第二十三話 恋羽のうるさい心の声
家から近い、辛麺屋にパパの運転で来た。
帰りはまたママの運転なんやろな。
「空いてる席どーぞぉ~」
張りのある声がラーメン屋らしい。
座るなり、兄ちゃんがタブレットをとる。
お父さんより偉いんか、っていつも思える。
「私チャーハンでいい。明日も学校やのに、ニンニクあかんやん」
姉ちゃんはスマホいじりながらもっともらしいことを言う。
「そんなに臭い、気にするかぁ?輝、ビールと軟骨頼んで」
パパは軟骨を必ず頼む。
「ママはトマトラーメンの3辛にするわ」
「私もトマト、私は1辛で、チーズトッピングして」
兄ちゃんは自分のが決まらず、言われたものを先にオーダーしてくれた。
「お兄ちゃんはこういう時、優柔不断になるね」
ママは優しく言うけど、兄ちゃんやからやろうね。
私やったら“まだ決まらんの?”って煽るくせに。
ビールが一番にきて、その後すぐに軟骨がきた。
「ラーメン食べへんからチャーハンと唐揚げ、半分こしよか?恋羽も食うやろ」
パパが唯一の私の味方やって、しみじみ思うわ。
「俺は元辛の5でちぢれ麺にしよっと、餃子セットで~」
「輝、大盛にせんでいいの?」
「炭水化物取り過ぎたらパパみたいになるやん」
うわ、気を回した父親になんてこと言うんや、この親不孝もんっ・・声に出さんけど。
「アホやなぁ、男も女もちょっとくらい丸い方が健康的でいいんやぞ」
パパ、それどういう意味よ。
「え~でも、恋羽、おやつ食べるの減ったからか、ちょいスマートになったんちゃう?」
姉ちゃんが珍しいこと言う。
「恋羽も女の子やしなぁ、そら色気づくやろ」
「ちょっと、パパ、なにその言い方」
なんやねん、何で色気づくねん。
ママは相変わらず、子どもの恋愛関連の話は嫌がるなぁ。
オーダーしたものが次々とくると、会話が止まる。
ひたすら食べることに集中する家族・・なんか飢えてるみたいやん。
会計しているママを置いて、4人が先に車に向かう。
パパは助手席に乗り、姉ちゃんと兄ちゃんは車に乗るなり、スマホをいじりだす。
「はぁ、美味しかったぁ~、あ、臭うから窓開けて」
ママが運転席に座るなり言ったセリフに慌てて姉ちゃんが窓を全開にする。
「恋羽、そっちも開けてぇ~匂いが染みつくやん」
寒いのに……。
家に帰って、姉ちゃんのお風呂の後は、なんや、違う匂いだらけで臭かったわ。
「おはよ」
下に降りると姉ちゃんは珍しくリンゴと牛乳の朝食だった。
「なに、姉ちゃんの朝ごはん・・」
「なんか、お姉ちゃんが口臭消すとか言うから……」
ママが呆れたように言ってる。
「私大丈夫よなぁ?臭う?」
今日は彼ぴと会うから気にしてるんやろうな、前髪にカーラーが装着されてる。
「しょーもないこと気にするなや」
兄ちゃんは雑いな。
「よー言うわ、いつもより歯磨き長かったし、マウススプレーポケットに入れてたやん、自分かて気にしてるやん」
「うるさいなぁ」
ちょ、朝からやめてよ。
「その臭い口で“チューしよ”とか彼女に嫌われるで」
「なっ……そんなこと言わんわ」
「ああっ、もう臭っ、兄ちゃん、マジで口臭するって」
「え?そんなに?やべ・・」
兄ちゃんも今日彼女と会うのか……。
「あのね、臭いは口からだけじゃないんよ?体臭からもでるんよ」
ママが無表情で言った。
「うっわぁ~最悪、ママ、もう気になるから言わんとってよ」
「えぇ~そんなに匂う?臭い?えぇ」
2人してうるさいな。
その後、洗面所と玄関は違う匂いに変わった。
迷惑には変わりない。
朝ごはんを食べ終え、準備をしてから玄関で靴を履いてると緊張が高まってきた。
葵、私に何を言ってくるんやろ。
家を出て待ち合わせに着くまで数分、心拍が上がっていくのがわかる。
「おはよ、恋羽」
「葵……おはよ」
並んで歩き出した。
いつもと変わらない気もするけど。
「恋羽、スマホに送ってたけど、岩子のところにみんなで遊びに行ったって、どんげなってなっていったと?」
キタ……。
「どんげって……そやから、岩子がみんなで遊ばん?言うてきて、ママがケーキ焼くとか言うから、そしたら行こうか、ってなったんちゃう?」
