15話 蜘蛛の巣
【『tears』と『フェニックス』が手を組み、灯台を目指し進んでいた。能力を持たない民兵、組織たちはこれを阻止するが呆気なくティナたちに突破された。そして約束していた場所に到着した。】
空はすっかり夜になり、灯台の明かりがティナたちを照らしていた。
みんな息を切らしていた。後ろを振り返ったが銃声がするだけで追ってはいなかった。まだアイリたちが後方で戦っているのだろう。
そして何人かの男女が灯台の前に集まっていた。迷彩服に身を包み、腕には赤いスカーフを付けていた。
これが『フェニックス』のシンボルなのだろうか。
「ティナ、苦戦したようだな。それから俺の仲間も連れてきてくれて感謝する。」
「ええ。『フェニックス』がいたおかげでなんとかたどり着けた。こちらこそありがと。」
「じゃあ、早速本題なんだが、あの光っている工場は見えるよな?」
するとミオが言った。
「あそこって三重で有名な工場だよね?」
「そういえばこんな近くで見るのは初めてだな。」
「うん。私も。」
『あそこに奴はいる。』
「ユウマ?」
「そうだ。だが簡単には近づけないぞ。あそこはかなり入り組んでて『フェニックス』のメンバーも30人近く入ったが未だに出てこない。」
「いや正確には出れなくなったが正しい。」
「この中に侵入してから一切応答がない状態だ。何かあったに違いない。」
「わかった。大人数で入るのはかえって危険。 ここは数を絞って侵入する必要がありそうだね。」
「そのとおりだ。相手の力もはっきり言ってわかっていない。それからこの工場はガス、石油などが多い。引火すれば町ごと吹っ飛ぶ危険性もある。」
(それなら銃は使えない。それにミナも能力を使うことが出来ない。)
「私とミオとハヤトで侵入する。」
「おい3人で大丈夫か?」
「それなら心配ない。俺たち『フェニックス』も何人か同行する。」
「わかった。まだ組織の連中と戦っているアイリたちを援護してほしい。」
「だからここは任せて。」
「了解。気をつけろよ。」
「後でセイジたちが待つ川越町で落ち合おう。」
「ああ。よしみんないくぞ。」
「ティナ気を付けてね。」
「ミナもね。」
ミナたちと別れティナ、ハヤト、ミオそしてリクと『フェニックス』のメンバーは工場へ向け進んだ。
-その頃工場内では。
「やつら乗り込んでくる模様です。」
「ようやくここまできたか。」
「『フェニックス』の連中も一緒かと思われます。」
「それは都合がいい。あいつらもまとめてここで始末してやる。この中に入った時点であいつらは終わりだからな。」
「お前ら直接行って仕留めろ。ティナ以外は好きに殺していい。」
「はっ。」
「あいつらの能力と俺の能力が重なったときお前たちは手も足も出ないだろ。ティナ…存分に苦しめ。」
-ティナたちは工場に乗りこんだ。
「銃が使えない以上、ナイフで立ち回るしかない。」
「私は銃よりナイフの方が得意だ。これで十分戦える。」
「頼もしいな。よし後ろは俺たちに任せろ。」
「ハヤト、カラスで偵察できる?」
「今やってる。ちょっとまて。」
「ん?」
(私はここに入って何かに絡まった違和感を感じた。山を歩いてる時、顔に蜘蛛の巣が引っかかるようなそんな感覚。)
カーッ カーッ!
