22話 突撃作戦開始
久しぶりのまともな食事でみんなは食が進んでいた。
「あまり豪華とまではいかないが、沢山食べてくれ。」
私はシグレに声をかけた。
「向こうの組織ではこういう感じではなかったの?」
「...うん。まず戦い以外の会話なんてないし、みんなでご飯を食べることなんてまずない。」
「そっか。シグレは本当に国に従いたくて従ったの?」
「本心を言うと最初は死にたくないって理由で国に従っていた。だけど従っても戦いに駆り出されるのではどっちにしても戦えない人間は死ぬしか道はない。だからあなた達みたいな反対派がいなければまた平和になるって信じて戦ってきた。でも実際は違った。『tears』も『フェニックス』も国が言っていたような組織ではなかった。」
「今の国は誰も救ってくれない。誰かを救うための戦いではない。すべてを独占したいだけ。争って奪い合って、最後は殺し合う。これの繰り返しをしたいだけ。得をするのは国の偉い奴だけだ。使えないとわかったら簡単に切るやつら。そうして見捨てられた市民、負けていった組織の人間を沢山見てきた。だからもし国を裏切ってでも私たちと一緒に戦いたいというのなら私たちは歓迎する。」
「私は国のやり方がそもそも気に入らなくてこの戦いを始めた。戦っていく内にいろんな仲間に出会って沢山の希望をもらってきた。そして最後まで抗い命を落としてきた人の想いだって背負っている。だからこそ私はこの戦いに勝たなければならない。」
「…。あなたに命を拾われた時から自決するか協力するかの二択しかなかった。でも今は、はっきり言える。生きて私も一緒に戦いたいって。そして今の国ではなくティナが作ろうとしている国こそが私が望んでいた国だから。」
「さっきも言ったけどもうシグレは仲間だ。だからこれから一緒にやつらを倒そう。そして一緒に新しい未来を切り開こう。」
「ティナ…。ついていく。私の力を『tears』の為に。」
「ふふ。じゃあ話は終わり!さぁご飯食べよう。いっぱいスタミナつけて次に備えないとね。」
「そうだぞ。ティナ。お前たちはまだまだ育ち盛りだ。しっかり食べろよ。だが、ダイエットも忘れないようにな!」
「こんな時にダイエットなんて意味ないだろ。そういうのは戦いに勝ってから言えよ。」
「女はいつだって美を忘れてはいかんのだ。」
「何言ってんだよまったく…。」
「何だと貴様!」
「落ち着けって二人とも。」
私はこの楽しい時間がずっと続けばいいのにと微笑みながら皆を見ていた。
「ティナこれ食べる?」
「ありがとう。ミナ。そういえばこうして2人でご飯食べるのも初めてだね。」
「うん。私が預けられる前はこうして楽しく家族で食事してたのかなって。」
「きっとそうだと思う。笑顔が絶えない当たり前の日常。その当たり前を壊した国は絶対に許さない。」
「ティナと私。そしてみんなでその当たり前を取り戻そう。」
「うん。今はこの瞬間を楽しむ。そしてしっかり目に焼き付けとく。これが本当の幸せだってね。」
「ええ。笑顔がある世界にしよう。」
私たちはこのまま時間が止まればいいのにと思えるぐらい楽しい一時を過ごした。
だけどそんな楽しい時間は長くは続かない。少ししたらまた命を奪い合う戦いがはじまるのだから。
「よしみんな食事はこのへんにして本題に入ろうか。」
ジュリが立ち上がった。
「ティナとミナこっちにきてくれ。」
「え?私も?」
「私はティナとミナ1つで『tears』の指導者だと思っている。みんなもそう思っているんじゃないのか?」
「そうだな。ティナとミナは2人で1つだ。」
「そう。2人は『tears』の希望。だから2人でなくてはいけない。だからこそこれからは2人を全力でサポートするんだ。」
「ああ。わかったぜ。でもまぁ俺たちは常に助け合っている。今更誰かをとかそんな特別なものなんてない。今まで通りにやっていくだけさ。」
「うん。私たちは常に助け合っている。だから誰が一番とかはない。」
「ふっ。それが『tears』だったな。だが我々『フェニックス』の希望はティナとミナだ。それは変わらんからな。」
