32話 過去の決戦
『これで恐らく俺の研究データは最後になるだろう。力を持った3人に賭けるしかない。もし俺に力が使えたらこの子たちにこんなことをさせなくてすんだ。それだけが悔しいところだ。俺は最後に3人の力を見せてもらい、どういった流れで奴を仕留めるか考えた。やはりこの3人の中だとヒロトの影が一番、不意打ちにはいいかもしれない。だがそこまで影は機敏に動かせるのだろうか?何度か練習を試みたところ、依然見たときより数段操れるようになっていた。これはセナのオーラと共鳴したことによって成長を遂げた可能性がある。もしかしたらサヤにも変化があるかもしれない。だがこれ以上試している余裕はない。この不安定な状態でやるしかない。そして国の連中が実験体を持ってくる時間になった。』
「それじゃあ手筈通りにいくぞ。」
「わかった。」
「ああ。いつでも大丈夫だ。」
「…。」
10分…20分…30分…。
まったく来る気配がなかった。
「遅いな…。」
そして1時間が経とうとしていた。
「流石におかしい。あまりにも遅い。 すまないちょっと外を見てくる。」
そう言うとタカシは外に出た。
扉を開けると病院内の窓ガラスが割れていた。
「どういう状況だこれは…。それに外が騒がしい。何が起こっている?」
すると上空から戦闘機の音が聞こえてきた。
「なに?!空襲か?!」
その瞬間爆撃がそこら中で起こった。
タカシはドアを閉め、3人の元へと戻った。
「国の連中は遅れているのではない!それどころではない状況になっているんだ。」
「どういうことだ?!外で何が起こっている?!」
「本格的に敵軍がここまで攻めてきた。いよいよ相手国は決着をつけようとしている。」
「それじゃあ、須藤は今戦っている?」
「それはわからない。だがこれはある意味チャンスか。みんなここを出るんだ。」
「出るって外は戦場と化しているんだろ?ここにいた方が安全じゃないのか?」
「ここにいても須藤を倒すことはできない。このままだと俺たちはやられてしまい、国が勝ってしまう恐れがある。」
「どういうことだ?国が勝つのはいいことだろ。」
「そうじゃない…。」
セナが口を開いた。
「その場合、このリベラティオで勝ったということになる。国の力だけで勝ったということにはならない。」
「セナのいうとおりだ。俺は以前、戦場で兵士として戦ったことがある。だから知っているんだ。普通に戦った場合この国に勝ち目はないと。明らかに戦力の差がある。だがリベラティオを利用すれば逆の結果になるだろう…。だからリベラティオの力を須藤は使おうとしている。あの書物に書かれていたように。」
「だとしたらなんとしてもリベラティオを渡すわけにはいかないな。」
「そういうことだ。リベラティオを壊せないというなら須藤を倒す以外にない。この戦争は負けていいんだ。これ以上の犠牲を出さないためにはそれしかない。」
「わかった。それで奴は今、どこにいるんだ?」
「こうなった以上やつもリベラティオを回収したいはずだ。もしかしたらこっちに向かってきている可能性もある。とりあえずここを出るんだ。」
「ええ。急ごう。」
万が一のためにレポートは持っていくことにした。
そしてタカシはドアを開けた。
辺りは暗かったが、外が騒がしかった。
「目隠しされていてわからなかったが、病院の地下に研究所があったのか。」
「そうだ。ここは国と医院長しか知らない秘密の場所だ。だが、もう秘密でもなんでもないがな。この先に行くと病院の入り口がある。走るぞ。」
入り口まで近づいたときだった。
「おや?江口先生なぜここに?それに後ろの3人は…。実験体! 何故、実験体を外に出している?!