「なんだと?!」
「なんて言ってるの?」
「『フェニックス』の連中を見つけた。だが様子が変らしい。」
「なにが起こっている?」
「そこまではわからん。とりあえずこの先だ。用心した方がいい。」
するとクレーンの鉄球がこちらに向かって突っ込んできた。
「あぶない!避けろ!」
『フェニックス』のメンバー1人が弾き飛ばされた。
「うわああああああ!」
「カイ!」
そして壁に叩きつけられ即死だった。
「くそっ!まるで吸い込まれるように突っ込んできた。」
みんなナイフを構え警戒する。
「この先に『フェニックス』のやつらがいる。」
私たちはハヤトについて行った。
そしてとんでもない光景を見た。
「な、これは一体…。」
人が壁に何人も張り付いていた。
まさに蜘蛛の巣。
「お前ら生きてるか!」
「た、隊長逃げてください…。」
「今私が助ける!」
「お前たちは『tears』…?よせ来るな! ここはやつらのテリトリーだ。 これ以上、先に踏みこんだら最後…」
その瞬間、男の首が飛んだ。
「…!」
「生かしてやってたのに喋っちゃったら殺さないといけないじゃないか。」
「喋らなくてもこいつらをおびき寄せられたら殺すつもりだったんでしょ。」
「こいつらの死ぬ姿を見てもらった後に殺すつもりだったさ。」
黒に身を包んだ男と女が立っていた。
「このくそ野郎が!」
リクは仲間を目の前で殺され我を失い突っ込もうとしていた。
そしてそれをティナは止めた。
「行かせない。ここから先はあいつらのテリトリーと言っていた。踏み込めばこっちが不利になる。どんな力なのかもわかっていない。」
「…。ああ。そうだったな。すまない。」
「攻撃してきてもいいけど体についてるものに気づいてるか?」
「なに?」
(確かに体が上手く動かせない。)
「まさか見えないだけで何かに引っかかっている…?」
「ほぉ。感がいいな。とりあえずお前らの武器は没収だ。」
すると私たちのナイフが急に引っ張られた。
そして手から離れ壁に突き刺さった。
「なんだって?!ナイフが…!」
「間違いない体全体に何かが絡まっているんだ。」
「そうだ。お前たちはもう既に俺たちの罠にはまってるんだよ。」
「ここに入った時に感じた違和感はこれだったのか。」
「もう我慢できねぇ。俺はいかせてもらうぞ!」
リクは2人に飛び掛かった。
しかしその瞬間、足に絡まっていた何かが動き、押し戻された。
「リク!」
目に見えない何かが足の自由を奪っていた。
「こいつらに近づくことすらも出来ない。」
「さて、いたぶって殺してやるか。」
2人の男女はゆっくりこちらに近づいて来た。
「お前はこっちに入れ。」
ティナはテリトリーと呼んでいた場所に投げ飛ばされた。
抵抗しようと私は能力を使おうとしたが何故かまったく力が入らなかった。
「お前はユウマさんに殺すなと言われている。だから今は生かしてやる。」
(これが『tears』の主導者か。力が使えないのではただのガキだな。こんなやつに組織はやられたのか?一瞬で終わらせられるほどに弱い。)
「ふざけんな。さっさと殺せばいい。でないと後悔するぞ。」
女は私の頬を掴んできた。
「生意気なクソガキだ。組織の連中はお前なんかに振り回されてたとはね。」
「うるさい。黙れ。」
「くっ!」
「おら!」
女はティナの腹を殴った。
「うっ…。」
「ティナ!」
「おい、そいつは殺すなよ。」
「わかってる。生意気な口をきくもんだからついね。」
「まずは『フェニックス』のやつらを始末だ。こいつらのせいで三重の部隊は壊滅寸前だ。」
そしてリクが言った。
「仲間には手を出すな。俺が身代わりになる。だから俺を殺ればいい。その後は開放してやってくれ。」
「馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ。お前も殺す。そしてお前の仲間も全員殺す。」
「その次は『tears』。お前たちだ。」
男女は吹き飛ばされたリクの元へと行った。
(私のドッペルゲンガーなら2発…いや1発あいつらに叩き込むことが出来るけど賢い選択ではない。)
(まずいな。このままではマジでやられる。俺の力ではどうにも出来ない…。いやまてよ。そもそもこれは本当に見えないのか?)
俺はカラスに合図を送った。
(カラスの視力ならもしかしたら…。)
カラスはハヤトの合図を受け取りティナたちの上空を飛行した。
(あれはハヤトのカラス? 何かを探っている…?)
そして薄っすらと糸のようなものをカラスは捉えた。
カーッ!カーッ!
