24話 絶体絶命
ティナたちは本部に潜入していた。
頑丈に作られた内部は進めば進むほど暗くなっていった。
「ヒナ何処まで行くんだ?」
「この先に地下がある。やつらはそこにいる。」
「地下…?隠し部屋か?」
「そんな規模ではない。人が何万と入れるぐらいの規模。」
「何万だと?!それってまるで…」
「ええ。ジュリが東京の官邸で見た地下と大体同じものがここ愛知にもあるってことになる。」
そしてティナたちは地下に続く道にやってきた。
「この先だよ。」
私たちは銃を構え警戒した。
すると階段が目の前に現れた。
「私が知っているのはここまで。この先が本当のやつらの本部だ。」
階段を下りた。
眩しくなって大きい空間に出るものだと思っていた。
しかしそこは大きい空間と言うよりは真っ暗でどこにいて回りがどうなってるのかすらもわからない。
地下に来たという感覚もない。ただあるのは無の空間だ。
「レンいる?ミナは?ヒナ?」
「いるぜ。」
「いるわ。」
「…」
「ミナ?!」
「いるよ。」
「よかった。懐中電灯があった明かりをつけるね。」
すると
パン!
電球が割れた。
「なんで?!壊れた…。」
「どうした?なんだ今の音は!」
「ただ懐中電灯が壊れただけ。ここでは銃を無暗に撃たない方がいい。流れ弾が当たる危険がある。」
「工場での戦いを思い出す。武器が使えなくなったり、やれることが限られてくる。」
「でもここは工場なんかより更にやばい状況だ。もう私たちは来た方向も、どこに向かってるのかもわからない。」
「この人数で来て正解だった。」
「ヒナその3人っていうのは力みたいなの使えたりする?」
「わからない。でも少なからず1人は使えるのを知っている。」
「この暗闇を有利に戦える奴ならまずい。」
するとミナの声がした。
「きゃっ!」
「どうしたの?!ミナ!」
「なにか鋭いもので肩を切られた…。」
「やはり誰かいる…。俺たちは見えていないが、やつらには見えている…。」
「ミナ止血して!」
「うん…。」
「見えているなら一気にやればいいのにそれをやらない。いつでもやろうと思えばやれるということ…。」
(もしくは私たちの能力に恐れてあえて動きを探っている…。どっちとも取れるけどこの状況は明らかにこちらが不利。能力を使っても何も見えないのでは話にならない。)
「ちょっとみんな静かに。」
するとヒナが独り言を言い始めた。
「目を瞑り音をよく聞く。そして呼吸の音も聞き逃さないように全神経を集中させる。…レン後ろだ!」
「なに?! レンは後ろを蹴った。」
「ぐっ!」
「なんだ?何かに当たった。」
「間違いなく誰かいる。そしていつでも殺せる状況ということ。」
そして私はあることに気付く。
(さっきより目が慣れてきたような気がする。何も見えないのには変わりがない。けれど薄っすらとそこに誰かがいるということはわかる。)
「ヒナ、私の前にいるよね?」
「え?ティナの声は後ろから聞こえるからあってる。」
「レンは後ろ。ミナは左。どう?」
「ああ。間違いない。」
「ええ。」
(そしてさっきから感じてる2つの気配…。こいつらだ。)
「ミナこっちへ!」
私とミナは背中を合わせた。
「ミナお願いがある。」
「無茶なお願いではないならね。」
「ミナの炎で一瞬だけでもいいから照らしてほしい。」
「…わかった。」
ミナはオーラを纏った。
レンとヒナはそれに気づいた。
「何か感じる…これは?」
「ティナかミナのどっちかが能力を使ったか。何かを仕掛ける気だ。ヒナ俺たちも備えるぞ。」
するとミナの手に炎が纏った。それを右から左に振った。
「ミナの能力か!これなら一瞬だが見える!どこだ?!」
ティナとヒナは見逃さなかった。
「いた!あいつだ!」
「くそっ!ばれたか!」
攻撃したが当たらなかった。
「惜しい…。ミナもう一度。」
「ええ。」
炎が男を照らした。
レンも相手の位置を把握した。
「俺はこいつらみたいに気配とかそんなもんは探れねぇ。けどよ姿さえ見えてしまったら俺の影は逃がさない。」
レンの影はその男を捕まえた。
「小賢しい真似しやがって。」
影が仕留めた。
「ヒナ後ろにまだもう1人いる!」
「しまった!」
ティナがすかさず男に飛び蹴りを入れた。
「ぐっ。このガキが。」
男はすぐに態勢を戻し、ナイフを振り下ろした。
(ティナあぶない!)
