31話 明かされていく過去
タカシはそれを読むと同時にレポートに内容をまとめ、書き写した。
【この研究所は、石が手に入った時を見越して作った。俺はある場所で古い書物を発見した。恐らく80年近く前のものだ。そこには石のような形をしたものが描かれていた。文字は燃えていたり破れておりほとんど読めたものではなかったが、3年かけてようやく解読に成功した。】
【その石のようなものは【力】を引き出すことができるとのこと。書物には絵が描かれていた。描かれていたのは石の周りに大勢の人が横たわっていた絵だった。これは石によって死んだ人間を現した図だろう。だが真ん中に1人だけ立っていた。この人物こそ、この書物を書いた男だ。】
【そして石の絵も描かれており、非常に美しい見た目をしていた。周りには煙を纏い神秘的な光を放っていたそうだ。この石の名前は…【リベラティオ】という名前で呼ばれていた。このリベラティオは人を生贄にすることにより力を増していったそうだ。】
【それと同時に体へと注ぎ込める力も上がっていった。しばらくすると普通ではありえない力を使うことが出来るようになった。遥かに高い身体能力を得たり、不思議な力を使うことができるようにもなったそうだ。男は石の力によって国を治めるまでになっていた。】
【いい国とは程遠いものだった。弱いものは排除し、強いものだけが生きることを許されたような国。常にいろんな国と戦い沢山の命を奪っていった。何千、何万と。しかし予想もしていなかった出来事が突如起こった。それはある人物が現れたことによって一変した。もう1人力を手にしていた人物がいた。男が国を治める前に石でいろんな人を実験していた時の生き残りの可能性がある。】
【この人物は男のやり方に疑問を抱いていた。そして持っていた石をなんと不思議な力で消したのであった。その瞬間、今まで使えていた力がすべて使えなくなった。どこへやったと問うと『私にもわからない。だけどもうこの世界にはない。リベラティオなんてこの世にあってはいけない。お前はもう終わりだ。』と言った。その人物もその瞬間に力を失った。】
【力を失った男は一気に地位を失い自分の国まで失った。もう逃げ場を失った男は最後に今まで苦しめてきた民衆によって命を落とした。殺される最後の最後までこの書物を書いていたみたいだ。どうやらそのリベラティオを消した人物はこの男に代わり国を治めていたそうだ。その人物の名前は【星咲サナ】。こいつがいなければリベラティオを使い世界を牛耳ることができたのに…。】
【このリベラティオには更なる秘密がある。大勢の力を持ったものを吸収することによって完全なる力になるということ。俺が出来なかったことを子孫に託す。これを読んだらまずリベラティオを見つけろ。あれは【星咲サナ】の力によって未来に飛ばされたはずだ。なんとしても奴の子孫を根絶やしにしろ。最後に【須藤ヒロ】という名が刻まれていた。これは書物を書いた男の名前だ。】
【リベラティオの存在を知ってからありとあらゆる手を使い何年も何年も探したが一向に見つからない。それさえあれば世界を牛耳ることだって簡単だ。だがそれと同時に邪魔をするやつが【星咲サナ】のように現れるだろう。そいつの子孫を殺してようやく計画を進めることができる。その前にまずはリベラティオを見つけることが最優先だ。】
「そんなに昔からこの石は存在していたとは…。そしてこの石には名前があったのか。名前は【リベラティオ】…。」
「ん?まだ何か書いてあるな。』
紙の一番下にこれを書いた者の名前があった。
『【須藤レオ】…。この文にでてきた【須藤ヒロ】と名字が一緒だ。まさか国のトップの名前が【須藤レオ】…?」
「何故、こんなものがここにあるんだろうか?俺にこれを読ますためにわざと置いていた?いやそれは考えすぎか。回収し忘れた可能性だってある。」
「だが石の秘密が大体わかった。この石は何世代にも渡って存在し続けていたということか。とんでもなく恐ろしいのは石もそうだが使う人間によってようやく石の力が発揮する。先祖がやっていた事と【須藤レオ】がこれからやろうとしていることがほとんど一緒だ。まるで意思を引き継ぐかのように。俺はとんでもないものを見てしまったのかもしれない。非常にまずいことになった。この研究をこれ以上進めるのは危険な気がしてきた。」
「それに【星咲サナ】この名前にも聞き覚えがある…。そうか【星咲】というとあの女と同じ名前だ。偶然なのかたまたまなのか石がすべてを引き起こしているようにも感じる。」
タカシは急いで3人が寝ているベッドへ向かった。
「おい。起きろ。ちょっといいか?」
「…。」
「【星咲サナ】という名前に心当たりはないか?」
「…知らない。」
「本当か?本当に心当たりはないのか?」
「いきなりなに?知らないって言ってるでしょ。」
「そうか。たまたま同じ名前だっただけか。」
「その人がどうしたの?」
「いや、1つ訪ねたい。君たち2人にもだ。国のことを正直どう思う?国というよりは国のトップだ。」