(なんだ?あのカラスは? うるせえな。)
そしてその情報はハヤトに伝わった。
「やはりな。」
「ハヤトなにかわかったの?」
「ああ。やはり糸が張り巡らされていた。俺たちには見えないが確かに体に絡まっている。」
「5秒…」
「え?」
「5秒あればカラスが糸を切れる。」
「チャンスは一度…。」
「わかった。」
また俺はカラスに指示を出した。
すると低飛行をはじめ突進した。
ハヤトの足に絡まっていた糸を切った。
「よし足が動く…!」
そしてカラスは旋回し、ティナとミオの糸を切った。
「体が動く…?」
「くそあのカラスめ!糸を切りやがった!」
ミオは男の間を左右にすり抜け壁に刺さっていたナイフを抜いた。
「ティナ!受け取って!」
ティナはナイフをキャッチした。
その瞬間ミオは男に首を掴まれ持ち上げられた。
「このまま殺してやるよ。」
「くっ…。」
「ミオ!今助ける!」
ハヤトとリクが男に攻撃しかけた。
男は体制を崩した。
「ちっ。うっとうしいやつらだ。」
「ミオ。無理するな。 ここは俺たちに任せろ。」
「ええ。さっきあいつに捕まった時に感じたんだけど、もしかしたらあの男が糸を出してる気がする。」
「それは本当か?」
「あいつに触れられた瞬間、体が動かなくなった。何かで縛り付けられるように。」
「じゃあ、あいつを倒せば糸は消えるってことか。」
「そうだが、近づいたらまた糸でやられる。」
「ふん。気付いたようだな。だが知ったところでどうすることも出来ん。お前らまとめて全員殺してやるから覚悟しろ。」
ティナの前には女が立っていた。
ティナはナイフを構え、女と向かい合った。
「お前の相手は私だ。このクソガキが!生かして連れてこいとの命令だったがもう関係ない!殺してやる。」
ナイフとナイフが重なり合った。
私は力を使おうとしたその時だった。
(やっぱり力が出せない…。)
「お前は踏み込んだんだよ。」
「なに?!」
「さっきのやつが言っていた通りさ。お前は力が使えない領域に踏み込んだ。これがユウマさんの力。」
「ユウマの能力…。能力を無力化する力…。」
まさに蜘蛛の巣に引っかかった虫の状態だった。
「力を使えないお前はただのガキだ。大人しく殺されるがいい。」
「力なんて使えなくても私は戦える。」
「じゃあやってみな。」
ティナに向かってまたナイフで突っ込んできた。
それをナイフで受け止める。
「どうした?それで受け止めているつもりか?」
「くっ!」
「力がなければお前はこんなもんなんだよ。」
「違う。力がなくても私はお前たちより強い。」
女はもう1つのナイフを取り出した。
「あっそ。じゃあさっさと終わらせてあげるよ。ユウマさんにはお前の首を持っていくとしよう。死ね。」
(こんなとこで負けるもんか!ミナのため『tears』のためにもこんなやつにやられない。」
私は女の腹を蹴り上げた。
「ぐはっ!」
ティナの目から光が消えた。
女はナイフをティナに振り回す。
「何処狙ってる?」
すかさず女の背中を刺す
「いってぇなこのクソガキが!」
ティナは更に回り込み胸を刺した。
「力がなくてもお前如きに負ける訳がない。私はお前と違って背負ってるものが違うんだ。地獄へ落ちろ。」
女はティナの服を掴み倒れた。
すると今まで見えなかった糸が見えるようになった。
「こいつが糸を見えなくしていたのか。」
男は焦ったのか糸を見境無しに飛ばした。
「ハヤト!」
「ああ。わかってる。見えるなら避けられる。」
「こっちだ!」
ハヤトとミオが狙われている間にリクは落ちていたナイフを拾った。
リクは背後から飛び掛かり男の首を掻っ切った。
「うっ…。これで勝ったと思うなよ…。」
「お前が殺した仲間の痛みだ。死んで償え。」
「ユウマさんがお前らを殺す…。お前らの命もこれまで…だ。」
男はゆっくりと崩れ落ちた。それと同時に張り巡らされていた糸が消滅した。
そしてティナはなんとかハヤトたちの前に駆け寄った。
「みんな大丈夫?」
「なんとかな。かなり手強かったぜ。」
「ああ。男が糸を操って女が見えなくしていたとは最強の連携だった。まさにこの入り組んだ工場がうまくハマった能力だったな。」
足音がした。
「みんな…。まだ終わっていない。」
そう、こいつを倒すために来たんだ。
(ユウマ。)
「こいつらやられたのか。まぁ計算内ってとこか。俺の領域に誘い込めた時点で用なしだったがな。」
そしてユウマという男はタバコを吸い始めた。
「で?誰から死にたい?」
「お前がユウマか!」
リクが殴りかかったが蹴り飛ばされた。
「弱ぇな。これが『フェニックス』か?話にならんな。」
「で、次は?」
ミオが前に立った。
「私が行くよ。」
「お前は『tears』か?」
「ええ。そうよ。」
