27話 裏の顔を持った男
ティナたちは京都に向かう前に打ち合わせをしていた。
「愛知を制圧したからと言って兵をすべて京都に移すわけにはいかないと思うんだ。」
「うむ。それは一理ある。だがどうする?」
「滋賀、三重、愛知は『フェニックス』に守ってほしい。」
「承知した。愛知を正式に『フェニックス』の本部とし、いつでもティナたちの援護をできるようにしておく。」
「わかった。ありがとう。」
「じゃあいくか。」
私たちは輸送機に乗り込んだ。
空は戦争中とは思えないぐらい綺麗だった。下を見ると黒い煙が所々であがっており現実に引き戻される。
「ティナ、京都についたらどこを拠点にするつもりなんだ?」
「本庁舎がいいと思う。」
「なるほど。拠点にするには悪くないな。」
「病院に残してきた人たち、それにバニラは元気にしてるだろうか。」
「バニラ?」
「私が飼っている犬の名前。京都を出るとき置いて来たんだ。」
「ああ。俺の父さんと国に反対していた人たちが病院で今も立てこもっているはずなんだ。」
「そうなのか。なんとか無事でいてくれてるといいのだが。」
「ティナもうすぐ到着する。」
「了解。」
ティナたちを乗せた輸送機がゆっくりと本庁舎前に降り立った。
-その時だった。
パン! パン!
「敵?!」
「みんな攻撃に備えて!」
「誰が撃ってるんだ?!」
「ちょっと待て。」
トオルが能力を使い相手が誰なのか探った。
「20人近くいるな。だが組織ではない。…民兵か?」
するとティナはハッチを開けた。
「おいティナあぶないぞ!」
「私は『tears』のティナだ。私たちは国と戦っている。国に忠誠を誓っていないのであれば攻撃を止めてほしい。もしそうでないならこっちも攻撃する。」
すると銃声が止み何人か姿を現し武器を捨てた。
「あいつら武器を捨てたみたいだな。」
「もしかして『tears』か?!俺たちは敵ではない!待っていたんだ!」
「俺たちを知っているのか?ティナどうする?」
「輸送機を地上に降ろして。」
「了解。」
私たちは輸送機から降りた。
さっきまで武器を武装していた民兵がこっちへと近づいて来た。
「『tears』よく来てくれた。国に逆らい組織を倒しているんだろ?俺たちもそうだ。」
「私たちの噂は誰から聞いたの?」
「組織のやつらが話しているのを聞いた。滋賀と三重を制圧したと。」
「愛知もしてきたぜ。」
「なんだって?!大都市の1つを…?これは本当に今の国を止められるかもしれん。」
「いいえ、今は無理。」
「え?だって『tears』は愛知を制圧出来たんだろ?それなら絶対、国をつぶせるはずだ。」
「前まではそう思っていた。でもみんなが思っている以上にやつらは手強い。そんなすぐに行って勝てる相手ではない。」
「そうだったのか。」
「私たちはここ京都を『tears』の拠点にするために来た。」
「それなら俺たちも『tears』に手を貸す。戦える連中はあまり多くないが、役には立つはずだ。」
「ええ。ありがとう。」
「本庁舎を拠点にするならここに武器類を運び込もう。おい動けるやつは手伝え!」
ティナたちは武器、食料などを京都の民兵たちと協力して運んだ。
一段落ついたところでティナは民兵たちに質問をした。
「あなた達が知っていること、全部教えて。」
「…。ああ。わかった。」
「俺たちは元々組織の連中に無理矢理、戦わせられていたものたちだ。納得いっていなかった仲間の何人かが組織の人間に攻撃をしたがみんな呆気なく殺されたよ。」
「そしてあんただ。過去が見え、国から命を狙われた女。星咲ティナ。国のニュースで何度も見たよ。俺たちはそのティナが新しい国作りの邪魔になるとずっと教え込まれてきた。ティナがいなければ幸せな国になると。」
「だが、みんな本心ではそんなことまったく信じてはいなかった。国はあんたのことを脅威の対象とずっと報道していたがそれは全く違った。逆に国は我々、民間人を戦わせ選別して強いものだけが生き残る国にしたかっただけだ。俺たちの友人、家族はほとんどそれで命を落とした。なにが幸せな国だってな。」
