二十二話 強襲
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「おい、このババア笑ってるぞ。気持ち悪ぃ……! インツさん。どうします?」
「起こしてください。まだ何も話して貰ってない。頑張って貰わなきゃですね」
「しかし、こいつ中々口を割りませんぜ……。これだけ痛めつけてるのに」
「やはり、噂はあくまで噂だったのか……?」
「……ド腐れ共が」
クソ見たいな光景だ。
クソ見たいな男共が寄ってたかって、弱い女を虐めてやがる。
……俺が一番、許せねえ光景だ。
「誰だ!? どこに居やがる!」
「まさか安村無敵が……?」
「取り乱すな。周囲を警戒しろ」
「一体どこから……」
俺の一声に恐れおののいたのか、大の男が揃いも揃って忙しく周囲を見渡し始める。
さぁ、今助けに行くぜ。エディア!
「上だあああああ! この野郎!」
「――――!?」
倉庫天井の骨組みから一気に飛び降り、そのまま雑魚の顔面へ蹴りを入れる――。
「待たせたな! エディア!」
そして立ち上がり、俺はエディアの名を高らかに叫んだ。
「う、うそ……そんな……」
意識が戻ったのか、エディアは薄眼を開けたかと思うと、俺を見るなり化け物でも見た様に一気に目をカッと開いて口を震わせていた。
「て、敵襲! 総員戦闘準備!」
「……誰だ!」
慌ただしく動き回る雑魚共の中、一人見覚えのある顔をした奴が此方を睨みつける。
こいつは後で絶対に殴り飛ばしてやる。そう覚悟を決め、俺は吠えた。
「安村無敵だ! 来てやったぜ腐れ外道共ォ!」
俺が叫ぶと辺りは妙な沈黙に包まれ、其々が面食らったような顔をしていた。
そんな最中、エディアはただ刮目して弱々しく喉をならす。
「そ、んな……無敵兄さん。なんで……」
「おう、エディア。すまねえな。俺のせいで辛い目に合わせちま……」
「無敵兄さ……危な……!」
背後より殺気を感じ、瞬時に身を屈ませると俺の真上を刃が通過して行く。
「まったく、最近の若えのは行儀がなってねえな……!」
俺はその姿勢のまま、足を突き出す様に蹴り上げた。
「――――ッグァ!?」
「雑魚に用はねえ。ちゃっちゃと蹴散らしてやるぜ」
ゆっくりしている暇はねえ。若返りの葉巻の燃焼時間は大体一時間。
さっさとこいつ等を片付けて、エディアを連れて帰る!
「捕らえろ! 相手は一人だ!」
二、四、六……。さっき蹴り飛ばした奴入れて七人か。
俺を取り囲んで、殺意を全開に放ってやがる。
けど、雑魚が何人いた所で関係ねえ。
「うおおおおおおおお!」
先陣を切り雄叫びを上げながら、体躯のいい男が俺に掴み掛かろうと駆け寄る。
だが図体ばかりデカくて動きが遅い。俺はその腕をヒラリとかわし、そのまま腰をクッ捻り、勢いよく拳の甲を鼻っ柱へと叩きつけた。
しかし束の間。左方より剣を横に振りかぶった男が見え、膝と腰を沿って剣の軌道を紙一重にかわす。
「遅せえ! どれだけ俺が修羅場を掻い潜ってきたと思ってんだ! 戦争を知らねえ今時のガキとは場数が違うわい!」
上体を一気に起こし、岩よりも硬いと言われた俺の額を勢い余すことなく叩きつける。
「―――ブッ!?」
「これで残り五人。温い。温すぎるぜ!」
「くそおおお! グハアッァ!?」
大振りに叩きつけようとする拳は空を切り、がら空きになった頬へと俺の拳を叩き込むと、男はぐにゃりと顔を曲げて真横へぶっ飛んでいく。
「四人目! おいそこの顔色悪い小僧! 待ってろ、直ぐ殴ってやる!」
多勢に無勢。燃え盛る炎にこんなちんけな水で鎮火できると思ってるのなら、ちゃんちゃら可笑しいってもんだ。
「……早く捕らえてください」
「シェェェエエエイイ!」
インツが感情も無く小さく口を動かすと、やけに威勢のいい奇声を上げた男が俺の前に飛び出し、幅広の剣を振り回してポーズを決める。
「俺は南の地伝統の剣技ギ・バンドゥの使い手だ。細切れにしてやるぜええええ!」
鞭のように剣をなびかせて不規則な動きで俺へと迫るが、隙だらけの脚部を狙って勢いよく足を払った直後、真横に体勢を崩した顔へと拳を下から突き上げる。
「――――シェアアブエアア!?」
「ギャランドウ? 喧嘩には要らなかったな?」
……全く。肩慣らしにもなりゃしねえ。
「面倒だ! まとめて来い! 俺が喧嘩って奴を教えてやる!」
さぁ、行くぜ。
軟なガキを叩き直してやるのも、大人の仕事ってもんだ。




