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【6万PV 感謝感謝!】記憶を失くした少女は、それでも生きていく。  作者: あまね


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無臭無色の影


似顔絵を描き終わり、七人に見せると、みんな口を揃えて「こいつだ!」と叫んだ。


似顔絵担当のニィルさん、すごい~。

あの説明だけで絵を描けるなんて、もはや天才かも。

騎士になっていなかったら、今頃は有名な絵描き師になっていたかな。


……おっと、そんなことより。


「カイテルさん、あのう……七人が作った薬は麻薬だけですか?……他の薬はまったくないんですか?」

小声で尋ねると、カイテルさんは即座に七人に質問した。


「おまえらが作った薬は麻薬だけか?他にはなかったのか?」


一瞬前まで優しかったカイテルさんも、瞬時に鬼の形相になった。

……人って、本当に一瞬で人格変わっちゃうのね。


「そ、そうだ。麻薬は三種類あった。俺たちが作ったのはそれだけだ」

麻薬団のリーダーが、ビクビクしながら答えた。


カイテルさんが私を見て、視線で「どうする?」と問いかけてくる――

たぶんその意味――


私は少し首を傾げた。


……うーん。


……カレル森の小屋にはイブニングローズや回復薬の材料もあったけど……回復薬は作らなかったのかな。


普通の回復薬なら気にしない。

けれど、あれは少々訳ありのものだ……

服用前に万全の準備をしておかないと――少々危ない回復薬なんだよね。


「えーと……ほ、他にあるはず……」

また小さな声でカイテルさんに言った。


「リーマ、遠慮しないで。知りたいことがあったら、あいつらに聞いてもいいよ。

この取り調べの参加は、お父様から許可ももらっているからね」

カイテルさんは私の手を優しく握り、頭をなでてくれた。


「リーマちゃん〜、聞きたいことがあったら全然聞いてもいいよ。なんでも大丈夫だよ〜」


アレックスも相変わらず優しい口調で言った。

人って瞬時に人格変わるのね、ほんとに……。


「……はい、えーと……あなたたちは本当に他の薬を作らなかったの?回復薬は?」


「かいふく……やく?」


「そんなのあったっけ……」

七人は首をかしげて考えた。


「紫色の薔薇が小屋にあったんじゃない?あれは何に使っていたの?」


「むらさきいろの……ばら」


「あっ、思い出した。あのきれいな花だよな?

