでいた。そして料理を食べていた井上さんは一瞬食べる手を止めてそれに意反すように僕へ言葉を寄越す。
「美味しそう。じゃなくて美味しいんですよ、食べてみてください。私これ常連になっても構わないってぐらいココ好きかも」
オムライスの一部を載せたスプーンを慎重に口へと運ぶ。
………おいしい。
正しかった。美味しいを疑っていたわけじゃ無い、ただ好みはあるから好きになれない場合もあるんだと少し腹を括っていたがそんな小さな心配は要らなかったみたいで、最近はデレバリーだったりヨーグルトやコンビニのおにぎりを食べる生活をしていたから余計に美味しく感じてしまうのかもしれない。久しぶりに食べたこんなに手の凝った温かい料理。八木さんが作ってくれたの以来かなと少しノスタルジアに浸った。もうあそここそが僕の帰る場所なんだ。
「美味しいですね、これほんとに」
「でしょーやばいよね、まじで来て良かったー」
続いて店員がショートケーキを運んでくる。井上さんは待ってましたと言わんばかりにありがとうございますと店員に返した。そして店員はにこやかな顔をして軽い会釈をしながらに再び厨房もほうに戻っていった。
僕たちは料理を食べながら話を続ける、今まで会ってきた人や今の鬱憤、バイト先の給料が安いなど色んな話をした。他愛のない会話僕はそれが楽しくてしょうがなかった。次第に僕も話すことに興が乗ってきて僕らは長い時間話し込んでいた。
さながらマシンガントークである。一時間は話していただろうか。そんなには経っていないのかな。わからないけど。気がつけば二人とも料理を完食していた。ぺろっと平らげてしまった。それぐらいには美味しかったのだ、大学の近所だし通えるなともう常連になる気でいた。美味しかったのだ。




