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【漫画連載決定】Reason for tears  作者:
past and future
3/50

3話 聖戦前の休息


(何時間過ぎたかもわからない。もしかしたらまだ数分…数十分しか立ってないのかもしれない。少しの時間でいろいろなことがありすぎた。)


(起きなくちゃ。起きてみんなの声が聞きたい。) 


ゆっくり目を開けると天井の明かりが眩しかった。


私は周りを見渡した。するとそこにはレンとトオルがいた。


「ティナ…!おい!みんなティナが目を覚ましたぞ!」 


意識と視界がはっきりしてきた。バニラも私の頬を舐めていた。


奥にいるのは紛れもなく私がよく知っている、イオリとヒマリだった。 


「ティナちゃん!」 


「ティナ!」


「ヒマリ…。また会えてよかった。」


ヒマリが泣きじゃくりながら私に寄り添ってきた。


「生きていてくれて本当によかった。心配したんだから…。」


イオリも口を開いた。


「ティナここは俺の家の地下だ。もう大丈夫だ。やつらはここまではわからない。」


私はすぐに状況を把握した。この2人があの場を助けてくれたこと、レンたちが私を運んでくれたこと。


「みんな心配かけてごめん。私のせいでこんな目に合わせてしまって。」


「気にすんな。生きていてくれて本当に良かった。」 


「そうだよ!撃たれたときは本当にもう駄目だと思ったんだから…。」


「イオリ…ヒマリ…」


『ティナ君、目が覚めたかい?』


「イオリのお父さん…?」 


(そういえばイオリのお父さんは医者だったっけ…。)


私の腕には点滴が付いていた。


「ティナ君は幸い足の傷は大したことなかったよ。トオルくんの方も貫通してくれていたおかげで大事には至らなかった。いつも通り動かせるはずだ。」


「よかった…。」 


(トオルはちゃんとここにいる。守れたんだ。)


私はまだ虚ろな状態ではあったけど、みんなとこれまでの状況を話し合った。


するとイオリのお父さんが口を開いた。


「最初に確認だが、ティナ君は過去を見ることができるという理由で組織の連中から狙われてるということなんだね?」  


「はい。私が逃げ出す時に黒い服を着た男たちが話してました。」


私はこれまでの事、そして私の身に起こってることをすべて話した。


「…。」


イオリのお父さんはしばらく沈黙になった。 


「これを見てくれたまえ。」


「な、なんだよ…これ…」


私は腰を少し起こしレポートのようなものを見た。


そこにはとんでもないことが書かれていた。


【この国は今月をもって日本ではなくなる。新しい国として動き始めると書かれていた。】


恐ろしいのはその次の文だった。 


【もしそれに反対する者、抵抗する者は国民と認めず、始末するとのこと。】


【ただし、従えば命の保証と快適な生活を約束する。この計画が始まったと同時に武装なども許可する。】 


【抵抗するものは市民同士であっても武器の使用を許可する。 従うものは名乗りでよ。これは国の命令である。】


「なにこれ…?」


「これは一般市民に配布されたもので僕はこれを1ヵ月前に受け取っていた。」


「最初は何かの冗談だと思っていたよ。」


「ただ冗談ではすまない出来事が君たちが撃たれた日の前日にわかった。」


「僕は医者としてその日は普通に診察していた。そうしたら急に組織の人間が私の元にやってきて、僕を優先的に基地へ運ぶと言い出した。」


「俺の父さんはどうやら政府の人間にとって必要みたいで俺たち家族は優遇されるって話だったんだ。」 


「そう。医者とか国に関わる人間っていうのは代えがきかないって言われているんだ。そこでやつらの話をこっそり聞いてみた。」


「そうしたらティナって女の行方を探しているって話を聞いちまったんだ。すぐにヒマリに連絡してこのことをすべて話した。」


「その時、ネットを見たらティナちゃんの写真が政府のページに張り出されていた。『始末対象』と。それを見た私はティナちゃんにメールを返さなかった。ううん。正確には返せなかった。」