「そうか。それならまだ期待できそうだな。まぁとりあえずかかってこいよ。」
そしてミオはナイフを構え、飛び掛かった。
足で手を蹴りナイフが飛んでいった。
「っ…!」
「ナイフってのはこう使うんだよ。」
ミオにナイフを振り下ろした。
一歩手前でティナが受け止めた。
「ほぉ。俺の攻撃を受け止めるとはな。やはりお前は多少は強いようだな。だがお前とミナって女以外は役に立たないようだな。他の『tears』メンバーもこのレベルなら俺にすら勝てないぞ。」
「そんなことないっ。みんな最強の私の仲間だ。弱いやつなんて1人もいないっ。」
「ティナ…。」
「こいつは現に弱い。能力以前の問題だ。それなら後ろでカラスを操っていたやつの方がよっぽど役に立ってたんじゃないか?」
「これ以上私の仲間を侮辱するならお前を本気で殺す。」
「いいぜ。やってみろよ。」
「ティナ。どいて。」
「え?」
「ティナどいて!私がこいつを倒す。」
「ミオ…。」
私は男のナイフを弾いた。
「私は弱くない。『tears』の名に恥じないように強くなるって決めた。」
ミオはゆっくり立ち上がり、ナイフを逆に持ち替えた。
能力を使うときのティナと同じ持ち方だった。
(あの雰囲気…。私とミナの能力が開放された時と同じ感じ…。)
「見せかけだけの力で強くなった気になってんなよ。」
「それなら試せばいい。」
「ああ。こいよ。」
ミオは踏み込んだ。
「は、早い。」
ナイフとナイフが重なった。
さっきとはまったく違う状況だった。
「なんだこいつ。力が急に跳ね上がった。それにこのスピードは…。」
ユウマはナイフを横に振った。
「いねぇ!」
ミオはとっさにしゃがんでいた。そして蹴り飛ばした。
ユウマは吹き飛び壁に激突した。
その瞬間封じられていた。能力が出せるようになった。
「ティナ見ていて。これが私の…覚醒した能力。」
前にもう1人のミオが現れた。激しいオーラを纏っていた。
ユウマが起き上がりミオを見た。
「何だあれは…早く能力を使えなくしなければ…。だが腕の骨が折れていてそれどころではない。」
するとミオの前にいた分身が物凄いスピードでユウマに突っ込んでいった。
ユウマは何かに貫かれたような感覚を得ていた。
「まだだ。これからだよ。」
『くらえ。』
分身を追うようにミオが消えた。
気付いたときにはユウマの後ろに立っていた。
ユウマの首から血が噴き出した。
「なんだ…?分身したあいつが突っ込んで俺を切ったまでは見えた…。そのあと更にその分身を追うように追撃した…?」
「これが私の覚醒した能力。分身の向かった位置に瞬間移動できる。吸い込まれるようにね。」
「ティナとミナだけでなくこいつまでこんなに強かったとは…。」
(このままではまじで東京まで辿り着く可能性がある…。その前に俺の仲間もやられる。今ここでなんとしてでも止めねぇと。エイタ…お前の仇は絶対取る。)
ユウマは起爆スイッチのようなものを取り出した。
「なっ!それは!」
「お前ら全員ここで爆死させてやる。死ね。」
ミオの能力がまた発動し分身がユウマの腕を切り落とした。
ミオの手にはユウマの腕と起爆スイッチが握られていた。
「っっっ!!」
「これはもらっていくよ。あ、これはいらないや。腕は返してあげる。」
(私はそれをじっと見つめていた。覚醒したミオ。とんでもない力。さっきまでとは比べ物にならないぐらい自信と強さを身につけていた。)
ユウマは痛みと絶望で絶命した。
「死んだか。」
「ええ。私たちの勝ちだ。」
「これは完全に『tears』の勝利だ。俺たち『フェニックス』は救われた。感謝する。」
「ただ目的が同じだっただけ。さぁみんなを連れてここから脱出しよう。」
「ミオもさぁ行くよ。」
「うん。ティナ…。私、役に立ったよね?『tears』としてこれからもついて行っていいよね?」
「ミオが思っている以上に役に立っている。だからその力を私と『tears』の為に使い、これからも一緒に戦ってほしい。」
「うん!ティナ私頑張るから!」
「ええ。」
「それからハヤトもありがとう。カラスがいなければあの糸をどうすることも出来なかった。」
「まぁ当然の結果だ!俺とこいつは最強のパートナーだからな。」
「これからも頼りにしている。」
「それじゃあここを脱出してセイジとミナが待つ川越町へいこう。」
「そうだったな。急ごう。」
「俺たちも同行する。」
「ええ。行きましょう。」
こうしてティナたちは工場内での戦いを終え脱出した。
【糸を使う男、それを隠す能力を持った女に襲われ難儀していたティナたちはハヤトのカラスにより抜け出し、倒すことが出来た。 そして三重を支配していたユウマは覚醒したミオの能力により死亡した。ティナたちは戦いを終えみんなの待つ川越町に向かうのであった。】