」
「医院長…。そこをどいてください。」
「国を裏切ったな?貴様。」
「裏切ったわけではありません。国のやり方に賛同できないだけです。はっきり言ってこんなの間違っています。」
「その石で大勢の人間を殺めてきたやつの言うセリフだとは思えんな。」
「それは…こういう結果になるとは思っていなかったからです。」
「何を今更言っている。国の為に戦える兵士を作り上げる事こそがお前の使命ではなかったか?」
「それによってこれ以上の犠牲を出すのは耐えられません。それに国トップは世界を牛耳ろうとしています。この石の力を使って。そんなのは本当の勝利ではないです。」
「あんまり調子に乗るなよ。ちょっと国に気に入られたからって。」
「もう国なんてどうだっていいんです。俺は国のトップである須藤を倒します。」
「チャンスをやってもいい。いますぐその3人を始末すれば今の言葉は全部聞かなかったことにしてやってもいい。どうだ?」
「それはいくら医院長の頼みでもできません。」
「そうか。ならば私の手でお前の息の根を止めてやろう。」
(くっ。やるしかないのか…。)
医院長は小刀を取り出し襲ってきた。
「死ね!江口!!」
そしてタカシの肩を刀が切った。
「ぐっ…。」
血が滴った。
「ふふふ。これは深く入ったな。腕まで落とせなかったのが残念だ。」
(まずいな。完全に肘関節に入った。)
するとセナの持っていたリベラティオが光った。
「え…?リベラティオが反応している。何これは…?」
そしてタカシの体からオーラが上がった。
「なんだこの不思議な感覚は?」
タカシは襲い掛かる医院長の刀を持つ腕を掴んだ。
「その煙は…一体…」
「どうやら俺にも権利があったようだ。」
「何だと…?権利?訳の分からんことを。」
タカシは医院長の顔を殴り飛ばした。
「ぐはぁぁぁ!!!」
医院長は吹き飛んだ。すると医院長の体からも煙が放出しもがき苦しんだ。
「く、苦しい…息が出来ない…!」
「どういうことだ?何が起こっている?」
「おい!あいつの体からもオーラが出てないか?」
「もしかして今殴ったことで医院長の体にリベラティオの力を植え付けたってことじゃない?」
「まさかそんなことがあるはず…いやあり得るかもしれない。俺はここ長いことこのリベラティオをずっと持っていた。半端ない精神力が俺の中にあってもおかしくはない。だが一体何故このタイミングで放出したんだ…?」
「それはきっとこのリベラティオが光ったからだと思う。」
「リベラティオが光った…?!なるほど。やはり光ったのには意味があったのか。」
医院長は苦しみながらもこちらに近づこうとしてきた。
「俺にも力を…石の力を…。」
「あれでは完全にリベラティオの力を吸収できないだろう。値しないってことだ。」
「俺も国のために力が…ほしい…。」
医院長は手を最後に手を伸ばし、倒れ死んだ。
そしてサヤがタカシの前へ座り込んだ。
「どうした?」
「もう1度試してみる。」
サヤの周りにオーラが現れた。
「誰かを治したい。助けたいって思えば思うほど何故かオーラの力が強まっていくの。」
「…。」
そして手にオーラを集中させ、自身を治した時のようにタカシの肘に手を当てた。
すると血が止まり、傷口がふさがってきた。
「これは…自分以外にも治療を…!」
「やっと出来た…。」
「ありがとう。本当に助かった。」
「うん。でも今は早く行かないと。」
「そうだな。よし早くここから出よう。」
病院をでた瞬間、上空から戦闘機が病院に向かって攻撃してきた。
「あぶない!!」
間一髪で攻撃を回避した。
「相手の国は本気で終わらせに来ているな。全く無駄な争いだ。」
「無駄なんかではない。」
声がする方を見た。
そこには兵と五十嵐を引き連れた、【須藤レオ】が立っていた。
「何故、外に出ている?研究はどうした?」
(やはり俺の読みは正しかった。あの研究所内だと逃げ場がないから完全にやられていた。だが外なら…)
「もう研究はここまでだ。須藤。」
「ほぉ。俺の名前を知っているのか。ということは読んだのか。」
「ああ。全部読んだ。過去になにがあったのかもリベラティオの秘密も。あなたがそれを使ってこれからやろうとしていることも全部。」
「それで俺を倒そうと考えたわけか?」
「もしこの馬鹿げた戦争を終わらせ、考えを改めてくれるというのならこっちもそこまではしない。」
「誰に向かってそんな口を聞いているのかわかっているのか?まるで俺がお前らにやられるように聞こえたのは気のせいか?」
「気のせいではない。本気だ。」
「まぁいい。お前らを殺した後でリベラティオを奪い俺はこの戦争に勝ち、世界を牛耳るだけだ。」
「そうはさせない。」
「高く評価してやっていたのにな。お前のことは。黙って俺について来ればいい思いができたものを。」
「だまれ!お前なんかについていくぐらいなら死んだ方がマシだ。」
「ふっ。それじゃあ望み通り殺してやる。」
すると五十嵐が前に出た。
「お前は…。五十嵐…。」
「トップ。ここは俺がやりますよ。あの石を握ったおかげで俺でもこんなやつら一瞬で終わらせられますから。」
「ほぉ。お前1人でやれるか。それならやってみろ。もしこいつらを倒すことが出来たならばお前を正式に側近にしてやる。」
