43話 光との交わり
襲い掛かってきたルナに対し、ティナは両手で攻撃を防いだ。
(こんなに小さいのになんて重い拳なんだ。ミナの攻撃ですらこんなに腕が痺れなかった。五十嵐と同格…?いやそれ以上?)
「もう出し惜しみは一切しない。最初から本気で行く。」
「舐めてんの?本気出したら勝てると思った?これだから素人は困るんだよね。やるからには常に殺す気でやる。」
ルナの顔つきが変わった。
(何を仕掛けてくる…?)
「本当の地獄ってやつみせてあげるよ。」
ルナの体が青く光りオーラがほとばしった。
(この距離でも肌に熱を感じる。あれを直でくらったら無事では済まないかもしれない。なんて言ってる場合じゃないか。やらなければやられるだけ。踏み込んでみるか。)
ティナが攻撃を仕掛けた。
ルナに触れようとした瞬間ティナの体に火がついた。
「くっ!火が体に…!」
「だから言ったでしょ?地獄を見せてやるって。」
(オーラで多少は守られている。大丈夫いける。この状態でこのまま仕掛ける!)
ティナは火がついてもお構いなしに拳を叩きつけた。
「いったぁ!なんでその状態で突っ込んでくるの?!」
「あんたの言うように私だって死ぬ気で戦っているからだ。こんな炎に私は負けない。」
「だったらこれはどうだ!」
ルナは青い炎を手に宿しティナの腹部に手を伸ばした。
(この距離…このオーラの量…やってみるか。)
ティナのオーラもまた激しく放出した。
ツカサは気づいていた。
「ティナは使うようだな。相手の力を利用する能力を。あれならとんでもない力に変えて返せるだろう。勝機は十分だ。」
「いいや逆だ。ルナはそんなものさっきの私たちの戦いで学んでいる。このタイミングでティナがやろうとしていることを理解した上でのあの動作。」
「いやまさか…あれを防ぐ手段などある訳…」
ティナはルナの手に拳を叩きつけた。
しかし…
『わかった!そう言うことか!ティナよせ!拳を引っ込めろ!』
「もう遅いよ!」
ティナの拳をルナは受け止めた。
「やっぱりそこを狙ってくると思ったよ!」
「え…?!」
「私の能力を利用して返そうとしたんでしょ?バレてるよそんなの。」
(腕が抜けない…なんて腕力だ…)
反対の手でティナの腹を殴った。
「ぐっ…」
ティナは膝をついた。
(この威力…私のオーラを逆に利用して殴ったのか…!腕が抜けないのもそういうことか!まずい私のオーラが薄れてきて炎の熱さを感じ始めてきた…物凄く熱い…。)
「もう1発!」
また腹を殴った。
『これは非常にまずいぞ。ティナのオーラがほとんど出ていない。それに腕を見てみろ。拳を握る力もなくなってきている。』
『ティナこんなとこで負ける訳ないよね?私は信じてるから。最後まで諦めないってことを。』
(オーラを引っ込めないと本当にやばい…かといって引っ込めたら炎で丸焦げだ。だけど腕を抜く力もほとんどない…。どうする…?)
