33話 受け継ぐ想い
攻撃を防いだが簡単に打ち破られた。
「つ、強い…。五十嵐とは比べ物にならない…。」
「なんだ?思ったより弱いじゃないか。」
「手に力が入らない…。化け物かこいつは…。」
「誉め言葉として頂いておこう。それじゃあこんなのはどうだ?」
須藤は手にオーラを纏い手のひらでセナの腹を強く押した。
遠くの方まで吹き飛んだ。
「セナ!!!」
「強い…強すぎるぞ俺は…!これなら世界を手に入れることも簡単だ。後はこいつを殺すだけだ。」
「さてと首でもはねて先祖の墓にでも添えてやるか。どうせなら誰かもわからないぐらいに潰してやる。」
須藤はセナの首を掴み持ち上げた。
「うっ…。」
「苦しいか?そうだろうな。その前にこのリベラティオは返してもらうぞ。」
セナからリベラティオを奪った。
「これでもうお前には完全に用はない。さっさと死ね。」
「ここまでか…。」
その時だった。 リベラティオが大きく光りだし須藤の体からオーラが流れ出た。
「何だと…?!これは一体…?!」
須藤はセナの首から手を離した。
「はぁ…はぁ…。ようやくわかった。」
「なにがだ?!」
「私の力…。そういうことだったんだ…。」
「何を1人でぶつぶつ言っている!」
「今は勝てない…。でもいつかは勝てる…。」
「は?何をわけのわからんことを…まさかお前!」
「そう。リベラティオを…リベラティオをこの世界から消す事ならできる…!」
「お前も使えるというのか…?!」
「誤解しないで。リベラティオだけではない。あんたも消す。」
「なんだと?!くそっ!リベラティオを離さなければ!」
「もう遅い。」
セナは体からオーラを解き放った。
「このままこの世から完全に消えてくれたらいいけど…。」
そしてセナは手を前に突き出した。
先祖である星咲サナが重なって見えていた。
リベラティオとセナの手が光った。
「消えろーーー!!!!」
須藤の背後に時空間のようなものが現れ吸い込まれていった。
その時だった。須藤にも先祖である【須藤ヒロ】が重なって見えた。
「くそおおおお!!!ここまで追い詰めたのにまたしても星咲サナの血筋に邪魔をされるとは!」
「あなたがやろうとしていることはどれだけ世代を超えても阻止し続ける。きっとまたあなたはどこかの世界で同じことを繰り返すだろう。でもきっといつかは倒す。この血筋が。私が出来なかったことを未来に託す。」
「ふっ。リベラティオは我が手にある。逆に倒されるのはお前の子孫だ! 覚えておけ!限界を超えた力を手にして次こそは根絶やしにしてやる。ここにいる全員の子孫をだ!全員殺してやるからな!!!」
「見苦しい。消えなさい。」
時空間が閉じようとした。
「俺もお供します!!」
「なっ?!五十嵐?!」
五十嵐も時空間に飛び込んだ。
そして完全に時空間が閉じた。
セナ含め、その場でオーラを纏っていた者たちの体からオーラが消え去った。
「終わった…のか…?」
「うん。リベラティオがこの世から消えたことにより完全に力が消えた。でも私たちの中にリベラティオの力は残り続ける。」
周りにいた兵士たちは驚きのあまり腰を抜かした。それもそのはず。国のトップが目の前で消えたからだ。
だがリベラティオが消え去った後、あるものが消えていった。
【それは記憶だ。】
徐々にみんなの中からリベラティオのこと。五十嵐含め国のトップの記憶が消えて行った。
だが何故か俺とセナだけには記憶が残っていた。これもリベラティオの力なのだろうか?