「どうって戦争を招いたことに対して納得がいかない。大勢の人間が死んでいったんだ。しかもあの男には裏が何かありそうだ。とんでもない秘密を隠してる気がする。」
「私もなんか怖い。あんな人が国のトップだったなんて。できればもう会いたくない。」
「セナはどうだ?」
「はっきり言うと人の顔をした化け物。人を人だと思っていない。戦うことしか頭にない。何故そんな質問を?あなた国の人なんでしょ?」
「いや…俺も実話、お前たちと同じように思い始めてきたとこだ。あの五十嵐という男に石を強制的に触らせたときからやばいと思った。」
「…。」
「率直に言う。君たちを逃がしたい。この石は呪いの石だ。これが奴の手に渡ったら最後だ。」
その場の空間はシーンとした。
「逃げるってどこに逃げるの?相手は国のトップ。生きて逃げられるわけがない。」
「わかっている。でも君たちが力をつけたところで結局はあの男に殺されるだろう。というよりは吸収されるはずだ。」
「吸収…?」
「説明するよりは直接見てもらった方が早いかもしれない。」
タカシはさっきまとめたレポートを3人に見せた。
「力を持っているやつを吸収するってことは殺すってことか…。」
「そういうことになる。このままでは君たちが力を更に付けたときが最後だ。」
「その石がこの世界になければいいってこと?」
「え?ああそうだが。」
「壊すことも出来ないのか?」
「恐らく無理だ。何かで守られているのかびくともしない。」
「このレポートを読んだことも バレているに違いない。これほどまでに求めていたのに何故、石を俺に返したのかはわからないがまだ事を起こすタイミングではないということかもしれない。何か策を考えなくては…。」
「…」
「そうだ。セナ、君の写真を撮らせてもらっていいかな?」
「何故?」
「データに残すためだ。協力してほしい。もし俺が駄目な時、このレポートを参考に動いてくれる奴がいるかもしれない。無理なら似顔絵だけでも…。」
「わかった。」
「本当にいいのか?」
「うん。」
「ありがとう。ここから出すなと言われているが、こんなとこで撮るのもあれだから屋上へいこう。病院内はだれもいない。ただ目隠しはさせてもらう。」
「わかった。」
「君たち2人はここで待っていてくれ。」
そしてタカシはセナの手を握り屋上へと出た。
「よし目隠しを外していいぞ。」
セナは眩しそうにした。
風も強くスカートがなびいていた。
「じゃあこっちを向いて。」
「早く撮って。風でスカートが。」
「あ…ああ。わかった。すまない。じゃあ撮るぞ。」
シャッターが切られた。
「ちょっと表情は硬いが、レポート用だ。問題ないだろう。それでは戻ろう。」
また目隠しをし手を引っ張り研究所へと戻った。
「どうだった?外は?」
「気持ちよかったよ。戦争中とは思えないぐらい空が綺麗だった。」
「そうだな。こんな戦争早く終わればいいのにな。これもあの【須藤レオ】が原因だ…。」
「…さっき言っていた石を別のとこに飛ばすことが出来れば力が使えなくなるって話だったよね?」
「信憑性はない。だが、このリベラティオという石が存在してることが原因なのは変わりがない。これがこの世から消えれば力を使えなくなるはずだ。」
「壊すことも出来ないってことだよな?」
「ああ。出来ない。この光ってるもので守られているんだ。」
「ちょっと貸してもらえる?」
「だめだ。力を持った状態で触った場合どうなるかまだわかっていないんだ。危険すぎる。」
「でもどうなるか知りたいんじゃないの?」
「それは知りたい。だが、もし万が一なにかあってからでは遅い。それに…。」
「それになに?」
「これ以上、君を危険に晒すことはできない。」
「…。私なら大丈夫。それにさっきの【星咲サナ】がもし私と関係があるならなにかわかるかもしれない。」
「そうだな…。わかった。ただもし少しでも体に異変が起こったらすぐに離せ。わかったな?」
セナは軽く頷くとリベラティオをタカシから受け取った。
リベラティオからオーラが現れセナの体に吸い込まれていった。
「な、なんともないか?」
「大丈夫。痛みも苦しみもない。なんだか心地よい暖かさを感じる。最初に持った時とは全然違う。なんていうか石が私を受け入れているような感覚を感じる。」
「受け入れている…?」
タカシはレポートを手に取った。
「石を持っていると何だか体中から力がみなぎってくる…。」
「何か力が使える瞬間ということか?」
セナは左手でリベラティオ持ちながら右の手を前につきだした。
するとほとばしったオーラが放出された。
「なんていうオーラの力だ…。それに色が赤い。こんなのは初めてみた。」
「これが私の力…?」
「おいそれ大丈夫なのか…?俺たちの白いオーラとは全く違うぞ。ってなんで俺の体からもオーラが出てんだ?」
「ほんと。なんか私まで共鳴している…。」
「これは驚いた。セナのオーラが放たれたと同時に2人までオーラが体から出始めた。」
タカシは急いでレポートに書き記した。
