2話 生きる意味と生きる目的
~夜3時~
『もう逃げられない。立ち向かうときが来た。やらなければやられる。大丈夫あなたは一人じゃないから。』
夢の中で何かとまた会話をしていた。
『目覚めたとき、これから訪れる現実に真正面から向き合わなくちゃいけない。最初は辛いことばかりだけどきっと大丈夫。仲間を信じて立ち向かえばきっと乗り越えられるから。そしてあの子を救って。私を救って。』
(変な夢…。まるで現実で語りかけられてるような気分。)
(それでも意味がなんとなくわかってしまう。あの子というのもなんとなく誰なのかわかる。まるで私が体験してきたことが植え付けられてるような気持ち。)
その瞬間、夢から現実に戻される感覚を覚えた。
『ありがとう…。私の力をあなたに託す。目覚めてティナ。』
私は胸が高まり、目が覚めた。
それと同時に携帯も鳴りだした。
私は頭がはっきりしない状態ではあったけど、電話に出た。
「おい!ティナ!起きろ!」
「え…?レン?」
「ティナ聞こえるか?!今すぐ家を出ろ!」
「トオル…?」
「早くしろ!くそ!なんだよこいつら!」
「ねぇ!レンどうしたの…?!」
「ティナよく聞けよ。お前は変なやつに狙われている。」
「トオルが教えてくれたんだ。ティナを狙ってるやつがいるって。」
「ちょっとまって!私が狙われてるってどう言うこと…?」
「話は後だ。昔よく遊んだ裏山の貯水槽覚えているか?あそこで待ってる。今すぐ来い!」
「誰にも見つかるなよ!」
「え…? わかった…。」
『レン、追ってくる奴は俺がなんとかするからお前は前のやつを頼む。』
『ああ 任せろ。』
パン パン…
電話が切れた。
「どういうことなの…?」
(それに今の音は…?)
「きゅーん…」
バニラが心配そうに私の顔を見つめて鳴いた。
「ごめん。連れていけないよ…。鳴いたら見つかっちゃうから…。」
「絶対にすぐに戻るから大人しくしといて。」
『もしあなたの大切な友達、家族が明日いなくなったらあなたならどうする?』
「…。やっぱり置いてはいけない。」
置いていったら家族を失う気がした。
私は冷静になって鞄にバニラを入れた。ちゃんと顔が出るように。
「ごめん少し苦しいかもしれないけど我慢してね。」
「わん!」
(そんなやばいことになってるの…?)
私は家から出る前に、窓から外を覗いた。
何人かの中年男性の声が微かに聞こえてきた。
「本当にそんな女子供がターゲットなのか?」
「ああ、間違いない。重要危険人物として国家から名前が挙がったんだ。」
「どんな女なんだ?」
「詳しいことは話せないがお前が『過去』に行けたとしたら今、国家がやろうとしていることにどう対処する?」
「あの作戦か…。そりゃあ、止めるかなかったことにするだろうな…。ってまさか…?」
「ああ、そういうことだ。 あと5分後に突入する。上からは銃の許可も下りている。 生きて連れてくることが望ましいが最悪は殺してもいいそうだ。」
「それに上からの命令ではその女はとんでもなく強いらしい。 銃なんて下手したら効かないかもしれないとか言うんだ。」
「銃が効かないって…。いくらなんでも高校生の女だぞ?がそんな化け物なわけがないだろ。」
「まぁ俺も実際見たこともないから嘘かもしれんが、上層部が言ってるんだ。お前も覚悟はしておけ。」
「…。わかった。俺たちは命令に従うだけだ。残り3分。」
(あれは学校にきていた男の人たち…?)
「違う…。過去になんて行けない。あれはただの私の妄想…。」
「それにそんなこと友達にしか話していない… まさかレンたちが…?」
「ううん。そんなことない。」
(もしおびき出すための口実だったら…?)