「セナ1つ聞いていいか?」
「なに?」
「何故、あの時リベラティオを未来に飛ばせるってわかったんだ?」
「星咲サナが教えてくれた。私の力を受け継いでいるなら同じことが出来るって。」
「なるほど。星咲サナの力を宿したというわけか。だがこれは解決にはなってないよな。」
「うん。ただ未来に託しただけ。星咲サナが私に託したように。でもきっと次の世代が奴を倒し、石もなんとかしてくれるはず。」
「それってセナの子孫ってことだよな…?」
「そ、そうだけど…なによ。私にだって子孫ぐらい出来る。」
「そ、そうだな。すまなかった。」
「でも未来の子孫たちはやってくれるって信じてるから。きっと強いと思う。あの須藤に負けないぐらい。」
「だといいな…。」
2人はそれ以上の言葉を交わさず手と手を繋いだ。
【戦争を指揮していた国のトップが姿を消したということで敗戦となり戦いは終わった。その後、新しいトップが就任し平和が訪れた。俺はこの書き溜めていたレポートをもしいつか奴と再会するであろう子孫たちのため処分せずに残すことを決めた。】
【【有坂サヤ】と【米原ヒロト】は里親に引き取られる事となった。兵士との戦いに協力してくれた力を持ったものたちは名前もわからず気づいたら姿がなかった。俺はティナと一緒に普通の日常を過ごすことを決めた。もうレポートを書くのはこれで終わりだ。今はただ普通の日常を送りたい。】
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『ここで江口タカシのレポートは終わっていた。ここまで見た君たちなら大体察しているだろう。須藤レオというのは現代の国のトップだ。須藤と五十嵐はこの時代に来ていた。そして奴の手にはリベラティオもある。過去の記憶を持って現代にきたからこそティナ、君を狙ったんだ。そして現代の国のトップは既に須藤の手によって殺されている。この計画が実行されるよりはるか前に。須藤は現トップとして入れ変わっている。そして奴はリベラティオをこの現代で使い能力を持った者たちを作り上げている。僕もその1人だから。』
『それから江口タカシが撮った写真が残っていた。これもレポートに添えておこう。2人のその後を調べたら江口タカシと星咲セナの間に2人の子供がいた。1人目の名前は【星咲シンヤ】。ティナとミナの父親だ。2人目はすまないが情報はなかった。だがもし生きているならば君たちと同じ力を受け継いでいるはず。もし出会うことが出来れば須藤を倒す助けとなるだろう。僕がわかっているのはこれぐらいだ。君たちがこれからどういう行動を取るのか、それを見届けることは叶わないけどきっと奴を倒せると僕は信じている。』
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ここでカズヨシのレポートが終わっていた。
「…。」
「リベラティオがすべて招いたものだと思ったが、最終的にはリベラティオを戦争の道具として利用しようとしていた須藤が一番の脅威だったというわけか。」
「まさか過去から現代にきていたとは思わなかった。それなら納得できるな。この戦争を始めた理由も。」
「それだけではない。奴は石も持った状態で来ているんだ。」
「そうだよな。最初の時、俺たちの記憶が消えていったのはやはりリベラティオが原因なのか?」
「そこまではなんともわからないけど、2つ予想を立てるなら1つ目は江口タカシが言うように【リベラティオの力によって記憶が消された。】2つ目は【須藤の能力で記憶を消した。】だが、2つ目の予想は星咲セナと江口タカシの記憶が残っているのと会ったこともない俺たちの記憶が消せるのはおかしいから可能性としては薄い。」
「1つ目が確かに有力だな。リベラティオの力ならどこにいても力の影響を受ける可能性がある。だとしたら現代にいる須藤はリベラティオを使い、記憶を消してる可能性もある。」
「もしそれが事実ならば奴はリベラティオを使いこなせるまでになっているということになる。相当厄介だぞ。」
「ああ。だから今こうして須藤どころか幹部にすらも苦戦している状況だ。」
「あの五十嵐も過去から来たやつだった。過去にいた時から強かったと書かれている。それから更なる力を身に着けているとしたら確かに一筋縄ではいかない。私は戦ったからわかるけど今まで交えてきた誰よりも強かった。」
「能力すら使わずティナと互角に戦ったんだからな。その更に上にいる須藤はもっとやばいってことか。」
「余計に状況が悪くなったとも取れるな。今までは国のトップである、須藤を倒せばいいと考えてきたが、リベラティオが最も厄介だ。壊せなく未来へ飛ばすしか現状、方法がないというのは永遠に終わらないということだ…。」
「今はまったくどうすればいいかわからないけれど、きっと何か方法があるはず。壊せなくてもリベラティオの力を封じる何かが…。」