そしてゆっくりと前につきだした手を下げた。
オーラが体に戻っていった。 その瞬間2人のオーラも消えた。
「なんだったんだ?今のは…」
「わからないけど何故かオーラが体中に満ち溢れた。耐えられない所か逆に体全身に力がみなぎった。」
「それで何か力は使えるようになったとかはないか…?」
「ううん。それはない。特別何か出来るって感じもない。」
「おかしいな。それだけのオーラを出せて何もできないなんて。俺でも出来るのに。」
(そうだ。これだけのオーラを放っているのに何もできないというのはおかしい。)
サヤが何かを考え込みながら口を開いた。
「気になったんだけど、あの五十嵐って男とトップの須藤って男も石に耐えられたってことはなにか力を使えるようになっている可能性あるよね?」
(そ、そうか。あの2人も石に触れて力を身に着つけていたんだ。もしそれが世界を牛耳れるほどの力だとしたらいよいよまずい。)
「そろそろ、実験体が運ばれてくる時間だ。」
「まだ実験を続ける気?」
「…。いいやもう必要ないだろう。」
「じゃあ何をするの?」
「…。お前たちの協力を必要なことだ。」
「私たちの協力?」
「ああ。国のトップである【須藤レオ】を倒そうと思う。」
「え?本気で言ってるの?」
「ああ。本気だ。もしかしたらまだ間に合うかもしれない。お前たちの力があれば勝てるかもしれない。」
「もう既に力を使えるようになってたら?」
「その可能性も十分にある。だがこのまま時間が経てば経つほど手が付けられなくなる。それになによりここで食い止めないと紙に書かれていたとおりになればもう終わりだ。」
「なるほど。それでどうするの?」
「嘘をつく。」
「嘘?」
「ああ。もうじき国のやつらが実験体を運びにやってくる。その時、俺はお前たちの体が悪いという。このままでは死んでしまうと。やつはお前たちの力をほしがっているというならすぐに駆けつけてくるだろう。そこで俺はやつと話時間を稼ぐ。」
「そこでお前たちの出番だ。その体に宿った力で奴を殺せ。」
「俺たちがやるのか…?」
「お前たちにしかできない。少なからずリベラティオの力を吸収して生きているんだ。俺はお前たちに賭けたい。」
「わかった。私はやる。」
「セナだっけ?お前力使えないだろ。」
「使えないけどリベラティオを握った時に感じた感覚ならいける気がする。」
「そうだよ。ここでやらないと多くの犠牲がでる。私たちにしか出来ないっていうならやろうよ。」
「じゃあ、リベラティオはセナに渡しておく。さっきのを見て思ったがお前が持っていた方がいいような気がする。」
セナはタカシからリベラティオを受け取った。
「本当にいいの?」
「俺が持っているよりはいい。お前たちは国の連中が来たら苦しそうにしてくれ。」
「わかった。」
(まさかこんなことになるとはな。国のトップにこれから俺は手をかけようとしている。失敗しても成功しても待ってるのは死だ。だが、これで多くの人達…それにこの国…これからの世界が救われるならほんの小さい犠牲だ。これでいいんだ。)
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『タカシの研究データは残り1枚。もう完全に研究を捨て国のトップである【須藤レオ】を倒そうと試みていたのだろう。このデータを読んだときこの光景を僕はどこかで見たことがあると思った。そう【tears】のようだった。重なって見えるぐらい似ていた。『tears』が読んでいることを想定してこの最後のレポートを残す。この最後の1枚を読んだ後、君たちはどう感じるのか。現実を受け止め、それでも国と戦う覚悟があるのか。これを君たちが読んでいるときには僕はもうこの世にいないだろう。だから少しでも君たちに真実を知ってもらいたい。そしてここに書かれていることがどんな内容でも諦めず前に進んでほしい。覚悟が決まったならタカシが最後に残したこの研究データを読んでくれ。』
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「日付が新しい。これはカズヨシが俺たちが病院に来る少し前に書き上げたものか。」
「これを残して元々死ぬつもりでいたということだ。その後どうなったかはその最後の一枚が教えてくれるだろう。覚悟がいるということはあまりいい内容ではなさそうだがな。」
「ティナ、いろいろ思うところはあるが、最後まで読んでくれ。この後どうなったのか知りたい。」
「このタカシって研究者は国のトップと戦うことを決めたってまるで私たちみたい…。それに…」
「星咲セナ…。これって多分…」
「いやまだ確証はない。レポートを最後まで読まない限りわからん。」
「そうだな。ティナどうする?続けるか?」
「もちろん続ける。石もだけどこの女性がその後どうなったのか知りたい。国のトップを倒せるヒントがあるならどんな最悪な結末が書かれていても受け入れる。」
「わかった。じゃあ続けてくれ。」
ティナは最後のレポートを読んだ。