「そんなことが…。私はネットなんてあんまり見ないから知らなかった。」


「俺もさっき調べたんだが、ひどい記事だった。 ネット情報なんか半信半疑なもんだから誰も信じていなかったけどな。」


「ティナ君をなんとかして逃げ出させられないかと考えた僕は、息子の携帯でトオルくんに暗号メールを送っておいた。」


【水ん流せなさきり山ん下ろ。9時ぬ待て。】


「シーザー暗号ですか?」


「そう。一文字ずらした文面のことだ。一文字ずらすと」


【水を流すとこから山を下れ。8時に待つ。】  


「こうなる。」


「そしてこのメールは組織のやつらにも読まれていたようだ。」 


「単刀直入に言う。僕たちは組織を完全に敵に回してしまった。これからは普通に生きていくことは間違いなく出来ないはずだ。」


「わかっている。俺は死ぬ気で逆らい続けてやる。」


「レン。俺はじゃねえだろ。 俺たちだ。」 


「ええ そうよ!イオリも同じ気持ちだよね?」


「当たり前だろ。ダチが命を狙われているのに放っとけるわけがねえよ。それに何が新しい国だ。俺はそんなもん認めねぇ。」


「みんな…。ありがとう。」


イオリのお父さんが少し微笑ましい顔になったと思ったら顔つきがすぐに変わった。


「よし。僕も大人として全力で抵抗する。それでまず外の状況なんだが…」


イオリのお父さんは見せたいものがあるらしくみんなに説明した。


「まず外の状態をまず見てくれ。」


イオリのお父さんがスマホから外の映像を見せてくれた。


周りは火事になっていたり、人々が逃げ回っている様子が映し出されていた。


「ひでぇなぁ…。こんな光景 映画でしかみたことがねえよ。まるで公開処刑だ。」


どのチャンネルも全部死んでるが、特別に用意された国放チャンネルというものが設けられたようだ。


「本当に人間なのかこいつら…。」


「殺し合っている…。」


私はその画面をぼんやり見ていた。


(そう、人というのはあっけなくそしてもろい。時には残酷にもなる。見慣れていない光景でも何も思わなくなってしまっている自分がいた。)


「これが外の状態だ。 そしてさっき国が発表した国民たちの支持率。」


「う、嘘だろ…。」


8、9割の人間がこの計画に賛成していた。


「終わってんな…。」


「昨日まで普通にすれ違っていた奴とか学校の先生とか俺たちの親までもが殺しにかかってくるってことか…?」


(今の私にとってこの程度そんなにビックリすることでもない。何故なら元から人なんて群れて生きているようなもの。対複数人だったら絶対に複数で強くなれる方に立つ。こんなのネットの世界でも普通にあった。誰かが常に傷つけ合い、平気な顔で偽善者ぶって普段の日常を生きている。口では助けたいだの、守りたいだの言っていても結局は裏切る生き物。不利になると強い方に立ち、過ちを何度も繰り返す。 挙句の果てに最後にはそれが本当に正しい選択だったと御託を並べるんだ。この映像に映って滅茶苦茶しているやつが正にそれだ。平然と人の事を複数人で簡単に殺したりして勝った気でいる。これが正義だと言わんばかりに。これが新しい国のやり方ならばこんな国捨ててやる。)


「これからもっと大勢の人たちが殺し合い、大切なものを奪い続ける。私がこんなやつらすべて殺してやる。」


「あれ…?」


「おい。 ティナどうしたんだ急に? 」


「いや…なんでもない。」


【大切なものを奪うやつなんて生きてたって意味がないんだ。何かを守るためにみんな必死に生きようとしている。それを奪うやつは私がすべて壊してやる。】


「ごめん。まだちょっと疲れているみたい…。」


「そ、そうだね。ティナちゃんの言っていることが正しいよ。」


「そうだな。おれらは現に殺されかけた。向こうがその気ならこっちも抗うまでだ。」


「そ、そこでだ、1割でも同じ考えの人たちがいるならば希望を捨てちゃだめだ。僕は医者だ。人を直すことしかできないが1割の人間でも治療する役目が残っている限り父さんもみんなの意見に賛成する。 だが、絶対に無茶はしないでくれ。」


「ええ、わかっています。」


「とりあえずここもいつまで持つか、わからない。今は少しでも休んで今後の計画を立てるとでもしよう。」


「はい。」 


みんなは今後の為にいつ襲われるかわからないこの地下室で仮眠を取ることにした。


「ティナちゃん…起きてる?」


そう言ってきたのはヒマリだった。


「起きているよ。眠れないの?」


「うん。それもそうなんだけどミナちゃんの事覚えてる?」


「…。」


「う、うん。」


「さっきミナちゃんがティナちゃんを売ったとか裏切ったとかレンくんが言っていたけどそんなことないって私は信じているよ。」


「わかってる。私もそんなことないって今でも信じてるから。」


「うん。よかった。」


「だからもし生きているなら絶対会えるはずだからその時確かめてみる。」


「うん。昔あんなに仲良かったのにそんなことすわけがない。そしてミナちゃんも私たちと一緒に戦ってくれるはず。」


「…うん。」


(ヒマリはどんな結果になっても信じようとしてる。私だって…。本当は心の底から信じたい…。じゃあなんで姿を見せない?何か理由があるに違いない。信じられなくなったら終わりだ。)