ティナは間一髪ナイフで防いだ。
「くっ…。力が今までのやつらとは違う…。」
「首元掻っ切ってやる。あと少しだ。」
その瞬間、ヒナが銃で男の頭部を撃ち抜いた。
「ありがとうヒナ。おかげで助かった。」
「いいえ、私の方こそ助かった。ありがとう。」
「それよりこの基地の全貌が一瞬見えたが、気付いたか?」
「ええ。計り知れない程の兵器の数。この基地を見て国がやろうとしていることがようやくすべてわかった気がする。」
「これが新しい国を作る目的。軍事国家を作ろうとしていたのか。」
『そのとおりだ。』
天井の電気が一斉についた。
眩しさで目が開けられなかった。
ゆっくりと目を開けるティナたち。そこに広がるのは先が見えないほどの地下基地だった。周りには大量の兵器がズラリと並んでいた。
今さっき倒した男2人と明らかに今までのやつらとは明らかに違うオーラを放った男が立っていた。
「暗闇の中でまさかそれほどの動きが出来るとはな。予想外だった。やはりお前らは只者ではないな。」
「誰だ!お前は!」
男はタバコをくわえた。
「これから死ぬ奴に教える必要があるのかわからんがここまで来たんだ教えてやる。俺が国直属の幹部だ。お前たち『tears』の噂は常に耳に入ってくる。鬱陶しいほどにな。」
「お前が幹部…?ということはお前が愛知を支配しているのか?」
「まぁ形上はそういうことになるわな。因みにお前らが三重で暴れたのはかなりだるかったぞ。何故なら三重も俺が管理している。蜘蛛の巣って言ったか?あれは確かに強い能力だ。俺も認めてやってたから任せてやったんだ。だが失敗しやがった。何故だかわかるか?戦いがなっちゃいないんだよ。結局の所、仲間と協力してとかではなく1人が一番やりやすい。わかるか?」
「ベラベラ勝手に喋りやがって。要するにお前は群れるのが嫌いとそう言いたいんだな?だがお前は暗闇の中で部下を使い攻撃してきたじゃねぇか。矛盾してんだよテメェは。」
「おいクソガキ。口の利き方には気をつけろよ?こいつらも民衆も俺にとっては武器なんだよ。仲間とかじゃねぇ。武器がただ壊れただけだ。助け合って我が国と戦うとか笑わせんなよ。」
「その武器の使い方も知らないから私たちに負けるんだ。ただお前たちは戦争がしたいだけ。権力を得たいだけ。その為の国作り。そんな身勝手な考えだけで多くの犠牲を生んでるのにまだ気がつかないの?」
「権力こそが最強だ。ほしいものが手に入らないと腹立たしいだろ?それと一緒だ。権力さえあれば何もかもが手に入る。力も名誉もすべてだ。政府がこの計画を発表した時おれはたまらなく興奮した。俺の時代がようやく来たってな。そこでお前らだ。邪魔ばかりしやがって。これなら俺の手で最初から殺しておくべきだった。お前らが動けば動くほどストレスが溜まるんだよ。」
「気持ちが悪い。あんた終わってるよ。思った通り国民のための国作りではなかったとはっきりと聞けた。それがお前らの答えってことがね。」
「これだけ権力をもった国に忠誠を誓えるんだ。名誉以外になにがある?お前は本当に頭が悪いな。さてと話はこれぐらいにしておくか。死ぬ準備は出来てるか?」
「それはこっちのセリフだ。お前みたいなトップに媚びてるようなやつに私たちは負けない。」
男はタバコを投げ捨てた。
「お前何か勘違いしていないか?まぁそんな事、今更どうでもいいか。」
男はゆっくり近づいて来た。武器など何も持たずに。
(隙だらけだ。まったく殺気がない…。)
そしてティナから攻撃を仕掛けた。
「動きが遅せぇんだよ!クソガキが!」
ティナの背後に回り込み背中を蹴り飛ばし転がった。
追撃するように更に腹を蹴り上げ顔を殴った。
「ぐっ…。強い…。」
「てめぇ!なんてことしやがる!」
レンが影を飛ばし男に打撃を仕掛けた。
しかし男はすべてガードし影を掴んだ。
「なんだこれは?これがお前の能力か?こんな馬鹿げた力で俺に挑む気か?あんまり大人を舐めんなよ?」
男は影を掴みながらレンに攻撃を仕掛けた。
「影を戻せない…!くそっなんだこいつは!」
レンは回し蹴りをくらい吹き飛んだ。
ミナは2人がボコボコにされていくのを怒りを通り越し見ていた。
ミナの体からオーラが溢れてくる。
「殺してやる!!お前は許さない!」
男はガードしたが、火がつき爆発した。
「今のはちょっと痛かったぞ。だがそんな程度か?まだ他に技はあるんだろ?」
ミナは初めて自分の技が効かない相手に震えた…。
「う、嘘…効いてない…?」
「なんだねぇのかよ。トップが脅威に感じていたと聞いていたからとんでもねぇやつらだと思ったが勘違いだったようだな。お前もやるか?国を裏切った組織の娘。」
ヒナはまったく動けなかった。
「お前の相手は俺だ!」
レンが銃を男に撃った。
男はすかさず避けレンの前に立ちはだかった。
「使い方がなっちゃいないんだよ。」
そして銃口を掴みレンの足に向け引き金を引いた。
バン!
