十五話 囚
「それで……連れて帰って来ちゃった訳?」
「そういう事」
変身は解け、オカマ屋敷のベッドの上でぐったりと俺は枕に顔を埋めたまま応える。
体が滅茶苦茶痛い。首すらも動かしたくない。ああ……死にそうだ。
「そういう事。じゃないわよ! ちょっとっ! なにしれっと豪運の勇者を連れて来ちゃってる訳!? その辺の犬猫拾ってくるのと同じじゃないのよ!?」
ギャアギャアと騒ぐナディの耳障りな声が身体中に響いて行く。最早疲弊も通り越して体が溶けてしまいそうだが、怪獣の様な喚き声がキンと響いて寝付くに寝付けねえ。
「しょうがねーだろ。じゃなきゃ他の勇者とか兵隊来ちまうだろうし。それに地下道から帰って来たから、バレちゃいねえだろうよ。……多分」
「そーだよナディ! あの豪運の勇者に石の話を聞きだせば早いかもよ?」
あの後、豪運の勇者が持っていたポーションの残りカスを使用して、エメは一命を取り留めていた。ポーションの使用は、ほんの数滴で良い。あの馬鹿ガキみたいにほぼ一本飲んじまえば、酷い幻覚症状や錯乱状態に苛まれる。
「一応地下牢に閉じ込めてるけど……不安だわ。それにポーションなんて何処から仕入れたのかしら? とっくに製薬は禁止されてるはずなのに」
「まったく……最近のガキはポーションの使い方も知らねえのかよ」
どうりで知らない訳かと、俺は枕に顔を埋めたまま独白した。けど、それでいい。
もう、ガイヤ見たいな奴を見たくはないからな。
「ともかく、このポーションの件については、あちしが出所を探ってみる。どうもきな臭い感じがするの。後は……問題は無敵ちゃんが拾ってきた勇者ね」
うつ伏せに寝そべる俺の背中に、妙に嫌な視線を感じるが……直ぐに疲労のせいでどうでも良くなった。
もう考えるのも面倒だ。
「まだ意識こそ戻ってないけど、無敵ちゃんがちゃんと面倒見なさいよ? あちしら普通の人間じゃ太刀打ちできる相手じゃないんだから」
「へいへい……」
「ちょっと! ちゃんと聞いてるのかしら!?」
いよいよ体力の限界だ。瞼が漬物石見たいに重てえ。
あのガキもあれだけのポーションを吞んだんだ。二、三日は意識が戻らないだろう。それに運が悪けりゃ後遺症だって……。まぁ、豪運って奴なら大丈夫か。
「大体あの居住区にはうちで扱ってる賃貸だって複数有ったのに。復興金と援助金に修繕費用に借主への補償金と諸々……。はぁ~……。頭が痛くなるわ。お金持ち止めたい」
「でもさ、ナディ。なんであれだけの騒ぎで他の兵や勇者が来なかったのかな?」
「王政の考えなんて知らないわよ。ただでさえ最近の動きは読めないんだから……」
今さら気がかりな話を続けやがって……。けど、もう……限界だ。
「例えば、例えばだけど! 石を取られた事が他の人にバレたくなくて、豪運の力のせいで警備兵や勇者が来なかったとか?」
「ブレイバー達の特化能力は未知数……。あり得なくはないけど、だったらその運勢すらも凌駕する力を持った伝説の勇者の名は、伊達じゃないって事かしらね?」
「ねーねー! 無敵ち! どうやったの? ねえ?」
「……もう寝てる。まだ夕食前よ? 歳よりってば、やっぱり早寝早起きなのかしら」
「このまま死なないよね?」
「こっちとしてはおっちんで貰った方が頭痛の種が一個消えるってもんよぉ、もう」
――――――――まったく……好き勝手言いやがって。