「…。」
「『tears』という集団が組織を倒しまくって民兵たちを開放していると知った。そしてその『tears』の指導者の名が『ティナ』あんただ。ティナはまったく国が言っていた存在ではなかった。俺たちはどっちが正しいのか完全に理解した。そこから本格的にやつらと戦うと決意した。『tears』に会えたら俺たちも共に戦うって。」
「それで組織の人間はどうなったの?」
「ある程度は倒せたが、すべてではない。いつどこから襲われるかもわからないから寝る事すらまともに出来ない毎日だ。仲間の民兵も沢山死んだ。数えられない程にな。」
「まぁ大体こんな感じだ。」
「どこも悲惨な状況だな。」
「少しずつだけど民間人が組織の人間に逆らおうとしている。これは国にとってはかなり不利になってるに違いない。」
「その分犠牲も増えるけどな。だが従っても戦わせられるのではどの道一緒か。」
「やはり時間がないのには変わりがない。こうしている間にも無駄な戦いで多くの命が失われていってるんだ。」
「そうだ。病院はどうなってるんだ?」
「あなた達、この近くの大型病院で防衛していた人たちはどうしている?」
「大型病院? ああ、あそこで戦っていた民兵たちなら壊滅したよ。」
「え…?」
イオリが大声を上げた。
「どういうことだ?!あそこには父さんたちがいるんだぞ!」
「組織の連中たちと激しい戦いになったんだ。」
「俺たちも民兵開放のためにいろいろ調べたが、どこも壊滅状態だった。」
「嘘だろ…。父さんたちが殺された…?」
(バニラ…。)
「今から病院に向かう。」
「さっきも言ったがあそこはもう…」
「うるせぇ!まだ生き残りがいるかもしれない。ティナいいよな?」
「わかった。だけどなるべく少人数で行く。イオリこういうときこそ冷静になって。」
「わ、わかった。」
「それじゃあイオリと私だけでいい?」
ミナ、レン、セイジ、ハヤトも名乗り出た。
「俺のカラスでくまなく探せるはずだ。俺も行くぜ。」
「私も。バニラがいるんだよね?」
「うん。もしかしたら安全なとこに逃げているはず…。」
「よし、早速行ってみよう。」
「気を付けて行けよ。昨日あのへんで組織の連中を確認したやつがいる。」
「わかった。それじゃあみんなはここを固めて。いつ襲われても大丈夫なように。」
「ああ。わかった。ここは任せておけ。何かあったらすぐに無線で伝えてくれ。すぐに行く。」
「うん。」
ティナたちは病院へと向かった。
「父さん…」
「…。」
レンが口を開いた。
「イオリ。これは戦争なんだ。いつだれが死んでもおかしくねぇ。覚悟はしとけ。」
「何だとこの野郎。」
「やめろ!」
「仲間同士で争ってる場合ではないだろ。」
「すまん。レン。」
「ああ、大丈夫だ。だが覚悟はしておけ。」
「ああ…。」
こういう時、『tears』の指導者として何か一言いうべきだけど私は何も言葉が出てこなかった。
本当に最悪の結末だったら私も冷静でいられなくなるからだ。
そして病院が見えてきた。
もう既に聞いてた通りの嫌な予感は外壁でわかった。
最初に来た時にはなかった銃弾の痕。そして周りに転がっている死体の数。
激しくこのあたりで戦ったのが一瞬でわかった。 民兵だけではなく組織の連中も倒れていた。
「本当に民兵と組織は戦ってたんだな。」
「覚悟を決め戦って死んだ。敬意を評そう。」
病院の前に着いた。
以前なら裏口からしか入れなかったけど正面口が破壊されていた。この時点で中の状況は察せてしまうのが恐ろしかった。
「嘘だろ…。こんだけ破壊されて中から物音1つもしないってことは…。」
「とりあえず入ろう…。」
どんな状況に遭遇しても冷静を保たなくてはいけない。私は深呼吸をした。
「ひどい匂いだ…。吐きそうになる。」
「ああ。建物の中というだけでめまいがしてくるな。それに真っ暗だ。懐中電灯はないか?」
「俺が照らそう。」