「違う!レンたちはそんなことするわけがない!その証拠に私を逃がそうとしてくれている。」
(夢で聞いたあの言葉。私は何かを託された。それが何かはまだわからない。)
「残り1分。女は寝ているのか? 物音ひとつしないな。」
「ああ。間違いない。帰ってから誰も外にでていない。明かりも確認している。」
「それとこの作戦は例の方には伝わっているのか?」
「ああ、後日直接こちらに来られる予定だ。それまでに身柄を確保する。」
(例の方…?今は考えている暇はない。家を出なくちゃ。)
「わかった。抵抗したらすぐに射殺しろ。」
「了解。」
私は家の裏にある窓から逃げ出した。 裸足で逃げてきたせいか足が痛くて歩きづらい。
「お願い。いい子だから絶対吠えないでね。」
「きゅーん…」
それと同時に外から突入のサインがかかった。
「よし 突入だ!」
窓ガラスは割られ扉を破壊する音が響き渡った。
周りが騒がしくなっているのがすぐにわかった。
『おい!女がいないぞ!クソ!窓が開いている!裏口から出たのか!追いかけろ!』
そして私はもういないはずなのに銃声が鳴った。
パン!…パン!…
(え…?何を撃っているの?)
私は怖さのあまり周りの騒がしい音で精神状態がおかしくなりそうになった。裸足で足を怪我している痛みすらも感じる余裕がなかった。
貯水槽へは私の家の裏の山に繋がる道に1つと少し離れたとこに2つある。
レンたちはそのもう2つ目の道から来るはずだ。
私は全力で走った。
『おい!女がいたぞ!くそ。家にはいなかったのか。まぁこれも上からの命令で先回りしといて正解だった。』
(え…なんでバレたの?上からの命令って私の逃げようとしている場所がバレてる…?)
「大人しくしろガキが。」
「やめて! 離して!」
バニラも吠える。
「くそなんて力なんだ!」
私は全力で振り払おうとした。だけど男は私を掴む手を離さなかった。
「死にたくなければ抵抗するな。お前はもう逃げられん。」
それでも激しく吠えるバニラ。
「うるせぇこの犬!」
男はバニラの顔を鷲掴みにした。
すごく苦しそうだった。
(なに…?この感情…。熱い。体が熱い。)
私はその手を振り払って今度は男の顔を鷲掴みにしていた。
「もう同じ過ちは犯さない。上のやつに伝えろ。どれだけ先を知ってたとしても私が塗り替えてやるって。 今の私は昔の私ではないって。同じようなことをしたら今度こそ殺す。目が覚めたらそう伝えろ。」
何かが私に宿った気がした。
それと同時に私はその男を気絶するまで殴っていた。容赦する余裕もないぐらいに。私は人なんて殴ったこともない。それでも初めてではない感触を拳は感じた。
「バニラごめんね。守るのに必死だった。」
そんな私を見てもバニラは私の傷ついた右こぶしを舐めた。
「さぁいこう。レンたちが待ってる。」
なんとか山道を登り草をかき分けて貯水槽に向かった。
~15分後~
「おい。起きろ!おい!」
「くそ…女がこの先の貯水槽に…。」
「知っている。上層部から連絡が今入って俺たちも応援にきた。」
「じゃあ逃げたことも…?」
「そうだ。お前がここまでボコボコにされているということはあの女がやったのか?」
「あいつは化け物だ…。連れていた犬を黙らせようとしたら急にぶちぎれやがった。何発殴られたのかもわからん。あれはまじで殺す目だった。」
「でもおかしいな。犬の死体がない。」
「どういうことだ…?」
「上層部の話では犬を見捨てて女は逃げるだろうって言っていたんだ。」
「あの女そういえば同じ過ちとか言っていたな…。」
「まぁ命があっただけでも良かったと思え。これから俺の部隊は先回りしてやつを追う。」
「了解。」
「ちっ。上層部はこの状況もわかっていたって?馬鹿らしい。そして今、国がやろうとしている計画。 こっちの方がもっとやばい。どうなっているんだこの国は…。まったく理解できん。」
「おい、俺も女を追うために先回りをする。お前たちはここで見張りをしておけ。」
「いえ、我々は例の任務の方にと今、上層部から連絡がありました。」
(また上層部か…。)
「それで上層部の命令は?」
「この地域の市民を選別することです。 従うものは一ヵ所に集めろとのことです。」
「従わないものは?」
「その場で処刑とのことです。」
