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龍吟の琴  作者: みなきら
龍吟じて、雲を呼ぶ
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三貴神(みはしらのうずのみこ)

 頭の中がふわふわとする――。


 素戔嗚尊は神皇産霊神に小さな光を翳されてから瞼が重たくて敵わなくて堪らなかった。白酒を呑んだ訳でもないのに、泥酔してしまったような酩酊感が襲ってくる。


 それでもしばらく強靭な精神力でもって抗い続けていたが、遠くで「(ほど)け、ゆるゆると、解け」と神皇産霊神の優しげな声で唱える声が聞こえてくると、さすがに耐えられなくてすっかりと意識を失ってしまった。


 代わりに去来してきたのは、いくつかの脈絡のない情景だ。


 つい先日会ってきた和邇の一族との別れの挨拶、伽藍堂な父の幽宮の様子、囚われた神皇産霊神と初めてあった日の窶れた姿。


 それから、天照大神と月読命と肩を並べて、高皇産霊神の元で三界の事を学んだ日々のことも頭を掠める。


 それらはまるで死ぬ直前に見ると聞く走馬灯のようで、素戔嗚尊は急に辺りがぼやけると「ああ、このまま消えてしまうのか」と不安になる。しかし、それを打ち破ったのは水の中で聞くような高皇産霊神の声だった。


《こちらは《波矢弖(はやて)》としよう。》


 くぐもって聞こえてくたのは、自らの秘された名前だ。そして、ややあって自らが何かの水溶液の中にあって、管に繋がれているのだと気がついてハッとする。そして、同時に自分が「造られた存在」であると思い知らされてゾッとする。


(これは過去の記憶? それとも――?)


 あまりに生々しい光景に、実は目の前のこの状況が現実で、今までの記憶が夢だったのではないかとさえ思えて心乱れる。


 異変を感じたのだろう、高皇産霊神の朧気な人影が、ゆらりと動く気配がする。そして、白、薄黄色、瑠璃色、それから翡翠色の光へと変わる霞んだ世界は逃げ場もない。


《波矢弖よ、お主は(すさ)の神に似つかわしい。》


 やがて高皇産霊神のくぐもった「震え」という声とともに、目の前を覆う光はそれぞれに収斂していき、四つに分かれる。そして、ぽちゃりと音がして目の前に落ちてきた翡翠色の細長い琴軋がほのかに光り出す。


《ゆらゆらと 震え――。》


 高皇産霊神の声とともに翡翠色をした光が目の前に溢れ、素戔嗚尊は思わず目を閉じる。そして、再び目を開けた瞬間、榛摺色の髪をしたどこか懐かしい(ひと)がその胸元から這い回る蔓に飲み込まれようしている姿が目に飛び込んできた。


 佐須良(さすら)――。


 不思議と目の前の娘の名前が分かる。彼女は、はらはらと涙を零し、自分に何かを懸命に呼びかけていた。


 助けなくては――。


 それは半ば本能的な感覚で、彼女の元へ向かおうと手を伸ばす。しかし、その伸ばした手にべったりと血がついているのを見て、不意に自分が死の淵に立っていることに気がついた。


 ああ、そうだ。自分は彼女を助けようとして天羽々矢を受けたのだ。


 ぽたり、ぽたり――。


 咄嗟に薙ぎ払い、心の臓への直撃は免れたものの、天之麻迦古弓で放っただけあって、深々と脇腹を穿ったのだ。


 それでも、素戔嗚尊の意識は自らの怪我の手当よりも、目の前の彼女を助ける事だけに向けられていて、這うようにして彼女の元へと向かった。


「今・・・・・・、助ける・・・・・・ッ。」


 鉛のように重い身体を引き摺り、彼女の元に辿りつく頃には、蔓は彼女の神威を糧にその一つ一つが腕のように太いものへと変わっていて、腕の力だけでは引き剥がすことが出来なくなっていた。