そしてセイジが懐中電灯を照らした。 そして目に入ったものは衝撃的な光景だった。
折り重なるように民兵、組織の死体がそこら中に転がっていた。
「これは…ひどいな…。」
「イオリのお父さんとその友人の医者の姿が見当たらないな。」
「前に話した部屋はどうだ?」
「行ってみよう。」
暗くて何を踏んでるのかさえわからない状態だった。
そして話していた部屋はドアが破壊されたように開いていた。
「俺が先に入ろう。」
セイジが片手に銃、もう片方に懐中電灯を照らして中に入った。
「こ、これは…」
「どうしたセイジ…ってこれは…。」
見知った男性が1人が銃弾を受け倒れていた。そのすぐ手前に組織と思われる人間が3人倒れていた。
想像していたことが現実になった瞬間だった。
そこに倒れていたのは イオリの父親の友人だった。
「…嘘だろ…マジかよ…。」
セイジは銃を降ろし、死体の状態を確認した。
「撃たれてからそんなに時間は経っていないみたいだ。民兵のやつらの話は本当だったみたいだな。」
「ひでえ殺され方だ…。腹からでてるあれってもしかして…。」
「ごめんちょっと気分が悪い…。」
ティナは部屋を飛び出した。
「ティナ!」
ティナは胃液がこみ上げ気分が悪くなっていた。
ティナの後を追うミナ。
「ティナ!ティナ!」
「ゲホッゲホッ…ミナ…。大丈夫。少し気分が悪くなっただけ。」
「おい、ティナ大丈夫か?」
「イオリ…。やはりあの死体は…。」
「ああ。父さんの友人の医者だった。銃で撃たれたにしては傷が深すぎる。」
イオリも遅れて出てきた。
「イオリ…お父さんはいた?」
「いやいなかった。おかしい。父さんは確かにここにきていたはずだ。それなのに姿もなければ死体もなかった。」
「逃げたかあるいはまだこの中にいるか…。」
私たちは一旦外に出た。 死体の臭いとこの重苦しい空気の中には長居できなかった。
何度も私の背中をミナがさすってくれた。
「もう誰も生きてはいないとおもうが、まだ生存者がいるかもしれん。病院の中を見て回ろう。」
「ティナの体調はもういいのか?」
「ええ。外の空気を吸ったらマシになった。」
「わかった。それじゃあ行こう。」
ティナたちは再度病院の中へ入った。
相変わらず重苦しい空気が流れていた。
私たちは二階を調べ回った。
「二階までも死体があるのか。」
「恐らく病院全体を使って戦っていたのだろう。そこら中に薬莢が落ちている。」
「ちょっと待て。今上の階から足音みたいなのが聞こえなかったか?」
カツ…カツ…
「確かに聞こえた。だれかいるのか?」
セイジは銃を構えゆっくり階段の方へ向けた。
「何人いて敵なのか味方なのかもわからん。いつでも戦える準備はしておけ。」
ゆっくりと階段を登った。
すると人影が階段を更に登っていった。
「気のせいかもしれんが誘い込まれている気がする。もしあれが敵ならあんな逃げるか?」
「それでもこのまま無視して引き返せない。一体あれが何なのか調べなくては。」
「ああ。敵なら見過ごすわけにはいかないからな。」
そして4階に登ろうとしたときだった。
「ワン!グルルルル!」
セイジに犬が飛び掛かった。
「なんだ!こいつ!」
「ちょっと待って!もしかして…バニラ…?」
「ああ。間違いなくバニラだぞ!こいつ!」
「なんだ?こいつが飼っている犬か?」
バニラは尻尾を大きく振りながらティナの足元を走り回った。
「よかった…。生きてたんだ。」
そしてミナの周りにも回り始めた。
「よしよし。この子、わたしのことをティナと勘違いしてるのかな?」
「双子だからね。私だと思っているのかも。」
「でも何故、こんな状況で生き残れたんだ…?」
「わからない。でもこんだけ広いと逃げる場所はいくらでもある。だから目立たないところに逃げていたのかも。」
「だとするとさっきの人影と足跡は誰だ?」
「そうだ。まだここには誰かがいる。」
「とりあえず更に上に行ってみよう。」
私たちはさらに上へと目指すことにした。
そして階段を登っている時だった。
バン!バン!