「うん。私たちも『フェニックス』を希望だと思っている。」
「ああ。お互いにな。」
「よしそれじゃあこれからについてなんだが、我々は名古屋に乗り込もうと思う。」
「だろうとは思った。」
「さっきの戦いでわかったが、向こうも相当ダメージを受けているはず。このまま追い込めば愛知を取れるかもしれない。」
「確かに今攻めれば愛知を...。」
「しかしここは大都市愛知。さっき俺たちが戦ったのも一番弱い部隊だったかもしれん。それを踏まえた上で攻めないと計り知れないほどの犠牲が出る。しっかり作戦を練らねば返り討ちに合う可能性が十分ある。」
「ああ。『フェニックス』もすぐに出撃させられるほど回復していない。だがこのタイミングを逃したらまた攻められ持ちこたえられないと思う。そこで提案だが残った戦闘機、戦闘車両をすべて敵地へ送り込み我が戦力をすべてぶつけようと思う。」
「やるかやれるかだね。それなら私たちも全力で戦う。」
みんな首を縦に振った。
「この戦いは多くの犠牲が出るはずだ。誰かを助けてる余裕もないかもしれない。言うなれば自分の命を守るだけでも精一杯の戦いでもある。『tears』のやり方を否定するわけではないが、助けることによってどっちもやられるのだけは避けたい。」
「そうだよな。誰かを助けに行ってどっちも死ぬっていうのは最悪の結末だ。」
「そうだ。だが、助け合わないと勝てない戦いでもある。だから一丸となってやつらを倒そう。1人で突っ走ろうとは絶対にするな。常に誰かと協力して戦うんだ。そうすれば突破口はいくらでもある。私たちの絆をお見舞いしてやろうじゃないか。」
「ああ。俺たちのチームワークを見せてやる。信頼し合える仲間の強さをな。」
するとシグレが提案してきた。
「名古屋城付近には複数の軍隊が配置されていて突破するのはかなり困難。だけど小牧基地に戦闘機、装甲車などが沢山あるから使えるかも。後は上空から一気に攻めれば勝機は十分にあるよ。」
「なるほど。シグレいい情報だ。ここまでの戦力の差だと不意打ちぐらいしないと勝ち目はない。」
「それに敵の戦闘機を盗むことが出来れば相手の戦力を奪い優位に立てる。」
「ああ。それはいい考えだ。」
「あの距離だと戦闘機で基地まで乗り込み、奪い取るしかないな。」
「よしわかった。小牧基地には私と数名が乗り込もう。残りの『フェニックス』のメンバーはティナたちを援護してくれ。」
「了解しました。」
「俺もジュリと同行するぜ。基地についてもやられたのでは意味がない。」
「それなら俺も行く。」
「私も。」
レンとイオリとミオが名乗りを上げた。
「それは非常に助かる。我々だけだと上空はどうにかなったとしても地上では全くもって戦力外だ。盗み出すまでの間、時間を稼いでもらえたら助かる。」
「ああ。任せておけ。ティナ行っても大丈夫だよな?」
「ええ。こっちは問題ない。『フェニックス』を守り、なんとしても作戦を成功させて。」
「おう。完璧にこなして見せるさ。」
「それじゃあ私たちは名古屋城を目指すってことでいい?」
「うん。ジュリたちが合流するまでになんとしても辿り着こう。」
「私も戦闘機でティナたちを援護する。」
「シグレの腕があれば心強い。頼りにしているよ。」
「ティナの為、『tears』の為に全力で戦う。」
「うん。期待してるよ。」
「それじゃあ各自、戦闘準備を。2時間後に出発する。」
「了解。」
「じゃあレンたち頑張ってね。」
「ああ。ティナたちもな。後で会おう。」
ティナは3人に手を振った。
レン、イオリ、ミオは滑走路へと向かった。
「ティナ。1つ聞いておきたいことがあるのだがいいか?」
「どうしたの?ジュリ。」
「あのセイジというのは元組織の人間って話だったな?」
「ええ。娘さんを国に殺され、仇をとるため国と戦うことを決意したの。」
「なるほどな。気になる事と言うのはあのセイジが東京の部隊にいたという話は聞いているか?」
「いや…それは知らない。なんでジュリは東京の部隊にいたとわかるの?」
「セイジが使っていた武器は東京の部隊が使っている物だった。私も元々は東京の部隊にいたからわかる。」