「あれ?もう終わり?あーあつまんないなぁ…もう少し遊びたかったけど殺しちゃうかぁ。」
「私は絶対に負けない…!」
「ん?何か言った?」
ティナの体が光った。
『あれは…あの時の光…。』
「何これ…!ま、眩しい!」
ルナはティナの拳から手を離した。
ティナを包んでいた炎が弱まった。
「今ならいける…!この光をオーラに変える!」
光をオーラに交わらせた。その瞬間光のオーラを身にまとった。
『一瞬光っていたのはそう言うことだったのか。』
『どういうこと?』
『あの光こそティナの中に眠る本来の隠された力。それが目覚める前兆だったんだ。恐らく危機が迫ったときに発動するもの。』
『それをようやく形にしたってことか。』
「何をした!その光は何なんだ!」
「たぶん聞いても理解できないと思う。私自身が理解できてないから。でも1つだけわかっていることがあるから教えといてあげる。」
「なに…?!」
「こうなったらあんたは私には勝てない。それだけ。」
「ふん!口だけではなんとも言えるんだよ!もうお前にほとんど力が残っていないのはわかってるんだ!」
ルナはティナに攻撃を仕掛けた。
『ルミナスショック。』
ティナは手を前に突き出しルナを吹き飛ばした。
「何だ今のは!」
「さぁ?なんだろうね。」
「馬鹿にしやがって!まじでキレた!!」
ルナの体から激しい炎が渦巻いた。
『リビングヘル!!』
「ルナそれはよせ!」
「黙れ!もう完全にむかついた!ここにいる全員巻き込んでやる!」
「おい!こっちまで熱風が来るぞ!」
「まずい…完全にキレてる…これがルナに勝てなかった能力だ…。」
「そんなにやばいのか。」
ティナは動揺せずルナを真っすぐ見ていた。
「その目が気に食わないんだよ!」
ルナは渦巻いた炎を手に宿し殴りかかった。
「灰になれティナ!」
『ルミナスレイン。』
ティナの光のオーラが槍のようなものとなりルナに向け飛んだ。
『ティナがさっきからやってる能力はなんだ一体…あんなの初めてみるぞ!』
「どうやら思い付きでやっているわけではなさそうだ。頭で考えるよりも先に体が動いている。」
進行を阻止するようにルナの体に次々へ当たった。
「くっ!こんなもの!」
攻撃を受けながらもティナに突っ込んだ。
「近づくことができればなんてことないね!このままその憎たらしい顔に一撃を入れてやる!」
(いやルナそれは違う…!まだティナは何か隠している…。」
「あと少し!今だ!」
ルナはティナの顔目掛けて一撃を繰り出した。
するとティナが大きく腕を後ろに下げ攻撃の構えをとった。
「な!」
ティナの腕が大きく光った。
『やはり近づいてくるのを狙っていたか。それにあの右腕。ルナの能力と同等かそれ以上…どっちが死んでもおかしくないぞ!』
「もう間に合わない!このまま攻撃をするしかない!勝つのは私だ!」
「いいや。私だ。」
ルナは拳を前に突き出したと同時にティナも振りかぶった。
拳と拳が触れ合った。光と炎が重なった。
すると大きな爆風が周りに広がった。
目を開けていられない程の光と熱風が周囲を襲った。
『何が起こっている?!目が開けられん!』
『この熱風は…!熱くて溶けそうだ!』
時間と共に眩しさは消え熱さも収まってきた。
周りにいた者たちはゆっくりと目を開けた。
そこには膝をつき体中ボロボロになったティナと吹き飛ばされ横たわったルナがいた。
「はぁ…はぁ…」
『状況的にティナが勝ったか?!』
するとルナが起き上がろうとした。
「いったぁ…なかなか…やるじゃん。」
「あんたもね。まさか立ち上がってくるとは思わなかった。」
「これでも『インフェルノ』のリーダーって肩書背負ってるからね。興味ないけど。」
「そう。じゃあまだやれるってことでいいよね。」
ティナは光のオーラを纏った。
「悪いんだけど…私はもう無理…。」
ルナはそう言うと倒れた。
「じゃあ私の勝ちだ。」
「そうだねー。もう1ミリも力が出ないや。全部使い果たしちゃったから。」
『ルナ…。』
ティナはルナに接近した。
「手を貸すよ。立つぐらいは出来るでしょ?」
「ふん!仕方なく手を借りてあげるわよ!」
「なんだっていいよ。本当にあんた強かった。」