「くそっ敵か!」
「何人いる?」
「2…3人ってとこか?姿は見えなかった。」
「俺に任せとけ。」
セイジが突っ込んだ。
「やはりいたな。組織か。」
セイジは銃弾を避けながら相手に近づき倒した。
そして1人の組織の男に質問した。
「ここをやったのはお前たちか?」
「お前ら『tears』か…。何故、お前らがここに…」
「話してんのは俺だ。質問に答えろ。」
「…俺たちではない。」
「1階ではお前ら組織とここで防衛していた仲間たちが戦い死んでいた。それでもお前たちではないというのか?」
「戦っていたのは本当だ。だが、壊滅に追い込んだのは俺たちではない。あの人がすべてやったんだ。」
「あの人だと…?」
「これ以上は話せん。殺されてしまう。」
「いいから話せ。」
セイジは男の頭に銃口を向けた。
「俺たちが戦っていた医者がまさかあの人だとは思わなかった。その人は民兵も組織も関係なしに殺していったんだ。だが普通ではない。あの人は間違いなく幹…」
バン!
「なっ?!」
男の頭部に銃弾が撃ち込まれた。
私たちは銃弾が発射された方を見た。
そこには見たことがある男性が立っていた。
「と、父さんか?!」
「まだ組織が残っていたようだな。怪我はないか?」
「あ、ああ。父さんこそ生きていたんだな。よかった…。死んでいたかと思った。」
「京都に戻ってきていたとは思わなかった。ここも激しい戦いがあった。組織に乗り込まれ最悪の状況だった。みんな必死で戦ったが、壊滅した。」
「父さんの友人も死んでいた。ひどい殺され方をしていた。」
セイジがイオリの父親に尋ねた。
「さっき組織のやつは、ある医者が民兵、組織の人間を殺していたと話していたがそれはどういうことなんだ?」
「…。」
「まさか…父さんのことではないよな…?」
「ああ。父さんの友人がいただろう?奴だ。」
「え?あの人がやったっていうのか?」
「そうだ。ここで戦っていたものたちをだれふりかまわず殺していった。俺は説得したがあいつは俺も殺そうとした。最後は俺の手で仕留めた。」
「そうだったのか。あの人がまさか組織の人間だったとは。」
「親父さん無事でよかった。俺たちの本部が近くにある。一緒に行こう。」
「『tears』はそこを拠点にしているのか。なるほどな。」
私とミナとセイジはイオリのお父さんの顔をじっと見た。
「嘘をついているな。」
「え?嘘だと?」
「イオリの父親。そいつこそ幹部だ。」
「何を言っている?僕が組織の人間なわけがないだろ?常に君たちと同じ考えで戦ってきた。」
「そうだぞ。ティナ。父さんではなく父さんの友人だ。」
「幹部はそんなに弱くはない。それにここを壊滅したとさっき組織の連中は言っていた。それが出来るのは幹部クラス。壊滅していた人間があっさりやられるわけがない。」
「…五十嵐と戦ってそう感じたのか?」
「五十嵐を知っているだと…?!」
「まさか愛知まで辿り着けるとは思ってもみなかったよ。それにあの『フェニックス』とも手を組むとは僕の計算外だった。」
「父さん何言ってんだ?嘘だろ?父さんが組織の人間なわけがない。」
「僕は五十嵐みたいに戦いはあまり得意ではない。だけどそれは無駄な戦いをしたくないからだ。絶対に勝てる戦いしかしない。」
「目的はなんだ?民兵はともかく、お前は仲間の組織の連中まで手にかけた。何がしたいのかさっぱりわからん。
「僕が組織の人間ということを知った人間は生かさない。それだけのことだ。」
「お前の友人もその1人ってことか。」
「ああ。そうだ。そしてお前たち『tears』も知った。もうわかるな?」
「父さんまじかよ…。」
「あの時なぜ助けた?いくらでも殺せたはずだ。」
「あれはお前たちが僕の存在に気付いていなかったからだ。さっきも言っただろう?僕は無駄な戦いはしない。それでも僕の正体を知ったやつは別だ。」
「父さんの友人はどうやって父さんが組織の人間だと知ったんだ?」
「ここの病院の地下には何があるか知っているか?」
「…?」
「国の管理する研究所がある。そこを任せられていたのが僕と父さんの友人だ。」
「研究所…だと?」
「医者ではなかったのか?」
「いいや、表では普通の医者だ。だが本来はこっちが本職というわけだ。」
