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【6万PV 感謝感謝!】記憶を失くした少女は、それでも生きていく。  作者: あまね


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選んだのではなく、導かれた道

結局、あの二人の男は、ジルさんたちの知り合いじゃなかった。


「こんなところで知り合いに会ったなんて、村の外って思ったほど広くないですね~」


そんなことを言ったら、お兄さんたちに爆笑された。

あの二人はどうやら街の商人で、隣国に向かっているところだとジルさんは推測していた。


こういう場所で、こういう人に会うと、怪しいかどうか確認するために、騎士として声をかけるという。

あの男が私に渡したのはただの商品で、私からお金を受け取るつもりだったのだと、お兄さんたちは話していた。


「君、世間知らずすぎる」

ファビアンさんは呆れた顔で言った。


「本当だな。一人でトレストで暮らすよりも、俺たちと一緒に王都まで行ったほうが安全だぞ」

マーティスは追撃してきた。


「ハハハハハッ!」

ジルさんの笑いは、まだ止まらない。


「ふふふ。り、リーマ……ふふふ。安心して、一緒に王都まで、行こう……ふふふ」

カイテルさんは肩を震わせながら言った。

話すか、笑うか、どちらかにしてほしいものだ。


……世間知らずでごめんなさいね。




お兄さんたちと一緒に行動すると、私とリオとリアだけの時よりも、移動が速い。

なぜかというと、絵描きと野菜採りという名の寄り道が、あまりできないからだ。


最初の頃は、珍しい薬草を見つけるたびに――

「うわっ!ねぇお兄さん、見て見て!」

私は植物に指をさしながら、勢いよく話し始める。


「この桃色、すごくきれいでしょう?

夜になると光るんです!

ほらほら、めちゃくちゃ美味しそうじゃないですか?

でも食べちゃったら、下痢になっちゃうみたいです!

私は実際に食べたことがないから、本当に下痢になるかどうか分かりませんけど、

お兄さんたちが気になるなら、遠慮なく食べてみてくださいね!

あっちにも生えていますから、お兄さん四人分、全然足りますよ!」


お兄さんたちにその植物のことをぺらぺらと解説しながら、私はその植物に飛びつき、イキイキと絵を描き始める。


「何が『足りますよ』だよ。下痢だろうが」

誰かが、ぼそっと呟いた。


「ふふふふっ」

誰かが、こらえきれずに吹き出した。




その植物を描き終わり、しばらく歩いたところで、

少し離れた場所に、また別の珍しい薬草を見つけた。


「ぎゃあっ!なにこれなにこれ!?」

私は思わず声を上げる。


「お兄さん!

これ!

おじいちゃんの画集でしか見たことないですよ!

そもそも、おじいちゃんも『実物を見たことがない』って言ってました!

これ、すごーーーーーーーーっく珍しいですよ!

見た目はあまり可愛くないけど、焼くとめちゃくちゃ美味しいらしいんです!

珍しいのに美味しい!

もはや高級食材です!

こんなところにあるなんて、興奮しますね!

お兄さんたちもそう思いません!?」


私は興奮したまま、息もつかずに話し続ける。


「今日の晩ご飯に採りますから、ちょっと待ってくださいね!

お兄さんの分も採りますから、安心してくださいね!」

そう言って、私はその植物を採る前に、念のため絵を描いてから、丁寧に採取した。


「……今、ホワイトウルフたちでさえ、ため息をついたぞ」

誰かが、ぼそりと呟いた。


「ふふふふっ」

誰かが、また吹き出した。




私が絵描きと採取を終え、再び歩き出そうとした、その時――


「はっ!お兄さんお兄さん!」

「はぁ……進まねぇ……」

誰かの力尽きた呟きが背後から聞こえた。


「あ、あ、あ、あれはマジックマッシュルームです!」

私は指をさして声を上げる。


「見えますか?

あの紫色のキノコです!

あれはマジックマッシュルームです!

すごくきれいでしょう?

でもすごい猛毒のキノコですよ!

触ったら秒速で死んじゃうみたいです!

ふふふ、せっかくだからもうちょっと近くで見よう〜」


私はマジックマッシュルームを、これまで一度しか見たことがない。

あの時はおじいちゃんと一緒で、近づこうとした瞬間、全力で止められたのだ。


でも今は――

おじいちゃんがいない!

チャンスだっ!


私が一歩、マジックマッシュルームに近づこうとした瞬間、

「ちょっと!このバカ!自分で猛毒って言ったんだろう!?」

「い、今何をしようとしてんだ!?」

「自殺はやめろ!」

「リーマ!近づくな!」


おじいちゃんの代わりに、今度はお兄さんたちが全力で私を止めに入った。


「……えっ?