「佐・・・・・・須良・・・・・・ッ。」


 名を呼んでも彼女は、もう声を出せないのだろう、僅かに唇だけを動かし、満足したかのように微笑むと、そのまま短く息を吐いて、開けていた目を伏せてしまった。


「駄目だ・・・・・・、佐須良、息をしておくれ・・・・・・。」


 やっと触れられた彼女は、まだほの温かく眠っているように見える。


 その胸元にあるのは、あの翡翠色の琴軋だ。


 次の瞬間、彼女の姿は砂の城が崩れるかのように掻き消え、淡い瑠璃色の光を放って、ふっと消えてしまった。


 手元に残ったのは翡翠色の琴軋だけ――。


 全てを目の当たりにした素戔嗚尊は、自分の内側から空恐ろしいまでの破壊衝動が湧き上がるのを感じた。


 滅べ――。


 全て滅んでしまえばいい――。


 今、この瞬間(とき)に――。


 嘆きなど生ぬるい。傷付いた身体は人の姿を保てなくなり、疾風(はやて)と化して、四方八方へと渦巻いた竜巻が、愛しき(ひと)を糧に育つ大樹を吹き飛ばさんと螺旋状に舞い上がる。


 憎い――。


 愛する者を奪った全てが――。


 バラバラに吹き飛んでいく、自身の魂の欠片を見上げながら、消え去るのを覚悟して目を伏せれば、泣き叫ぶようにして「震え」と男の声が聞こえてくる。


 ゆらゆらと、震え――。


 五芒星と六芒星の重なった蓮の紋が紫色の光で生み出され、「盟約に従い、八狐に命ず」と声がこだまする。


「この地を守護せし精よ、我が身を糧に彼が()をこの地と・・・・・・。」


 産霊し給え――。


 途中から祝詞を上げる声は神皇産霊神のものへと変わっていき、揺さぶり起こされるような感覚がして、急激に現実世界に引き戻される。


 素戔嗚尊は神皇産霊神に「はい、お終い」と言われても、しばらくの間、自分が誰なのか分からなくなって惚けた顔をしていた。


「神皇産霊神・・・・・・?」

「ああ、そうだよ? 気分はどうだい?」

「なんというか、最悪の気分だ――。」

「さもありなん。なにせ無理やり魂解(たまほど)きをしたからね。しっかり産霊(むすび)し直したけれど、しばらくは神威を使わない方がいいよ。」

「しばらく、とは?」

「最低三日、可能なら一週間ほどかな。」


 そして、神皇産霊神は何度も夢で出てきた翡翠色の琴軋を見せてくれた。


「これは龍の琴軋。昔、私の知り合いが大切な姫の守りとして与えた物だ。よもやお主の魂の中に増幅器代わりに組み込まれているとは思わなかったが、龍の君の神威は扱いが危ないし、お主の身体にも負担が掛かるからね。いい機会だから外させて貰ったよ。」


 そして、神皇産霊神は徐ろに髪に挿していた湯津爪櫛をとると小さく「解」と唱える。すると、湯津爪櫛の内からは五穀の姫神と同じような小さな男神が生じて素戔嗚尊の前に跪いた。


「これは?」

「この者たちはお主の(なげう)った勾玉とお主の神威から紡いだ者たちだよ。寝首を搔かれないように守りを固めたいのだろう?」


 そう言って神皇産霊神が返してきた首飾りには、大鴉の飾り羽根ひとつだけが残されていて、確かに天津神の証である勾玉は外されていた。


「たしか、天の勾玉は四つだったように思うのだが?」


 素戔嗚尊が訝しむと、神皇産霊神は「高皇産霊神が命じれば、あちら側に覆るやもしれぬから、その龍の琴軋からも産霊しておいたのだ」と笑う。


「琴軋から生まれたものは高皇産霊神に縛られていないからね。あやつがお主の秘された名を騙り、この者たちに裏切るように命じたとしても、この子だけはお主に味方するだろう。」