「じゃあティナちゃんも、もう少し休んでね。」 


「うん。ありがと。ひまり。」


そして朝がやってきた。地下だから朝なのか夜なのかもわからない。


唯一時計が朝の9時を指していた。 


どうやら地下はまだばれていないようだった。 地下なのもあり外の音などは一切聞こえてこない。


「みんな起きているか?」


「はい…。」 


みんな寝不足みたいだった。


まともに寝れるわけがない。わたしも簡易的に治療しているだけだから傷口がまだ痛い。


「朝食はこんなものしかないが、我慢してくれ。」


イオリのお父さんがスープとパンを出してくれた。


今朝はみんな食欲はあったようだ。食事が今一番、気を休められる時間と言ってもいいくらいに。


「バニラ ごめんね。こんなことに巻き込んじゃって。これお食べ。」


私はちぎったパンをバニラに与えた。


「ワン!ワン!」


「シー!大きい声出しちゃだめ!」


「はは、大丈夫だよ。水もある程度はあるから安心してくれていい。それにここの地下は防音でまったく外には漏れないんだ。」


「はぁ…。とりあえずご飯食べたらこれからどうするか考えないとな。」


でも何も思い浮かばなかった。浮かぶわけがないが正しい。まだ16歳でこんな境遇にあったのにすぐにどうするか決められる方がおかしい。


みんなも最初は意気込みがあったけど時間が経てば経つほど不安に駆られていった。


私は居ても立っても居られなくなり口を開いた。


『みんな…ここを出よう。』


「…。」


するとみんなが私を見た。


「ティナはここを出てこれからどうしたいんだ?」


「まずはミナを探す。手掛かりだけでもいい。そして最終的には組織がやろうとしていることを食い止めたい。」


「そうだな。俺もティナの意見に賛成だ。こんなとこで野垂れ死ぬなんてありえねぇ。」


「よし、決まりだな。」  


「おじさんはここにバニラと一緒に残ってもらえませんか?連れて行ってもしものことがあったら嫌なので。」


「ああ、わかった。責任をもって見るよ。その代わり絶対死ぬなよ。くれぐれも気をつけてな。」


「ええ、わかりました。じゃあ準備して12時に出発しよう。」


「ティナちゃんこれサイズ合うかわからないけど服と靴持ってきたからこれに着替えて。サイズが合うかわからないけど。」


「ヒマリありがとう。じゃあ早速着替えさせてもらうね。」


「っておい!ちょっと待て!ここで着替えんなって。俺らがいるって。」


「え?あぁそうだったね。」


「もうティナちゃん女の子なんだから見せちゃだめだよ!」


「別に見せたくて見せてるわけではなくて…小学生の時、着替えなんて恥じらいがなかったから…。」 


「もうおれらそこまで子供じゃねぇだろ。あっち向いてるから。」


「うん。じゃあちょっと待っててね。」


「ティナちゃん手伝うよ!」


イオリはレンとトオルに耳打ちをした。


「レン。あのときのティナの目を見たか?」


「ああ。なんていうかやり慣れている目。今までに何人も殺ってきたような目だった。」


「それはやっぱり未来のティナと何か関係してる可能性があるのかな。」


「知らねぇよ。だが、今のティナは精神的にもいろいろありすぎて不安定な状態だ。自分を見失わなければいいが。」


「ミナも生きててまともに話せる状態ならいいんだが、万が一は備えとかないとな。」


「そうだな…。」


「はい!出来たよ!男たちもういいよ。」


「へぇー。ティナ似合ってるな。なんていうかかっこいいわ。」


「恥ずかしいな…。こんな服滅多に着ないし。でも動きやすい。ありがとうヒマリ。」


「よし準備出来たようだな。」


「ミナの居場所だがどこにいるんだろうな。」


「国家側にいるとのことなら情報は組織の人間が持っているはずだ。」


「なるほど。ミナを探すには組織の連中に近づけば手掛かりがありそうだな。」 


「そうだ。それとこの地図を渡しておく。スマホの使用はこちらの居場所がばれてはいけないから使用は控えた方がいいだろう。」


「わかりました。」


「そしてさっき僕の親友の医者から情報をもらったんだが、軍隊らしきやつらが巡回しているらしい。 もうほとんどの人が軍の車に輸送されたみたいだ。一般人に武器を渡してる姿も確認されているらしいから注意すべきは組織だけではない。」 


「民兵ってことか。それでその人は今どこに?」


「ああ。友人は病院内に立てこもり戦っているらしい。それが、この大学病院だ。もしかしたらかなりの数の同盟がいると考えてもいいだろう。まず目指すべき場所はここだ。」


「了解です。」 


「そうだ。このナイフを持って行ってくれ。それから君たちを待ち伏せしていた奴らの銃だ。こいつも持っていくといい。」


私たちは自分の手の倍はあるナイフと銃を受け取った。これを使うということは息の根を止める前提ということ。やらなければやられる。 


銃の前ではおもちゃ同然のこのナイフでも使い方によっては銃に勝るはずだ。


(そう。ステルスして不意を狙えば問題ない。軍とか組織には対抗できなくても武器を持った程度の一般人ぐらいならなんとかなるはず。銃はよっぽどの時しか使えない。銃声でこっちの居場所がばれるからだ。だけど確実に仕留めるなら間違いなくこれだ。)


「よしそろそろいくか。」


「ええ。」 


「じゃあドアを開けるぞ。」 


ドアが開いた瞬間に眩しさと同時に銃声、火災、見たことがない光景が私たちの視界に入った。


でもそんなのは既に想定内。覚悟決め、私たちは歩き出した。


【こうして私たちの戦いは始まった。外はどうなっていて、今どれくらいの人が生きてるのだろう。私たちと同じように戦おうとしている人たちはどれくらいいるのだろう。不安と恐怖でいっぱいになる。でも昨日までの私ではない。どんな現実が待っていても、逃げない。】



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