「そうだな。リベラティオのことは追々考えるとして今は幹部を倒し、須藤を倒すことだ。俺たちにもリベラティオの力が宿っているのならば勝ち筋はあるはずだ。」
「それにもう1人子供がいたっていうのも気になる。その人をみつければもっといろいろわかる気がする。」
「確かに。もしそれが本当ならティナとミナ同様に希望が更に持てるな。」
「うん。生きているかはわからないけど探す価値はある。」
「それでこれからどうする?」
「ちょっといいか?」
リクが立ち上がった。
「さっき民兵に聞いたんだが、大阪で組織と対立している連中がいるらしい。」
「どういうことだ?」
「市民たちによる組織ができていて、国の組織と交戦中らしい。数も多く、国の組織を逆に追い払ってるとまで聞く。」
「ってことは今までとは違い、反対派の連中が大阪を制圧してるってことか?!」
「そういうことだ。だから同じ目的だと伝えれば協力し合えるはずだ。」
「まだまだ仲間がいたってことか。やはり次目指すべきは大阪だな。」
「それからそこのリーダーの名前は【ツカサ】ってやつで【ネクサス】という民兵組織を立ち上げたそうだ。国の連中が手を焼くということは『tears』と同等かそれ以上かってとこだ。」
「これは行く価値があるな。ティナ。」
「うん。」
「向こうは『tears』のことを把握していないかもしれない。大人数で突入するのは賢くないだろう。」
「それに噂ではツカサというのは変わった奴らしい。」
「どんな奴なの?」
「なんていうか考え方が中立のような奴だ。だから『tears』にも国にもつかない可能性がある。それはつまり【ネクサス】は敵にすらもなりえるということだ。」
「そういうことか。それならこの人数で攻め込むのは帰って危険か。」
「それなら私とミナで乗り込もうと思う。」
「だが、もし戦いになったらどうする?2人だけではどうすることもできんぞ。」
「大丈夫。幾度も困難を乗り越えてきたんだ。ある程度の状況判断はできる。それにミナと一緒なら大丈夫だから。」
「ティナ…。」
「…。わかった。だが、俺たちは『tears』だ。万が一、2人に何かあった時は黙ってはいないからな。『tears』のトップを守ることが俺たちの役目でもある。」
「だったら俺のカラスで常にティナとミナを見張っておく。それならセイジのおっさんも安心だろ?」
「おっさん…?ああ。まぁな。それなら安心だな。ハヤト頼んだぞ。」
「おう。」
「ふふ。じゃあそれで。もしツカサと話がついたらみんなに伝えるからそのときまた合流しよう。」
みんなは首を縦に振った。
「ティナ俺も連れて行ってくれないか?『フェニックス』の代表として俺も会っておきたい。」
「わかった。リクはいろいろと詳しそうだから頼りにしてる。でも力が使えないあなたは危険だからもしもの時は後ろに下がってね。」
「ああ。能力を持たない奴ぐらいなら対処できる。足手まといにだけはならないようにするよ。」
「そういえば写真があるとか言っていたな。俺たちにも見せてもらえないか?」
ティナは写真を見つめゆっくりと机に置いた。それを覗き込むようにみんなは写真を見た。
「この人って…ティナ?いや違う。もしかして【星咲セナ】…?」
「うん。そうみたい。写真の後ろに星咲セナと書いてある。」
「これは…。確かにティナに似ている…。似ているというよりまんまじゃないか。」
ミナも写真の星咲セナとティナの顔を見比べた。
「嘘…ほんとだ。私よりどっちかというとティナにそっくり…。」
「うん。私もびっくりした。こんな写真撮ったっけって思うぐらい似ていた。」
「この星咲セナさんは国のトップである須藤と交えたんだよね。相当強かったんだろうな。もっと時間があれば須藤を倒すことだって、できたかもしれない。」
「うん。でもあの時の判断は間違っていなかったと思うんだ。あそこでリベラティオごと飛ばしていなかったら確実に悲惨なものになっていたとおもう。江口タカシが殺され星咲セナも殺され、そのときにいた2人も死んでいたはず。私たちは存在すらしていなかったことになる。」
「そうだね。私の先祖が有坂サヤだとしたら私はここにはいない。星咲セナさんに救われた。」
「五十嵐と須藤を倒し、リベラティオをどうにかするっていうのがどれほどのものか痛感させられるな。」
「うん。でもきっとなんとかなるはず。ううん。するしかない。」
「ああ。とりあえずは仲間を集めるんだ。そして奴のやろうとしていること、正体を民衆に全部ぶちまけるんだ。奴がこれ以上好き勝手できないようにな。」
「ええ。私たちの手でリベラティオと須藤をどうにかしよう。きっと策はあるはずだから。」
「じゃあ明日の早朝に出発しよう。今日はこれで解散で。」
「ああ。わかった。」
みんなはそれぞれ体を休める為に横になったり、仲間同士で今後のことを話していた。
(先祖の想いは私たちが引き継ぐ。だから見守っていて。絶対この戦いを終わらせるから。)
私は先祖である星咲セナの写真を見ている内に眠ってしまった。