「じゃあセイジも国直属の部隊にいたってこと?」
「そこまではわからん。何しろ数が多い。誰がどの部隊にいたかまでは把握していない。だが、ティナ暗殺を命令したのは国のトップ。東京の組織だったというのは間違いない。」
「なるほど。だからあの時セイジはあそこに。それでセイジが裏切るとでも?」
「いやそういうつもりで言ったのではない。私も組織をあのとき抜けていなかったらティナと敵同士だったわけだ。抜けて抗うやつは私含め、そんなに多くはない。またゆっくり話がしたいと思ってな。」
「うん。ジュリとセイジは気が合うと思う。」
「それからあともう1つだけ。ティナはその娘さんが亡くなったのは直接見たわけではないのだな?」
「ええ。私がセイジと戦った後、セイジは電話で知った。国に背いたことによって殺したと。だから直接は見ていない。」
「そうか。見ていないのだな。しかしなんてひどいことをしやがるんだ…。」
「うん。奴らには人としての心がない。またジュリもセイジと話してみるといいよ。」
「ああ。そうさせてもらう。とりあえず今はこれからの戦いに集中しなくてはな。止めて悪かった。もう行ってくれ。」
「ええ。じゃあレンたちをよろしく。」
「任せておけ。ティナも健闘を祈る。」
(なんだろう。この嫌な予感は…。考え過ぎだろうか。確かに組織のやつらは残忍だ。だが一般人ならともかくティナと行動を共にしている家族ともなるとそれを武器として使えるはず。そんな簡単に殺すだろうか。私が奴らなら生かしそしてそれを利用する。何もないといいが…。)
準備が着々と進んでいた。
「レン、お前 戦闘機に乗ったことは?」
「あるわけがないだろ。完全にぶっつけ本番だ。あと俺はティナみたいに空の上では戦えないからそこんとこも頼むぞ。」
「本番は地上だ。上空では『フェニックス』に任せてくれ。」
「ああ。まじで頼むぜ。」
「リーダー、『フェニックス』のエンジンに問題はなさそうです。」
「そうか。流石『フェニックス』だな。あれほどの動きをしたというのにもう飛べるとは
。それじゃあいつでもいけそうだな。」
「はい。『tears』の準備が整い次第いつでも飛行可能です。」
「わかった。レンたちいけるか?」
「お、おう。大丈夫だ。」
「レン怖いんだろ?」
「男なのにびびりすぎ。」
「いや、普通にこえーだろ。旅客機に乗るんじゃねーんだぞ。一歩間違えたら何も出来ないまま爆死だ。」
「そのためにもなるべく上空での戦闘は避けたい。基地につくことが目標だからな。」
「ああ。地上に降りさえすれば俺は大丈夫だ。」
「じゃあそろそろ行くとするか。みんな乗り込んでくれ。」
レンはびびりながらも後席に乗り込んだ。イオリとミオは堂々と乗り込んだ。
するとシグレがやってきた。
「あの…私の戦闘機は…。」
「ああ。シグレの戦闘機はうちの整備士が修理し、更に強化しておいた。それに『フェニックス』と『tears』のペイント入りだ。」
「ありがと。これならちゃんと守れる。」
「ティナたちを全力で守ってやってくれ。お前も今では立派な『tears』だ。生きて帰って来いよ。」
「ええ。あなたも。」
そしてシグレは戦闘機に乗り込み先に上空へ上がった。
「ふっ。あいつは相当頼りになる仲間になるぞティナ。」
「さて私たちも上空へ上がり、基地を目指そう。」
-その頃ティナたちもまた出発しようとしていた。
「上空からシグレが偵察してくれているからシグレの指示で動こう。」
「そうね。『フェニックス』が戦闘機を手に入れられるまで時間を稼ぐことが出来ればなんとかなる。」
「こっちは地上で出来る限り敵を倒そう。相手は地対空ミサイルを使用してくるかもしれない。そうなれば戦闘機はあぶない。だからそれも壊したい。」
「わかった。とりあえず装甲車で敵陣まで行き襲撃しよう。今なら油断しているはずだから。」
「よしそれじゃあ行くか。」
【ティナたちは『フェニックス』の地上部隊と共に名古屋城へ向け出発した。
時間は夜明け前。敵は完全に守りに徹していた。その裏で組織は何かを企んでいた。】