 それを聞くと素戔嗚尊は小さな四柱の武神に「お前たちは四方へと散り、この地を広く守護せよ」と命じる。そして、龍の琴軋から生み出した一人には「お前はお前の心に従え。ある時は鉾の穂となり、またある時は樋となり、お前が守りたいものを守るが良い」と告げた。


「随分とおかしな(めい)を下すんだね。」

「そうか?」

「先程までの剣幕だと、自分を裏切るなとか、命を賭しても守れ、とか言うんだろうと思ったのに。」


 それを聞くと素戔嗚尊は「その琴軋は俺のものではないからな」と答える。


「夢を見た。その琴軋は龍の君のものであろう?」

「ああ、そうだね。だが、他の子は一度、高皇産霊神に縛られたら戻ってくるかどうかは分からぬという状況だというのに、お主はせっかく与えられたこの子の主にならないのかい?」


 神皇産霊神は「こんなにお得な事はないのに」と不思議そうにするから、素戔嗚尊は「荷が重すぎる」と返した。


「そうかい? まあ、良い。これは私が預かっておくよ。いずれ、この子もこれもお主の元に戻るとは思うがね。」


 そして「そろそろ大山祇神の所に寄らねばならぬ」と大鷺の姿の脚摩乳命を呼ぶ。


「ああ、そうだ。お主は、先程の五穀の姫神を嫁に貰うことになるからよろしくな。」


 振り返りざまに神皇産霊神が微笑んで言うから、素戔嗚尊は「は?」と形の良い眉を顰めた。 


「お主、一体、何をした・・・・・・?」

「なに、お主と五穀の姫神との縁を結んだのさ。あいにく咄嗟だったゆえ、八姫いるうち、誰と結んだのかまで分からないのだが。」

「おい・・・・・・。」

「天津神としての神威を保つ勾玉と、元々の神威を増幅している琴軋をはずしたお主を産霊し直そうと思ったら、お主の神威だけではたりなかったのだ。緊急事態だったのだから仕方あるまい?」


 神皇産霊神は「天津神ではなくなったが、その膨大な力。土地に縛り国津神とせねば、魔物と化しても知らぬぞ?」と悪びれずに言うから、素戔嗚尊はあからさまに嫌そうな顔をした。


「神皇産霊神よ、お主と言うやつは後先を考えぬのか・・・・・・?」


 素戔嗚尊が頬を引き攣らせ尋ねれば、神皇産霊神は目を逸らし「この地は大宜都比売神を失い、悪しき物が跋扈しよう? それゆえ、五穀の姫神を守る神として、結局は力ある神と(えにし)を結ばねばならなかった」と説明する。


「それゆえ、双方良しと思っての判断だ。それに八姫はどれも器量良し。独り身で好き勝手しておるお主が、土地に縛られ落ち着けば、天照大神との間に挟まれて気を揉んでいる大山祇神も安心しよう。」


 そう言って神皇産霊神は五穀の種の入った小さな小袋を手渡す。


「それはお主を守る御守りだ。決して無くすなよ?」


 そこに脚摩乳がばさりと大きな羽音を立てて庭に降り立つ。


「それじゃあ、私は失礼する。」


 逃げるようにして神皇産霊神は「三日間は大人しくしているように」と庭に降りていくと、ふわりと大鷺の背に乗った。脚摩乳命は髭を伸ばした怪しい男神が残ると知ると、不満そうにばさりと翼を一度動かす。


《神皇産霊神よ、あの客人(まろうど)の神をここに留め置くのでございますか?》

「ああ、悪いが、しばらくここに置いてやっておくれ。」


 神皇産霊神は脚摩乳命を宥めながら、「あの子は悪しき神ではないよ。むしろ五穀の姫神を守ってくれる良い神だ。何か困った事があればあの子を頼ると良い」と告げる。


 その時の話を脚摩乳命も、素戔嗚尊も、神皇産霊神の言葉を忘れたわけではなかったが、片方は大鷺、片方は身なりの整っていない状態だったから、二人とも再会した時にはお互いにそれと気づかなかった。