わ、私はただもう少し近くで見たかっただけなんですけど……。

私だって、死ぬつもりはありませんよ……?」

「それでもダメだよ。わかった?」

カイテルさんはそう言って、私の頭をぽんぽんと撫でた。

「は、はい……」




私はマジックマッシュルームの観察を断念し、再び歩き出した。

しばらく進んだところで、今度はちゃんと役に立つ植物を見つけた。


「あっ、お兄さん!」

「今度はなにっ!?」

ほぼ反射で返された声に、私は負けじと説明を始める。

「あの植物は回復薬の材料です!

解熱剤としても使えますから、絶対役に立ちますよ!

採りますから、ちょっと待ってくださいね〜」

そう言ってから、私はふと思いついたように付け加える。


「あっ、お兄さんたちは急いでるなら、先に行ってもいいですよ。森の出口で会いましょう!じゃ!」

「じゃ、じゃねぇよ。君、一人で森の出口まで辿り着けるわけないだろうが……」

力尽きたような声が、背後から聞こえた。


しばらくの沈黙のあと、誰かがはっきりした声で言った。

「俺はリーマを待つよ」




回復薬の材料を採取し、再び歩き出した。

そして、その直後――

「お、お兄さん!あああああの花っ――!きゃっ!痛いっ!」


私がその花に飛びつこうとする前に、マーティスさんに首根っこを掴まれてしまった。

どうやら、マーティスさんはついに我慢の限界だったらしい。


か弱い女の子の私にも容赦なく、首根っこを鷲掴みにしたまま歩き出し、強引に私を前に出す。


「ちょ、ちょっと待ってください!

あ、あれはですね!

すごく!

すっっっごく珍しい花なんですよ!

い、一生に一度、見られるかどうかの花なんですよ!

ちょっとだけ!

マーティスさんちょっとだけ――!

って痛い痛い痛いっ!いたーーいっ!!」


私の必死の懇願は、ことごとく森に吸い込まれていった。


「あ、あの花は本当に珍しいですよ!あの花を無視するなんて信じられません!」

「わかったから、早く歩け」

「もうーーーーーーーっ!いつかおじいちゃんにお土産話にできるかもしれないのにっ!」

「わかったから、早く歩け」

「私が七十歳のおばあちゃんになっても、二度と見られないかもしれないのにっ!」

「君、いつもこんな調子で森を歩いていたのかよ。だから十日間も森の中を彷徨う羽目になるんだな。納得したわ!」

「……」


私はマーティスさんにぷんぷん怒り、頬を膨らませて、もう口をきかないと心に決めた。

チラッとマーティスさんを睨み、ぷいっとそっぽを向いた。


「痛っ!」

私の頭にいきなりげんこつが落ちた。

けど、別に痛くない。


「大げさだ。痛くないんだろう。人の話を無視するな」

「騎士なのに、か弱い女の子に暴力を振るうとか騎士失格です!

これは騎士が一般市民にすることですか!?」

私は振り返って、指を突きつける。

「おいっ!暴力じゃないだろう!痛くなかったんだろうが!」

マーティスさんが声を荒げた。

「する側とされる側の気持ちは全然違いますよ!」

「大げさだ!俺は軽く叩いただけだろう!」

「じゃあ、リオにマーティスさんを”軽く”叩かせてみてもいいですか?」

「……」

一瞬の沈黙。

「わかったわかった。頭を叩いて悪かったよ」

マーティスさんは観念したように息を吐いた。


「ふーん」

私は腕を組み、思案気に考える――ふりをして言う。


「まあ、私は優しいから、今回は許してあげてもいいです。二度とありませんからね」

「……調子に乗るなよ」

マーティスさんが、ぎょろりと私を睨んだ。


こわっ!

今の顔、ものすごく怖い……。

調子に乗りすぎたか……。


その様子を見ていた他のお兄さんたちは、少し後ろで――

盛大に爆笑していた。




村を出る前に、おじいちゃんはデリュキュース国のことを少しだけ教えてくれた。

デリュキュース国は、六つの大きな街で構成された国だ。


中心にあるのが王都――プロメル。

王族、貴族、商人、あらゆる人が集まる巨大な都市。


その王都を囲むように――

北にヘラクレム。

東にバンデ。

南にマラーヤ。

南西にドラウネ。

そして、西にトレスト。


頭の中で、おじいちゃんが描いてくれた地図を思い浮かべる。

私にできそうな仕事といえば、おそらく薬の仕事ぐらいだ。


じゃあ、どの街に行けば、薬の仕事ができるのか――

それを、ずっと考えていた。


うーん……

何でもありそうなのは、やっぱり王都なのかな?