(一体、国は何を考えているんだ…。そこまでやる必要がどこにある?…まぁ俺は命令に従うだけだ。)
「わかった…。それでは任務を変更して市民の選別に入る。」
その頃、私はようやく貯水槽がある場所まで来ていた。
「ねぇ…レン…トオル…。どこ…?」
私は小声で二人を呼んだ。
すると貯水槽の裏に男性らしき影がこちらに近づいてきた。
一人は肩を押さえゆっくり近づいてきた。
「ティナか…?」
「レン…?」
「怪我はないか?」
そう言ってきたのはレンだった。
私は我を忘れて胸に飛び込んだ。恐怖で足も震えレンの服を掴み涙がボロボロと出た。
「怖かった…。みんな私を殺すって。銃声もしたしもう死ぬかと思った…。」
「ティナ…。生きていてくれて本当によかった。 拳もこんなに怪我してティナも必死に戦ったんだな。」
(私だけど私ではない。でも記憶がない…。)
「それよりトオルの方が大変だって!」
トオルも肩を押さえていた。どうやら撃たれたらしい。
「あいつら本当に撃ってきやがった。ティナを誘いだしたら組織に入れてやる、今後、家族もみんな待遇を良くしてやるって提案してきた。」
「ああ。俺はふざけんじゃねえ!親友に手を出したら許さねえって言ってやった。」
「そうしたら撃ってきやがったんだ。」
「レン…トオル…ごめん。私が全部悪いんだよ。私が変なことずっと昔に言い続けてきたから。」
「いや違う。ティナが言っていたことはあながち間違っていなかったみたいだ。」
「どういうことトオル…?」
「ティナは過去を知ることがマジで出来るってこと。それで今日の夕方に現れた女性って未来のティナなんじゃないかって思ってな。」
「え…?それって未来の私が忠告しに来たってこと…? それとこの状況が私とどう言う関係があるっていうの?!」
「…。」
「それは…。」
「レン。それは俺から言うよ。」
「俺の親が警察って昔小さいときに話したの覚えてるか?」
「うん。」
「親父は今では刑事になっててそういった裏話をいろいろ知っててさ。」
「機密情報でどうやら国が極秘に進めているものがあるって話してたのを思い出したんだよ。」
「この国は戦争を始めようとしている。それを手助けしているやつがいるらしい。その手助けしている奴がこれから起こること、既に起こったことをティナが全部知っていると国に持ちかけた。研究者の話ではその情報は間違いないと判断され、ティナは国の標的になった。国からしたら計画を邪魔される恐れがあるから消したいんだろう。」
「でもそれだとその話を持ち込んで手助けした人が怪しくない?私よりもその手助けした人が一番脅威になるんじゃ…。」
「そこにティナが絡んでいる以前にミナ。あいつもこの件に絡んでいるってことだ。」
「ミナが?! なんで…?」
「さっき親父から聞いたんだ。ミナって女の子が政府を動かしているって。しかもミナがティナのことをすべて話しこれからこの国はティナが脅威になるって。それ以来、ずっとティナの味方をしてくれていた親父が急にミナの言うことが正しいとまで言い出した。そして親父は急にティナを連れて来いっていきなり言い出しやがった。それで俺は家を飛び出しレンに連絡した。」
「親父は冗談を言うような人じゃないし、何かされたとしか思えねえ。」
「でもなんでミナがそんなことを…。」
「わからねぇ。ミナって名前だけで俺たちが知ってるミナって確証はまだない。でもここもそのうち見つかる。 親父も俺たちを探しているはずだ。見つかったらもう容赦しないと思う。」
私はどうしていいかわからなくなった。このままだとレンとトオルそれにバニラも無事では済まない。
(ミナが本当にそんなことを言ったんだとしたら私は許せない。そして今、国がやろうとしてることも絶対に放っておけない。)
(…何考えてんだろ私…。国を放っておけないって…私何かが出来る訳もないくせに…。)
「トオル動けるか…?」
「動くしかないだろ。死ぬ気でティナを守ってやるんだ。」
「だな。ティナとりあえず ここから山を下りられる。どこまで組織の手が回っているかもわからねぇ。 下手したら一般人も敵だと考えた方がいい。 思いたくねぇけど。」
「レンさっきあいつらから銃を奪った。」
「本物か…。」
「ああ。最悪は撃たねえとな。俺は親父から昔習ったことがあるから俺が持っとくぜ。」