 ◇


 そして、現在。高天原から逃げ出した素戔嗚尊は、奇稲田姫を背負い、人の姿をした脚摩乳命と、その妻、手摩槌命の後を追って山を登っている。


 辺りは夜でもないのに、ぐんぐんと暗くなっていく。今は口や鼻を布で覆い、辛うじて何とかやり過ごしてはいるものの、火山灰はずんずんと降り積もる。


 視覚は酷く悪く、四人は山の中を進むのに難儀していた。


 それでも脚摩乳命と手摩乳命は火山灰で汚れるのも厭わずに背丈に近い草を掻き分け、灰をあまり被っていなそうな辺りに、奇稲田姫の傷付いた足に使えそうなドクダミの葉が残っていないか、目を光らせながら山道を進んでいた。


「奇稲田姫が大宜都比売神の娘――?」


 一連の話を聞いていた素戔嗚尊が驚きの声を上げる。一方の脚摩乳命は、歩みを止めぬまま「左様にございます」と答えた。


 熱が出てきてぐったりとした奇稲田姫を素戔嗚尊は一度止まって背負い直す。脚摩乳命は片手を悪くしているのか、利き手の右手ばかりで草を掻き分けて、道無き道を更に進んだ。


「その方は葦原中国の民草のため、本来、里に生きる神です。それゆえ我らは山を出て、民草に混じって里に暮らしておりました。」


 初めは小さな里の小さな祠に、それから、姫が力を持ち始めると社に住み替えて、生きてきたのだという。


「大鷺や赤雁はどうした? このような事態。徒歩(かち)ではなく、空を行けばもっと早くに逃げられたであろう?」


 降りやまぬ火山灰の中、足を取られながら歩いているから、元から誰もが足取りは重い。しかし、素戔嗚尊の話を耳にすると、脚摩乳命と手摩乳命の足取りはガクンと遅くなった。特に脚摩乳命は警戒の色を露わにし、手摩乳命は困惑の色を露わにする。