でも、遠すぎる。

いつか村に帰る時、大変なんだよね……。


東のバンデは論外だ。

トレストの反対側だし、王都より絶対に遠い。

南のマラーヤに行くなら、途中でドラウネを通らなければならない。

それなら、いっそドラウネに行った方が近い気もする。


……そう考えると、やっぱり一番楽なのはトレストだね。

トレストは人気のある街じゃないかもしれないけれど、人間は必ず薬を必要とする。

なら、薬の仕事だってきっとあるはずだ。

お願い。

薬の仕事がありますように……。

お願い。

あってくれ……。


「何を考えているのか?」

いつの間にか、私の隣を歩いていたカイテルさんが声をかけてきた。

どうやら、私の真剣な顔に気づいたらしい。

「うーん……どの街に行くかとか、街でどうやって仕事を見つけるかを考えていました。そもそも、街ってどんなところですか?全く想像できなくて……村より、どのくらい大きいですか?」


「リーマの村がどのくらい大きいのかわからないけど」

カイテルさんは少し考えてから答える。


「村よりは、かなり大きいよ。もし行き先を決められないなら、俺たちと一緒に王都に行こうよ。王都なら仕事がたくさんあるし、仕事のことで困ることはまずないからね」


「うーん、でも王都が遠すぎる……」

「ドラゴンに乗れば、一日もかからないよ」

「それでも……遠すぎると、いつか村に帰る時、大変……」


「でも王都ならリーマが一人じゃなくて、俺もいる。何かあったら俺がすぐ助けられる。だから、王都の方が絶対にいいよ」

カイテルさんは、当たり前のことのように言った。


「……確かに……知っている人がいたほうが、安心はしますけど……でも、迷惑なんじゃ……」

「そんなことを考えないで。全然、迷惑じゃないよ。

まずは王都に行って、一緒に考えようね。

絶対大丈夫だよ。

俺が手伝うから、だから安心してね」


「……王都はトレストよりどのぐらい大きいですか?」


「うーん、そうだな」

カイテルさんは少し考えてから答えた。

「大きさだけで言えば、三倍ぐらいかな。でも賑やかさはトレストの十倍はあるよ。トレストは王都から遠いから、人の行き来も少なくて、あまり賑やかじゃないんだ」


「そうなんですか……?じゃあ、トレストには仕事が少なそう……」

「王都の方が、トレストより仕事は絶対に多いよ」

「あっ!そうだ!

大事なことを思い出しました!

王都の宿って、高いですか?

一応、おじいちゃんから少しお金はもらったんですけど……

王都の宿だと高そうだし、足りないかも……

だったら、トレストの方がいいかも……」


「宿のことは、気にしなくてもいいよ」

カイテルさんは、あっさりと言った。

「俺の家に住めばいいよ。部屋もたくさんあるし、両親もいるから心配いらない。両親もリーマに会えたら、きっと喜ぶと思うよ」


「……」

カイテルさんは、本当にありがたい提案をしてくれた。

やっぱりカイテルさんはすごく優しい。


初めて会ったとき、カイテルさんにひどいことを言ってしまったのを思い出して、恥ずかしくなる。

カイテルさんは私の頭を撫でた。


「安心して。王都で絶対うまくいくからね」

私を心配させないように、慰めてくれた。


――完全に妹扱いである。


村でも私は、孫扱いか、娘扱いか、妹扱いばかりだった。

だからだろうか。


この感覚がなんだか懐かしくて、無性に村の人たちに会いたくなってきた。


……だがしかし。

なぜか、他のお兄さんたちが、私とカイテルさんを見て、急にニヤニヤし始めた。


さらに、リオとリアまで突然、

『ぐるうううッ!』(イナカムスメカラ、ハナレナサイッ!)

と、低い声で唸り始めた。



私は――

ついに、リオとリアに「田舎娘」と呼ばれてしまった……。

完全事実だから、反論できない……。

……っていうか、どうしてみんな一斉に?


「ありがとうございます。カイテルさんはすごく優しいです」

私はそう言ってから、少しだけ言葉を選んだ。

「でも……カイテルさんに迷惑をかけたくないですから、宿に泊まりますよ」


「全然迷惑じゃないからね」

カイテルさんは微笑んで、また私の頭を撫でた。



……やっぱり、完全に妹扱いである。


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(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾

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