「ぐっ…。足が…!」
足を貫き態勢を崩した。
「準備運動にもならねぇのか。まぁ民兵程度だったら苦戦する相手ではあったか。」
ティナはなんとか起き上がろうとした。
(口の中が血の味でいっぱいだ。視界もぼやけている…。まじでやばい…。何が起こったのか気づいたときには吹っ飛ばされていた。それにこの重い攻撃…今まで味わったことがない…。)
するとミナが血を吐いた。
「ミナ…?」
「え…?なんで血…?私攻撃されてないのになんで…?」
「毒がようやく回ってきたようだな。お前さっき切られたろ?猛毒が仕込んであったんだよ。だから言っただろ?やつらは俺の武器だ。壊れても結果が上手くいっていれば十分仕事をしたってことだ。お前は俺の手ではなく毒で死ね。苦しみながらな。30分もあればあの世へいけるぞ。それか自決するなら早い方がいい。俺がしっかり見届けてやる。」
男はタバコをまた吸い始め笑みを浮かべた。
(本気で殺される。今までのやつとは天と地の差がある。奴も能力を使っているのか…?それにこのままだとミナが危ない…。)
ヒナはさっきまで共に戦った仲間がやられたのを直視し、我を忘れ男に飛び込んだ。
「うわあああああ!!」
男は回し蹴りをした。
ヒナは大きく吹っ飛んだ。
「ゲホッ…ゲホッ…」
「お前らよくまぁそんな弱ぇのにここまで辿り着けたな。これなら俺が直々に出向いてぶっ潰した方がまじで早かったな。」
「まだだ…まだ終わっていない。これからだ。」
「既に終わってんだよお前は。俺に触れることすらできなかった癖に大きな口叩かないでもらいたいね。ガキがよ!」
男はティナの胸ぐらを掴んだ。
「お前なんかに負けるわけがない。私はなんとしても東京に行きトップを倒すんだ!」
「あんまりイラつかせんなよ。こっちはいつでも殺せるんだ。自分の状況をよく考えろ。お前も『tears』も既に死んでるってことを理解したらどうだ。」
ミナが苦しそうにもがいた。
「ふっ。お前らを殺した後は外の連中だ。全員まとめて殺す。」
男はティナの首を握り締めた。窒息させるように。
するとティナの体からオーラが流れ出した。
「放せ…。」
「ん?まだ喋れるのか。」
男は更に力を強めた。
そしてティナは男の腕を持った。
(なんだ…こいつのこの力は…俺はこいつの首を締め上げているんだぞ。逆に力が入らないはずなのに力が更に強まっているだと…?)
男の手首がミシミシという音を立てた。
すると男の手首が折れる音がした。
「くそっ!折りやがったな…。」
男は銃を取り出し、頭部に銃口を向けた。
「お前はいたぶって殺してやろうと思ったが、時間がない。一撃で終わらせてやる。」
ティナは銃口をすかさず握り、男の腹にパンチを何回も放った。
男は殴られながらもティナの顔を見ていた。
「こいつ…目の光が消えた…。そうかこれか。トップが脅威に感じていたというのは。確かにこれを野放しにしておくわけにはいかないな。」
(それにこいつどこかで見たことがある…。気のせいか。)
「もう終わり?戦いはここからだよ…。」
「ちっ。さっきと違い隙が全くない。何なんだこいつは。まるで何年も戦ってきた眼をしてやがる。それにこのオーラは尋常じゃない…。」
男は打って変わって真面目な顔つきになった。
「こっちだって時間がない。お前を倒して皆をヒマリの元へ連れて行くんだ。」
「俺もお前なんかに時間を使ってる暇はないが、本気でやらねぇとめんどくせぇなこいつは。」
男は本気の構えを取った。
ティナもまた踏み込む構えをした。今までとは全く違う戦いの構えだった。
ミナ、レン、ヒナはその様子を見ていた。
「なに?あの子の殺気は…。さっきとはまるで別人…。何故笑ってるの…?」
「あれはティナのようでティナではない。だが、1つわかることがあるとすれば俺たちが束になっても今のティナは止められない…。そしてこいつとまともに戦えるのは今のティナだけだ。」
「ゲホッゲホッ…。ティナ…。」
間合いを取っていた2人は少しずつ距離を詰めた。
1歩また1歩と。
「奇妙な野郎だ。今のこいつならトップにだって届くほどの殺気。計算外だった。もっと早く殺しておくべきだったか。」
「死ぬのはどっちみちあんただ。いくぞ。」
そして同時に踏み込んだ。
【ほとんど立てない状態だったティナは仲間の危機によって新たな何かが目覚めた。そして男はそんなティナを見て本気の構えを取った。国のトップに最も近しき幹部との戦いがこれから繰り広げようとしていた。】