『あなたはしか出来る。現にさっきあなたは望んでいない未来を変えた。守れなかったものを守った。』
(またこの声…。)
(あれは私がやったわけではない。ただ私は失いたくないって思っただけ。)
『失いたくないって本気で思ったから出来た。私は出来なかった。自分を守るのに精一杯だった。でもあなたは後悔する前に動くことが出来た。』
(私は守れた…?後悔したくないから…?もう失いたくないから…自分より大切なものを選べた…。)
『そう。あなたの行動1つで今生きられている人。亡くなってしまった人がいることを忘れないで。1つの選択がすべてを変えてしまうから。もし守れないものがあったとしてもそれは運命。受け入れなくてはならない。』
「…。」
「おい!ティナ!おい!」
「え…?」
「あ、ごめん。ちょっとぼーっとしてた。」
「ティナ大丈夫だ。手を染めるのは俺たちだけでいいから。」
「え?いやそれは絶対ダメ。私だって戦う。みんなが死ぬのは嫌だから。」
「…ティナなんか強くなったな。もし今日俺たちに助言してきた女が未来のティナなんだとしたらティナは未来でもちゃんと生きているしおれらもちゃんと生きてるってことだ。」
「う、うん。」
「じゃあ行けるとこまでいくぞ。」
「ああ、後ろは任せろ。」
「私も後ろを見張るね。」
「頼む。」
私たちは1時間近く山道を下りた。普段は静かなこのあたりもパトカーの音がずっと鳴り響いていた。
1時間近く歩いただろうか。私の足も血に染まっていた。痛みなんて感じてる余裕すらなかった。肩を怪我したトオルも一緒だったと思う。
「ティナあと少しで出口だぞ。もう少しだからな。」
知っている景色が見えてきた。町の明かりが鮮明に見えてきたその時。
『おい子供三人が山道からでてきたぞ!』
「なに?!女はいるか?!」
「ああ!例の女かもしれん、場合によっては迷わず撃て。」
ゆっくり武装した男3人が近づいてきた。
「くそ。出口まで張り込まれていたか。」
「はぁ…はぁ…。」
もう私は疲れ切っていた。足の感覚も感じなくなるほどにボロボロだった。
「レンごめん。私の事はいいから先に…。」
「死んでも絶対守るから後ろに下がってろ!」
トオルは肩から血が滲んでいるのにも関わらず持っていた銃を構えレンと私の前に立った。
「ちっ 目標以外にも関係ないのがいたか。それも子供3人も撃つことになるとはな…。」
「あいつも銃をこちらに向けている。何の問題もない。あの2人も仲間ってことでターゲットにこの時点で入った。 撃て。」
「りょ、了解。」
「くそっ!」
「レン。 ティナ。 耳を閉じとけ。」
トオルは1発 また1発と撃った。
男の頬をかすめたが命中はしなかった。
『銃というのはこう撃つんだよ ガキが!』
トオルの頭に向かって銃口を向けてきた。
「く、くそ…。やられる…。」
トオルの銃は弾切れだった。
私も足が震えてうまく立っていられなくなっていた。
弾が発射されトオルは避ようとしたが、さっき撃たれた反対の肩を射抜いた。
「ぐはっ!」
私はそれを真横で見ていた。恐怖…。怒り…。いや、それよりも殺意が急に湧き上がってきた。
さっきと同じ体中が熱くなってくる感覚。
気付けばバニラの入った鞄をレンに渡していた。
「レン。バニラをお願い。」
「殺す…。1度ならず2度までも私の大事なものに手をかけたな…。」
「おい…ティナどうしたんだ…。」
「うわああああ!」
私は弾を自然と避けていた。気づけば相手の懐に入っていた。
そして私は男が持っていた銃を奪い、男の肩に銃を撃った。
「痛ぇ…た、助けてくれ…。」
私の頭の中は真っ白になっていた。ただ体は勝手に動く。自分の意志ではないように。
「次で殺す。私はもう迷わない。お前らのようなやつには屈しない。そして一生私を恨めばいい。お前たちがしてきたことはそれ以上だ。私の大切なものを奪おうとするなら容赦しない。」
「ティナ…!お前どうしたんだよ!落ち着け!」
急に血の気が引いていくのを覚えた。
(そうだ…。私なにやっているんだろ。 私のせいでこうなっているはずなのに…。)
『違う…あなたは間違っていない。』
(間違ってるこんなの…。)
『撃たないと撃たれる。今やらなければまた失う。目の前のことに目を背けてはだめ。』
(うるさい!うるさい!うるさい!!)