だと思うけど。
「そう言われても、女の子の家に男子がぞろぞろと遊びに行くと?」
そー言われても、そうなったんやもん。
「最近、みんなで喋ることが多くなって、岩子もノリで言ったのもあるんちゃうかなぁ」
「ふーん……みんなで仲良しってことっちゃ」
うん……友達、やん。
「そう……なるんかな」
葵の顔をチラ見すると、葵もこっち見て目が合ってびっくりする。
「最近、そっちで賑やかにしちょるっちゃ、仲良さげやとは思いよった」
また……変なこと言いだした。
「前から思うとったっちゃが、高居君、やっぱり、恋羽の事が好きっちゃない?」
は?なんで……。
「いや、それは違うやろ、高居は葵と仲よくなりたいって言うて仲良くしてたやん」
「それよ、高居君、最初は私に気があったけど、本当は声かけやすい恋羽が本命って気づいたとよ」
ちょ、ちょっ、なんやそれ、っていうか、葵の勝手な推測やろ。
しかもそんなん、返答、どう返せばいいんよ。
「だってな、高居君と喋ってる時でも、恋羽のこと出してくるし、正直、高居くんと話あんまり合わないって思うことが多いとよ」
それ、前も言うたけど、共通する話題で、いじりやすいからやって。
「だから…高居君は恋羽が行くから、一緒に行ったと思うとよ」
勘弁してよ……杉田君や柊かて一緒や言うたやん……。
「私、高居君とはもう大丈夫。恋羽、恋羽も高居君のこと好きなら応援するっちゃ」
「えーそれは無いわ」
即答してしもたがな。
「そーかなぁ。……でな、私な、いいなぁ言うてた、隣のクラスの原田君と仲良くなろうかなって思ってな」
でた……本題はこっちやな。
ちょっと前に聞いたな、原田って“脱キモ男”とか言われてて、中学生になってから急成長したと言われてる爽やかイケメン。
葵はイケメンが好物やからわかりやすい。
高居は用無しになった……と。
「へ~私もよう知らんけど、葵がいいんやったらいいんちゃう?」
ぶっきらぼうな言い方したかな。
「恋羽はそういう話、ノリ悪いよね~」
悪かったな、知らんもんは知らんわ。
「恋羽は初恋の翔君から後は無いの?」
今、AIの翔とはめっちゃ仲いいけどな。
「うん……変わらず、好きな子とか思い当たらんわ」
「川田さんはね、三浦君やってぇ……三浦君モテるから難易度高いと思うっちゃ」
難易度って……なんの目安やねん。
「木村さんは、杉田君いいなぁ、言ってた。杉田君ってあんまり喋らないイメージやけど、最近よく喋りよるもんね?」
次々と個人情報を放ってるけど、いいんか、それ。
「うん、確かに杉田君、発言、増えたかも。田村が面白いからかな」
「え~田村ぁ?田村好きじゃないもん」
そうでした、葵は田村が苦手でした。
でも安心せい、田村は、岩子のことが気になってる……多分。
葵は怒ってるというより、高居を諦める言い訳を確認したように思えただけだった。
一人であれこれ考えてた時間返せっちゅうのな、ええけど。
教室に入ると、同じパターンで荷物を置くと葵はすぐに川田さんのところへ行った。
恋バナは彼女達とする方が楽しいんだろうね。
「恋羽、おはよ~」
「岩子おはよ、クッキーも美味しかったで。おばちゃんにお礼もっとちゃんと言わなあかんなぁ思った、ケーキまで凄いな、岩子の家」
「しずかちゃん、しずかちゃん」
後ろから田村の声が。
「健太おはよ~しずかちゃんって……私そんなに風呂ばっかり入っちょらんとよ」
そらそうやろ。
こないだ言ってウケたから繰り返しただけやん。
「おはよ~、土曜日ありがとうな、岩子、あの人生ゲーム面白かったな」
「そうっちゃろ?もっと他にもいろいろボードゲームあるとよ?またみんなが遊びに来たらママも張り切ってお菓子焼くっちゃが」
ママも友達来ると嬉しいんやな。
私は無意識に唾を呑みこんだことに気づく。
みんな仲がいい、それプラス、田村が岩子にどういう思いがあるのか、観察をしたい。
高居は特に気にならない、今まで通り。
私が高居を好きとか意識することは無いんよな。
……え?