えーと、あれは何の薬なのか分からんけど……

何ヶ月か前、あの商人が材料と説明書を持ってきてさ……」


一人は似顔絵を指さしながら話を始めた。

「俺たちは説明書通り作ったけど、ほとんど失敗したんだ。

……あっ、でも一本の小さな瓶だけは作れたけど、あの商人が持っていったよ」


あの回復薬は材料こそ少ないけど、

煮たり、煎じたり、濾したりと工程が多い。


手順が面倒で、植物や調薬の知識がない人には簡単には作れない。

一本だけ作れたのも、奇跡みたいなものだ。

すごいなぁ……。


――しかし。


「どうしてそれが成功品だとわかるの?調薬の知識もないし、試してもいないでしょう?」

「俺たちにはわからん。ただ作ったものを全部あいつに見せたら、あの一本が成功品だって言われたからさ」

「……なるほど……じゃあ、あの商人には調薬の知識があるの?」

「さあね。無臭無色ならいいんだって言っていた……植物の知識はなさそうだけど」

「なるほど……」


つまり、あの回復薬じゃない可能性もあるのね。


……ふぅぅ。

ちょっとほっとした。


あの回復薬はいいものだけれど、準備なしで使うとちょっと危険だもんね。

でも、私が対処できるから、誰が服用したか分かっていれば大丈夫だ。


……よし、よし。


「あっ、俺も思い出した。透明な液体のやつだ。無臭無色で、何の薬かまったくわからん」

「そうなの?何に使うか言ってた?」

「いや、全然……一本しか作れないのかって俺たちに怒鳴って……その一本を持って行った」

「もっと作れって言われたから、何度やってみたんだけど……あの一本だけ成功したんだ」

「……そうなのね。わかった。ありがとう」


七人は本当に何も知らなさそう。


……あの一本の回復薬は、いったいどこにあるのやら。


私はジルさんたちに頷き、ジルさんはそのまま取り調べを続けた。

しばらくして取り調べは終了した。


……初めての取り調べは意外と……もやもやしたものだった。




やがて、騎士たちが七人を会議室から勾留場に連れていった。

会議室にはジルさん、カイテルさん、アレックスさん、ザインさんと私だけが残っていた。


「リーマ、あの回復薬はどうしたのか?」

カイテルさんが尋ねた。


「あの回復薬はとてもいいものなんです……

でも、使う前にしっかり事前準備しておかないと、逆に危険なんです。

誰の手にも渡っていなければいいんですが……」


「そうなのか?……でも回復薬だから、害はなさそうだな。一応、アーロン大臣に報告しておくよ」

ジルさんは特に気にしない様子だった。


「……そうですね。何のためにあの七人に作らせたのかはわかりませんが……

おそらく、たぶん、大丈夫です……

飲んでも、すぐに死ぬようなものじゃないですし……」


「回復薬のことはあの商人から聞き出すから、心配しないで。屋敷に送るね。これから勉強するだろう?」


カイテルさんは優しい笑みを浮かべた。

この笑みはいつも私を安心させてくれる。


「は――」


「じゃあ、俺も一緒にリーマちゃんを送るね〜。心配しないでね〜」

「私も送るね〜。リーマちゃんは安心して勉強してね〜。なんなら私も一緒に勉強しようか?」


私はまだ返事を終えていないうちに、アレックスさんとザインさんに遮られてしまった。


カイテルさんはため息をついた。


「……アレックス、ザイン。おまえら、そろそろ諦めろ。

どうせ一生叶わねぇ。

俺が絶対におまえらに渡さねぇから」

カイテルさんがジロリと二人を睨んだ。


「はぁぁぁぁッ!?

おまえ何様だ!?

叶うかどうかまだわからんだろうが!

そもそも決めるのはおまえじゃねぇ!」


アレックスさんはうるさいほどの声をあげ、カイテルさんを睨み返した。


「そうだそうだ!

決めるのはおまえじゃねぇよ!

俺は絶対におまえなんかに負けねぇ!」


ザインさんもカイテルさんを睨み返した。


……さっきまで仲良さそうだったのに。


私はジルさんに近づき、袖口をちょんちょんと引っ張って小声で聞いた。


「じ、ジルさん……

どうしてカイテルさんとアレックスさん、ザインさんが急に喧嘩してるんですか?

やっぱり元々仲が悪いんですか?」


カレル森で一緒に捜査したときから、そんな雰囲気だったもんね。


「ははははっ!」

ジルさんは突然爆笑し始めた。


「いやいや、別に仲悪くないよ〜。むしろ仲良いよ〜。

最近はあいつらの狙い者が同じ者になっちゃっただけだよ〜」


「……なるほど?……その狙い物って何ですか?

喧嘩させちゃうぐらい、そんなにすごい物なんですか?

見てみたいですね。

どんなものなんですか?」


私は言いながら、カイテルさんとアレックスさん、ザインさんを温かい目で見守った。

お三方とも、頑張ってくださいね。


「はははははははっ!」


ジルさんは何も答えず、長机をぱんぱんぱんと叩きながら爆笑し続けた。


どうしたの、いきなり?


麻薬でも吸っちゃったのかしら?



あのときの私は――

その回復薬をまったく深く考えていなかった。


あとでどれだけ大事になったのか、もちろん気付くはずもなかった。





取り調べが終わったその夜。


私はお父様の執務室に立たされ、小さな麻袋を渡された。

受け取った瞬間、どこかで触ったことのあるような、ないような感触がした。

不思議に思って、そっと振ってみると――


――ちゃりん〜。

という、聞いたことがあるような、ないような音がした。


中身を確認したら、数枚の硬貨が入っていた。


「……お金……?どうしたのですか?」


思わず首を傾げた。

今から買い物でも頼まれるのだろうか。


「今回の仕事の報酬だ。受け取りなさい」

お父様はいつもの優しい笑みを浮かべた。


「……えっ?……あっ、だい、大丈夫ですよ!私はただお手伝いをしただけで……」


「仕事をしたら、報酬がもらえる。これは当たり前なことだ。慣れなさい。

ただで働かせるわけにはいかないだろう?」


「えーと……でも……」


……報酬?

私にとって今回の仕事は、お父様たちへの恩返しのつもりだった。

お金をもらえるなんて、考えたこともなかった。

本当に受け取ってもいいのかな……?


今まで、メイソン家のみんなから、もらってばかりだったのに。

ほんの少し手伝っただけで、お金までもらえるなんて……

厚かましくないかな……?


「リーマ、受け取って」

カイテルさんが、そっと私の手を包み、麻袋を握らせた。


「お父様の言う通りだよ。仕事をしたなら、報酬をもらうのは当然なんだ」

そう言ってから、少し楽しそうに続けた。

「じゃあさ。今度の休みに、中央街に行こうか?

リーマが“初めて稼いだお金”で、買い物してみない?」


自分で稼いだお金で、買い物をする――?

……それって、なんだか。

ちょっと、かっこいいかも。


ぜひしてみたい!


……あっ、そうだ!

今度は、私はカイテルさんにお菓子を奢って、アクセサリーも買ってあげよう!


今までもらってばかりだしね!

麻袋の中をそっと確認すると、ざっと三百セルくらい入っていた。


どこまでカイテルさんに奢れるかわからないけど――


……そうしよう!



「は、はい!行きます!自分で稼いだお金で、買い物してみたいです!」


「ふふっ、了解〜」


カイテルさんは相変わらず優しい笑みを浮かべて、私の頭を、そっと撫でてくれた。


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