七つの隣人 結び
まず、礼を言わせてほしい。この本を書くという大役を、入団五年やそこらの若輩に任せてくださった旅団長クローネ・ディ・バーガンディア殿に。初めての驚きが冷めないうちに書け、というあの一言がなければ、私は一生、帳面の隅に走り書きを溜めるだけで終わっていたと思う。使節のたびに私を荷物ごと引き受けてくれた先達たち、百五十年ぶんの帳面を守ってきた書庫の歴代の記録係たちにも、頭が上がらない。本書の中身の半分は彼らの足で稼がれたものであり、私はそれを書き写したにすぎない。
そして、七つの隣人たちに。風車を吹いて笑った止まり木のセン。私の結びを肌に留めてくれた書庫のオルセ。頭の花を開かせて蜂蜜を喜んだダーナヘルの姉妹たち。茶菓子を一つ多く数えてくれたテルバ。半日かけて一語をくれた斜面の古老と、巫女のモーラ。名乗らなかった、あの黒い帽子のひと。そしてユネ。会ってくれたこと、話してくれたこと、若輩の無遠慮な問いを笑って許してくれたことに、この場を借りて礼を言う。
読者への言葉は、短くて済む。本書で書いてきたことの芯は、第一章に尽きるからである。七つの民は、私たちの遠い親類である。山の風が妙に行儀よく感じられた朝、真っ白な肌の子供を市で見かけた日、夕暮れの辻に黒い帽子が立っていた刻。もしいつか彼らと行き合うことがあったら、恐れず、欲をかかず、遠い親戚に道で会ったときのように、会釈をひとつしてもらえたらと思う。彼らはこちらの暮らしに立ち入ってこない。ならばこちらも、彼らの役目に立ち入らず、ただ隣人として敬えばいい。この本を読み終えた誰かが、いつか辻の祠の前で少しだけ頭を下げてくれたなら、書き手としてこれ以上の褒美はない。
最後に、ユネのその後を書いて、筆を置くことにする。あれから私は、旅の行き帰りに都合をつけては、あの川辺の村に寄るようになった。土産は対岸の町の焼き菓子と、旅先の話が一つ二つ。それで彼女は十分に喜ぶ。この本を書きはじめたときも、真っ先に彼女に報せた。というより、報せる前から知っていた。桟橋で顔を見るなり、書くことになったのね、いい本になる、と先に言われたのである。読んだのかと訊けば、いつかね、と笑う。
この結びを書きあぐねていたときも、私は村へ行った。どう締めるべきか、あなたはもう知っているのだろうと水を向けると、ユネはしばらく考えるふりをして、それから首を振った。知っているけれど、教えない。あなたが自分で書いたものを、わたしは思い出しているんだから、と。だから、この結びは私の思うとおりに書いた。彼女の記憶と一字も違わずに、である。
彼女はいつか十歳の姿になり、私のことも含めた過去を忘れ、やがて赤子になって水に還る。その日、桟橋の先で彼女を抱いているのは、白髪の交じった年寄りの私だと、彼女は言う。ならば私の仕事は決まっている。その日まで健やかに年をとり、焼き菓子を提げて、川辺に通い続けることである。七つの隣人と付き合うのに、大それた支度はいらない。会いに行くこと。約束を守ること。私がこの旅で覚えたのは、結局そのふたつだけであった。
王国歴1656年 聖燭の月
吹き流れる知恵の収集旅団 記録係
ユーリ・ロ・ヴェンデル