(もう限界だ…。なんで私が人を殺さないといけないのっ!)
【この世はやるかやられるかだから。何かを守るためには犠牲が付く。】
(だまれ!)
「な、何なんだ…こいつは…完全にイカれてる…。おい!早くこいつを撃て!」
「ああ!さっさと死ね!」
「ティナあぶない!」
(もういいや。どうでもいい。ミナ…。私の事嫌いだったのかな。親友だって思っていたのは私だけだったのかな。もう考えるのも疲れた。)
(レン…トオル…。あなたたちだけでも生きて。私はもう体が動かない。)
私に話しかけてきた声はもうその時には聞こえてこなくなっていた。
私は目を瞑り覚悟を決めた。
薄っすらと後ろからレンとトオルの叫ぶ声 バニラの吠える声が聞こえた。
(怖い…。痛いのは嫌だ…。一瞬で終わらせて…。)
私は崩れそうになった。
その瞬間、銃声が1発…2発…3発…。微かだけど聞こえた。薄目で見ると組織の男たちが私よりも先に崩れていった。
腰を抜かしていた男は頭を射抜かれ既に絶命していた。
「え…?」
レンとトオルが崩れそうな私を抱えたのがすぐにわかった。
みんなが私の名前を叫んでいる。
でも私はその先の2人を見ていた。
走って近づいてくる。
(男の人と女の人…? )
(トオルがなにかを説明している…? )
(あ…この2人見たことがある…。)
声がだんだん聞こえなくなり視界もどんどん遠ざかっていく…。
一瞬だけど目を強く見開いた。
『イオリ…?ヒマリ…?』
微かに名前を呟いたその瞬間、私は気を失った。
(なんでこんなことになったんだろう。普通に生きていたかっただけなのに。)
(また昔みたいに楽しい毎日を送れると思っていたのに。)
(私は結局撃たれたのだろうか…?)
(死ぬ時はいろいろ考えるって言うけど、考えるほど思い出を作っていない。)
(いやだ。死にたくない…。まだ生きていたい…。)
(助けて…。)
(強がっていても本当は心の底から怖い。誰かを助けるってことが怖い。自分が犠牲になるってことがこんなに怖いなんて生まれて初めて思った。)
『誰かを守れても自分が死んでしまったら意味がないんだ。』
「ティナ…ティナ…!」
(誰の声だろ?)
「ティナ! ティナ! 目を覚ませ!」
(レンの声…?)
『まだ終われないよね。あなたは生きなくちゃいけない。生きて世界を…あの子を…救わなくちゃいけない…。』
(この声は違う。私…?)
『あなたしかいないから。絶対に負けないで。今のあなたなら未来を変えられる。』
(今はまだわからなくても生きていたら答えがわかるんだよね?私が未来を変えればまたいつもの日常を取り戻せるんだよね?だったら生きてあなたの言うとおりにする。)
『それはあなたの行動次第。でもあなたならいい方向へと導いてくれるって信じてる。』
(うん。とりあえずやれるだけやってみる。)
『できるよ。だってあなたは…。』
(え…?待って。何て言ったの?」
声が遠ざかっていき、それ以降の言葉はわからなかった。
そして私はそのまま完全に気を失った。