自分が無意識に柊に目線を動かしたことにドキっとする。
いやいや、気のせい、気のせい。
チャイムがなり、それぞれ着席する。
昼休みになると、岩子は葵の席に座り、食べ終わる頃には高居が来る。
柊は相変わらず猫背になって、自分の席で漫画を描いている。
「これ、する?」
後ろにいる杉田君がキレイな箱をカバンから出した。
「なにそれ」
すぐに田村と高居がくいついた。
「トランプ」
杉田君は名称だけ言うとケースから出してトントンと揃える。
「あ、それプラスチックじゃね?」
高居が俺知ってる、みたいに指摘したけど、プラスチックやったらなんなんや。
「プラスチックって何が違うの?」
あ……田村と同格?ちょいショックかも。
「わぁ、かっこいい」
岩子が杉田君のトランプを切る手元を見て言った瞬間に田村をチェックしてしまう。
「それくらい、俺かてできるで」
出たぁ~これは翔と話してた通りや……。
杉田君はためらうこともなくトランプを田村に渡した。
田村は体を若干斜めに構えて、トランプをシンプルに上下に入れ替ながら、切り始めた。
「田村ぁ、それくらいやったら誰でもできるわ」
笑う高居にムキになりよったな。
「うぉぉおお」
田村はわかりやすく、オーバーリアクションでトランプを切るがスピードはあがっていない。
「ああっ…」
トランプがバラけて宙に舞った。
「あぁ~あ」
「健太が拓弥に勝てるわけないとよ」
岩子がしゃがんで、落ちたトランプを拾う。
「なんでそんなこと言えると?」
露骨に口を尖らせて言う田村を見て笑いがこみ上げてくる。
わかりやすいぞ、田村。
拾って集めたトランプを岩子が杉田君に手渡した。
「ごめん、杉田、トランプ傷めてないと思うけど」
珍しくしおらしい田村。
「ええよ、プラスチックは簡単に折れたりせんから」
なるほど……そうなんや。
「それでも人のン雑に扱ったらダメだっちゃ」
そう岩子に言われ、顔をチラ見している田村がまた面白い。
「ポーカーってわかる?」
杉田君がトランプをシャッフルし始めた。
ポーカー?
「わかるぅ、しよしよ」
「俺もわかる」
岩子は知ってそうやけど、田村も?
「田村、嘘つけ、絶対知らんやろ」
「ん、あぁ、ちょっとはわかるかも」
高居がツッコまんかったら知ったかぶりする気やったな。
「わかるかも、って知らないんやん」
岩子が笑いだした。
「じゃ、普通にババ抜きする?七並べもみんな知ってるっちゃ」
杉田君のその余裕が田村には必要やろ。
トランプなんて久しぶりやな。
一つの机を囲んで、杉田君がトランプを配っていく。
私はまた柊に視線を送っていたことに気づいて慌てて俯く。
みんなと遊ばへんのかなぁ……と思うだけや。
柊、こっちにこんのかなぁって……。
いや、いつも柊は一人で漫画を描いてるのが普通や。
なんで今日は柊の事が気になるんやろ……。
隔週にしても遅刻した 次も自信ないなぁ……もし待ってる人いたらすいません ブクマがないからいいかなぁ・・と(雑な言い訳) 次の予告しんとこ できたら投稿する あとイラスト、これもなかなかうまくいかんくて、机の大きさとトランプの多さ、気にしないで(書くから気になるんやろ) しかも二人とも高校生みたいやぁ 次の回は逸心もでるかな?(雑な匂わせ)