「我らの本性をなぜご存知なのですか?」


 突如として厳しい表情で脚摩乳命が詰問してくるから、素戔嗚尊は面喰らう。


「五穀の姫神の守りをしていると言ったら、大鷺と赤雁であろう? それに大鷺にも赤雁にも会ったことがある。」


 そして、素戔嗚尊が「たしか娘は八人いたはず。他の姫神たちはどうした?」と尋ねると、脚摩乳命は「お主、高皇産霊神の手の者か」とますます目をつり上げた。


「高皇産霊神?」


 素戔嗚尊に「惚けるな」と言うと脚摩乳命は片翼を失った大鷺の姿に変じる。素戔嗚尊は脚摩乳命の態度の急変にたじろいだ。


「いきなりどうしたのだ?」

《背負うた娘を返せ。我が本性を知る神は、神皇産霊神、大山祇神夫妻、そして、高皇産霊神の手の者だけだ。さすれば、助けてもらった恩義もある。命までは取るまいッ!》


 一方、手摩乳命も「どうか、年老いた我らから、その子まで召し上げるのはお許しくださいませ」と涙声で訴えてくる。


《手摩乳よ、高皇産霊神の手の者に話は通じぬ。我が盾となるゆえ、姫を連れて逃げよッ!》


 片翼とはいえ、威嚇してくる脚摩乳命の様子に素戔嗚尊は益々戸惑った。


「お主達の歩みでは、怪我をした奇稲田を連れて逃げきれまい? せめて、山を越えてからにしよう、・・・・・・って、くそッ!」


 脚摩乳命は完全に頭に血が上っているのか、素戔嗚尊の話を聞くことなく、鋭い嘴でざくざくと攻撃してくる。


「大鷺よ、落ち着けッ!」


 そう言いながら、素戔嗚尊が奇稲田姫を庇いながら何度かの攻撃を避けた頃、脚摩乳命は「おのれ、ちょこまかと」と、一声、大きく咆哮した。


 その声に流石に目を覚ましたようで、背中越しに奇稲田姫が「おもう様?」と驚いたような声を上げる。


「これは一体・・・・・・?」

「ああ、目を覚ましたか? ちょうど良い。何か鎮める手立てはないか?」


 素戔嗚尊が「お主の父を傷付ける気はさらさらないのだ」と言うと、奇稲田姫は「では、私を下ろしてくださいませ」と答えた。


「だが、今、下ろせば、あの鋭い嘴にやられやしないか・・・・・・?」

「頭に血が上っていらっしゃるようですし、私を下ろせば少しは耳を傾けるかと。ちゃんと自分の身を守る手立てはございますゆえ、一旦、下ろしてくださいませ。」


 そう話す奇稲田姫の口調は「二人を助けて欲しい」と言った時と同じように、凛として清々しいもので、素戔嗚尊は奇稲田姫の意思を尊重して、足場の比較的良さそうなところに、気を付けて彼女を背から下ろした。


《やっと娘を離す気になったか。さあ、姫や、こちらにおいで。》


 ばさりと大鷺が片羽根を広げる。しかし、奇稲田姫は、背丈が倍以上もある大鷺をキッと鋭い視線で見上げると、その手弱女な姿からは想像出来ぬほど厳しい口調で大鷺を糾弾した。


「おもう様、お助けくださった恩人に何をなさっていらっしゃるのですッ!?」

《姫よ、その男神は危険だ。我が正体を知っておった。》

「危険? 今はおもう様の方が、余程、危険でございましょう?」

《だが・・・・・・ッ!》

「これ以上、須佐の兄様に何かなさるおつもりなら、この狭姫、赦しませぬ。」


 その言葉に脚摩乳命は固まり、手摩乳命も「須佐の御方?」と息を飲む。


 一方、奇稲田姫は素戔嗚尊に振り返ると、足が痛むだろうにニコリと笑って見せた。


「背負われてようよう気が付きましたこと、お詫び申し上げます、須佐の兄様。」


 足脂汗を掻きながらも奇稲田姫は「重ねて父の非礼もお詫び申し上げます」とその場に伏せる。


「兄様が高天原に捕らえられた神皇産霊神より聞き及んでおりましたが、ご無事のご帰還、お慶び申し上げます。」


 そして、奇稲田姫は「これを神皇産霊神からお預かりしております」と、いつか見た翡翠色の琴軋を懐から取り出して手渡す。


「幼き時にお別れしてから、早、幾年(いくとせ)。この琴軋をお戻し出来てようございました。これで私もいつ八岐大蛇の贄と捧げられても、思い残すことはありませぬ。」

「八岐大蛇の贄・・・・・・?」

「はい。毎年、天変地異が起こる中、何処かの葦原中国の民草が高天原にその原因と解決方法を尋ねたようなのです。」


 そして、度重なる天変地異は貴き日の神である天照大神を喰らおうとする悪しき神と、八岐大蛇が目覚めようとしているからだと聞かされたらしい。葦原中国の民草はその話を聞くと恐れ慄き、天照大神をこぞって社に祀り、代わりに五穀の姫神に贄としてその身を捧げるよう強要してきたという。


「高皇産霊神が《うら若き姫神を、龍の君の眠る山に捧げよ》と葦原中国の民草に託宣したのです。もちろん、我らとて《そのような事は無駄だ》と言いました。しかし、いくら国津神である我らが違うと言っても、彼らは《別天津神であられる高皇産霊神が託宣ぞ》と聞き入れて下さらなかったのです。」


 奇稲田姫は悔しそうに顔を歪め、できるだけ感情をこらえて話していたが、他の姫達との別れの時を思い出したのだろう、横で話を聞いていた手摩乳命はうわっと泣き出しその場に泣き崩れた。

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