『あのルナを倒すとは…なんてやつだ。』
『これがティナって女だ。レイナもこの戦いを見て感じただろ。本当に政府を倒せる可能性があるということを。』
『そうだな…。我々の完全完敗だ。』
その後仲間が駆け寄り治療をした。
「ティナ本当によくやってくれた。」
「もう最後の方は交渉の存在なんて忘れていたぐらい。あのルナを倒したい。その一心だけで戦っていた。」
「その気持ちが政府を倒す上で大事になってくる。あの能力なら文句のつけようがないだろう。」
「どうかな…。それよりも…。」
「そうだな。レイナ交渉の件だが。」
「うむ。ルナもうわかったでしょ?あいつらの力を。」
「さっきも言ったけど私は強いものに従うだけ。ティナは私を倒した。だからいいよ。政府を倒すことに協力してあげる。」
「それってつまり…」
「『インフェルノ』は今から『tears』に従う!お前たち文句言うなよ!」
「私はまったく異論はない。だが完全にここを留守にして行くわけにもいかないぞ。」
「それなら問題ない!お前たち私たちのいない間ここを守るんだ!」
「それなら我々『ネクサス』からも派遣しよう。もう仲間だろ?」
「うむ!それなら安心して行けるなお姉さん!」
「ああ。そうだな。」
「じゃあ交渉は成立ってことで問題ないな?」
「二度言わせるな!私が決めたんだ!問題ない!」
「よしわかった。それじゃあ共に戦おう。」
「ああ。よろしく頼む。」
ルナはティナに近づいて来た。
「あんたのその力だったら本当に勝てるかもね!私より強いんだから。」
「ルナだって強い。これからの戦いにはその力が必要になる。頼りにしてるから。」
そう言うとティナはツカサの元に向かった。
「かっこいいじゃん!何だかやる気が沸いて来た!お姉さん!私たちも出発の準備するわよ!」
(こんな嬉しそうなルナ久々に見たな。)
「ああ。了解だ。」
「ツカサこの後なんだけど京都の拠点に戻りたい。仲間が待っているんだ。」
「ああ。もうこっちの計画は達成した。ここから先は『tears』の指示にすべて従おう。」
「うん。じゃあ『ネクサス』の基地に戻って後日、京都に行こう。」
「『tears』の民兵たちさぞかしビックリするだろうな。こんなに仲間を引き連れて帰ってくるんだから。」
「それよりジュリに対してあのルナが変に突っかからないといいんだが…。」
「ジュリって誰よ。」
「『インフェルノ』のリーダーだ。」
「へぇー。『インフェルノ』のリーダーはそこの男かと思った。」
「いや…俺は部隊長のリクだ。」
「ふーん。そうなんだ。あんた能力は使えないの?」
「俺は使えない。だからあくまでも能力を使えない奴専門だ。」
「そうなんだ。私的にあなた強そうに見えるんだけどねー。」
「お世辞はよしてくれ。これでも最前線で戦えなくて悔しいくらいだ。」
「別にお世辞で言ったわけじゃないんだけどなぁ。」
「ルナよさないか。言い方が悪いぞ。リクすまない。」
「大丈夫だ。いつか強くなってみせるから。」
ティナは少しそんなリクを見て微笑んだ。
「よし『ネクサス』の拠点に行こう。」
「それなら我々が車で送ろう。」
さっき倒してきた『インフェルノ』のメンバーが名乗りを上げた。
「助かる。もう戦いでまともに歩くことが出来なかったところだ。」
「しっかりしなさいよ!これからもっと過酷な戦いが始まるんでしょ?!」
「全くだ。俺もまだまだのようだな…。」
「あまり気にしないでくれ。ルナもこうは言っているが相当足に来ている。」
ルナの足がプルプル震えていた。
「これはそういうのじゃないから!」
「だが、本当にこれからは大変な戦いになる。休める時はしっかり休んでおいた方がいい。」
ミナが近づいて来た。
「ティナお疲れ様。」
「ありがとミナ。さっきの力だったら勝てるかな。五十嵐…それから須藤に。」
「どうだろうね。それはわからないけど届くとは思うよ。だって私たちもいるから。」
「うん。そうだったね。自分を…それにみんなを信じる。」
「ええ。その気持ちがあればきっと大丈夫だから。」
「うん。だね。じゃあ行こっか。」
ミナは頷いた。
ティナたちは車に乗り込み『ネクサス』の基地へと向かった。