「それで一体、何の研究をしていたんだ。」
「それは君たちがよく使っているものだよ。」
「よく使っているもの?まさか…」
「そう能力のことだ。」
「あれは自然に宿ったものではなく人工的に作り出されたものと言うことか?」
「そのとおりだ。だが、必ずしも身につくとは限らない。身につかなかったものはイコール死だ。体が耐えられないからな。」
「その研究は強制的に引き出させることをしていたということか?」
「その認識で構わない。能力を身につけることが出来れば子孫にまで影響するということだ。」
「子孫にまでだって…?じゃあ私が能力を使えるのはお父さんの影響…?」
「それはわからない。なんせ80年近くこの研究は行われ今までに何千万という人間が実験対象になっていた。祖父か祖母が既に能力を身に着けていた可能性だってある。」
「自然に身につくこともあるのか?」
「能力を持った人間に接触すると引き出されることもあれば君たちの仲間のように能力を引き出すことが出来るものもいる。」
「ウルハのことか。」
「そして国はそれを利用し、強いものだけが生き残り弱いものは滅びる計画を実行した。」
「能力を持ったやつしか最終的には生き残れない世界ってことか。」
「そうだ。僕はそれを裏で支える者。だからこそ正体をバレてはいけない。僕はただ能力を身につけさせデータがほしいだけだからね。」
「なにがデータだ。人を何だと思っている?能力が使えないやつらに人権がないと言いたいのか?」
「国はそう考えている。僕はそれに従うだけだ。君たちは能力が使える。だから今こうして戦いを生き抜いてこられているんだ。」
「戦いたくて戦ってるやつなんてごく一部だ。お前らが仕掛けた戦いだ。戦わざるおえない状況にお前らが持ち込んだだけの話だ。」
「ふむ。それも一理あるな。だが国に逆らって生きていけると思うな。ティナ君ならよくわかっているはず。幹部を敵に回すとどうなるのか。」
「どんな敵が来ようとも私は負けない。確かに幹部は強い。だけどそれは力強さに限った話。私には沢山の仲間がいるという強さがある。」
「そうか。仲間か。それもまた能力を高める上では必要かもしれんな。」
「父さんこっち側にはもう戻れないのか…?」
「もうってなんだ?僕はお前が生まれる前から組織の人間だ。勘違いするなよ。」
「イオリ。こいつは私が。」
「いや、ティナ俺がやる。」
「イオリこいつは幹部だ。感情だけで動いているのならよせ。」
「いいや違うんだ。こんな父さん見たくなかった。ずっと尊敬していた父さんが国に手を貸していたと考えたらだんだんと腹が立ってきた。だから俺が父さんをやる。」
「それはいいな。お前の強さをずっと見たかった。ずっと戦いたかったよ。」
イオリの父親はナイフを取り出した。
「おいあのナイフって…。」
「ミナが切られたナイフと一緒だ。ということは毒…。」
「うん。あのナイフで私は死にかけた。」
「言っただろ?僕はデータを取るのが好きでね。五十嵐との戦闘データも既に知っている。ここには解毒剤もない。一発食らえばもう終わりだ。」
「イオリ、こいつは一歩間違えたら死ぬ。俺たちも協力するぞ。」
「いや、手を出さないでくれ。これは俺の戦いでもある。俺の手でやりたいんだ。」
ティナ、ミナ、レンがナイフを取り出し、前にでようとした。
するとセイジが手で防いだ。
「この戦いはイオリの戦いだ。俺たちが入る隙はない。」
「あいつは幹部。だったら私たちの敵でもある。」
「わかっている。だがイオリのオーラを見ろ。」
それは感情的になって放っているのではなくいろんな想いが作り出したオーラだった。
「父さん、俺は父さんがやっていることには死んでも理解できない。だからここで父さんを倒す。」
「…。そうか。それなら全力で来い。お前の力を見せてみろ。」
「わかっただろ?ティナ。これは国との戦いであるのはもちろんだが、仲間の戦いでもある。今は見守ろう。もし万が一の時は俺たちがやる。」
ティナはナイフをしまった。
「父さん。こんなこともう終わりにしよう。」
父親もまた無言でオーラを放った。もう隠すことは何もないと言わんばかりに最大のオーラを纏った。
イオリは父親に踏み込んだ。
「いくぞ父さん!」