「有難きお言葉。じゃあいくぞ。」
「セナ、お前は力が出せない。俺たちに任せろ。石をなんとしても守り抜くんだ。」
セナは軽く頷いた。
タカシ含め2人は構えをとった。
五十嵐は両手を前にかかげた。 するとオーラがほとばしった。
「まだ未完成ではあるが、お前らを倒すぐらいこの程度で十分。」
そして踏み込んだ。
狙いはタカシだった。
「死ね!裏切りものが!」
タカシは守りに入った。
「くっ…。すごい威力だ…。手が痺れる…。」
「どうした?手も足も出ないだろ?」
「くっ!だまれ!俺だってやれる!」
タカシは反撃に出た。
「ほぉ。お前もなかなかやるな。俺に攻撃を当てるとは。だがな、そんな遅い攻撃で俺に勝てると思うなよ。」
タカシの顔を五十嵐の拳が深く入った。そして溝に一発重いのが入った。
「ぐっ…」
タカシは膝をついた。
「これが戦闘経験の差だ。さてと止めといくか。」
五十嵐は拳にオーラを集中させた。
(五十嵐は飲み込みが早いな。もう力をコントロールできるまでになったか。まさに戦闘向けって感じだ。リベラティオの力も相まって凄まじい成長を遂げている。)
五十嵐がタカシに拳を振りかぶった。
「させるか!」
影が五十嵐の背後を取り、持っていたナイフで刺した。
「これは…あのクソガキの力か…。刺しやがったな!」
五十嵐は影を攻撃したがすり抜けた。
「それは影だ。攻撃しても意味がない。」
「それじゃあ本体を攻撃すればいいだけだ。」
「なに?!」
五十嵐は走ってヒロトの前に立ちはだかった。
「は、はやい…!」
ヒロトの懐に拳が入った。
「ぐはぁ!!!!」
「ヒロト?!」
ヒロトはお腹を押さえ苦しんだ。
「どうした?それで終わりか?もっかい出してみろよ。出せるもんならな。」
「うああああ!!!」
サヤが五十嵐に突っ込んだ。
そして平手打ちでサヤを払いのけた。
「弱いくせにいきがってんじゃねーぞクソガキが。」
サヤは口から血を流した。
「やめろおおおお!!!」
タカシが立ち上がり、五十嵐に何発も攻撃を仕掛けた。 しかしその攻撃はすべて避けられ蹴り上げた。
「ぐっ…」
「力を持ってもこの弱さとはな。お前ら本当に力を持っているのか?信じられんな。」
「おい五十嵐。早く止めをさして石を奪え。」
「はっ。今すぐにやります。」
「さて全員まとめて死ぬ時間だ。」
「星咲セナ…お前だけでも…逃げ…ろ。」
「ん?ああそういえば、お前もいたな。力を使えないんだろ?お前は最後に殺してやるから大人しくこいつらが死ぬとこを見ていろ。」
(なに?!星咲だと…?まさか…。)
「まずはお前からだ!江口タカシ!!」
その瞬間、セナの体からオーラが放出しリベラティオも激しく光った。
「な、なんだ?!この光は!」
五十嵐のお腹にセナの拳が深く入っていた。
「お、お前…その力は…一体…」
「これ以上やらせない…。」
「この野郎…!よくもやりやがったな!」
五十嵐は大きく拳を振り上げたが、セナはかわした。
「遅い。止まって見える。」
何発も懐に拳が入り五十嵐の顔に肘打ちを入れた。
「どこからそんな力が…」
五十嵐はよろけて膝をついた。
「星咲セナ…やはりお前は【星咲サナ】の子孫だったのか…。」
「その人が誰だか知らない。でも、もしそうだとしたらこいつは私の手で倒さなくていけない。」
「宿敵というわけだな…。」
「面白い。先祖が成し遂げられなかったことをお前を倒し、俺が実行してやる。」
「それは絶対にさせない。お前はここで終わるんだ。」
「それはどうかな?」
すると周りにいた兵士が一斉に銃を構えた。
「力があっとしてもこの数の銃弾からは逃れることは出来ん。」
「卑怯な真似を…。」
「戦いに卑怯もくそもないんだよ。勝てばいいんだ。さて俺も忙しい。石を渡して楽になれ。」
「さあ、やれ。こいつらを殺し、我が国に勝利をもたらすのだ。先祖の恨みここで晴らす。」
セナに銃口が向いた。
「セナ!!」
その時だった。
「ぐはっ!」
「なんだこいつら!」
10人近くの人間が兵士を次々に倒していった。
「今だ!今のうちに奴を倒せ!」
「はやく!ここは私たちが!」
「あなたたちは…?」
「あれは…恐らく俺がリベラティオを使って力を引き出した患者たちだ。」
「こいつらか…。リベラティオに耐えたやつらは…!探しても見つからないと思ったら団結してやがったか!」
「リベラティオが引き寄せたんだ。こいつを倒すために。」
「少し力を持った程度で調子に乗りやがって…!俺の力をみせてやる。」
須藤はキレた。そして激しく黒いオーラを身にまとった。
「なんだ…あの禍々しいオーラは…。」
「あれはきっと先祖が持っていた力を引き出したんだ。」
「先祖の力…?リベラティオの力は子孫にも引き継がれるのか…?」
「そういうことみたいだね。だからあいつは石に触れなくてもリベラティオの力は少なからず持っていた。2回触ったことによってそれが解放された。」
「じゃあセナもか…?」
「それはわからない。【星咲サナ】が私の先祖なんだったらもしかしたら…。」
「この力なら勝てる…! いくぞ星咲サナの孫!」
ティナに向かって須藤レオは襲い掛かった。




